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12話 勘違い

 次の日、俺は特に変わらず一人でイヤホンを付けて音楽を聞きながら登校する。


 相変わらず校門付近では多くの生徒が友達と談笑しながら登校しているのが見える。


 俺の様に一人でイヤホンを着けながら校門を通り過ぎる者などほとんど居ない。


 たまにヘッドホンを着けて登校している奴を見つけて密かに同士よ、と思うが。


 そうして下駄箱に到着し、ゆっくりと中から自分の上靴を取り出す。


「おはよう!」


 またもや俺のイヤホンを貫通するほどの声量で挨拶をする女子の声。俺には関係ない。ただ黙々と自分の上靴を地面に置こうとするも、いつもと違って目の前に人がいる。


 下を向いている視線を上げると、そこには何やら不機嫌そうな高花の姿があった。


「えっと、おはよう」


 イヤホンを外し、こくりと頭を小さく下げながら挨拶をする。


「もう! 天野君、イヤホンのせいで私の挨拶ずっと無視してたんだからね! これ没収!」


「あ、おい」


 俺が阻止するよりも早くポケットにしまったイヤホンを取り上げ、どこかへと行ってしまう。


「あ、ちょっと待ってよ、琴音~」


 先程の大きな挨拶は前と同じく桜川さんだったのか。


 俺の方をちらりと見てこくっと頭を軽く下げながら高花の方へと歩いていく。


「いつから天野君と仲良くなったのよ」


「う~ん? 前からだよ」


「嘘つけ」


 そういった会話が繰り広げられているのを俺はボーっと眺める。


「……あのイヤホン高かったのに」


 突如沸き上がってきた照れ臭さを隠すように俺はそう呟く。


 ♢


「おい、天野」


 昼休み、俺が弁当を取り出そうとすると、そう声がかけられる。声の主はクラス一のイケメン君、天城奏多であった。


「なんだ?」


 高花さんと話せるようになったとはいえ、未だに天城のような陽キャと話すのは少し気後れしてしまう。価値観が違い過ぎて滅茶苦茶に言われないのか心配になるからだ。


 しかも天城と言えば何かと高花の事でちょくちょく毒を零してくる奴だ。


 嫌だな。そう思いながらも俺は返事をする。


「最近、琴音にちょっかいをかけてるらしいな」


 ちょっかい? はて? 生憎、隣の席の高花は先程桜川さんとともに出て行ってしまったため確認することはできない。


「琴音が迷惑するからそういうのやめろ。それを言いに来ただけだ」


 そう言うと天城はどこかへと去っていく。何だろう? ゲーム同好会の事はバレていないはずだしな。ちょっかい、か。


 俺は天城の言いたいことが分からないまま、取り敢えず腹を満たすべく弁当箱のふたを開ける。昼ご飯は基本的に自分で弁当を作って食べるか面倒な時は机の上に置いてくれてある500円玉を使って学食で食べるかの二択だ。


 メニューはいつもと変わらない。卵焼きに昨日の晩御飯の残り物、そして白ご飯だ。


 うん、美味しいな。


 黙々と一人で食べ進めながら天城の言っていたことを考える。


 高花が迷惑する? 天城からすると俺が積極的に高花に話しかけているように見えているのだろうか? 


 俺からすれば高花が積極的に話しかけてくれるのに俺から話しかけるのが少なくて申し訳ないなと思っていたくらいだったんだけど。


 もしかしてそもそもこの考え自体が思い上がりだったりするのか? それを天城は教えてくれているのではないだろうか。待て待て、お前はこっち側じゃないぞって。


 なるほど、そう考えれば納得がいく。


「なに考え込んでるの? 天野君」


「うわっ!?」


 既に弁当を食べ終わり、片付けていたところに急に横から声がかかる。学食から戻ってきた高花であった。少し引きつった顔でこちらを見ている。


「び、びっくりしたぁ」


「ビックリしたのはこっちの台詞だ」


 ドクドクと激しく脈打つのを抑えながら俺は言う。


「だって天野君がいきなり大きい声出すから」


「ま~た天野君と話してる。やっほー、天野君」


 一緒にいたであろう桜川さんがヒョコッと顔を出してくる。桜川さんとはあまり接点がないため、俺はコクリと頭を下げるだけで済ませようとする。


「ねえ、琴音には普通に話すのに、私には喋ってくれないの~?」


 その俺の様子にムッとしたのか桜川さんがそう言ってこちらに顔を近づけてくる。その瞬間にフワッと良い香りが漂ってくる。


「……こんちは」


 こんな高いテンションに急に合わせろと? 無理言うな。


「凛ちゃん、天野君を苛めないの」


「だって琴音とは普通に話してるのに私の時だけ急に黙るんだもん」


 確かに高花とは普通に喋れるようになったな。二人で一緒に帰る時にドギマギしていたのが嘘のようだ。


「すまないな」


「べ、別に謝るほどでもないけど」


 くるくると髪の端をいじりながら桜川さんが言う。何だ? 選択を間違えたか? なんか不満そうだ。


「あっ、そうだ~。琴音、さっきの授業で教えて欲しいことがあるんだ~。今良い?」


「良いよー」


 そう言って高花と桜川さんが俺から離れ、隣の高花の席へと移る。よかった、俺から話題が逸れたぞ。


「えっと、ここがこうでー」


 横から桜川さんに勉強を教える高花の声が聞こえてくる。内容は先程の数学の授業についてらしい。高花は勉強ができるためクラスの人にこうやって勉強を教えている姿をたまに見かける。


 偉いな。俺なんて自分の勉強だけで精一杯だな。


 俺はそう思いながら鞄の中からモンサーの攻略本を取り出し、読み始める。バレないようにちゃんとブックカバーをしているため安心だ。


「ええっと、それで次はどうやるんだっけなー、うーん」


 どうやら教えている途中で行き詰ってしまったらしい。高花が悩むほどなんて余程難しい問題なのだろうか。


 目はモンサーの攻略本の文字を追いながらついつい隣の席の話へと意識を持っていかれてしまう。


 そうしていると、トントンッと指で肩を叩かれる感触を覚える。叩かれた方を見ると、高花が申し訳なさそうにしながらノートを開いてこちらに見せていた。


「天野君って数学得意だよね。ここちょっとわからない?」


 開かれたノートをジイっと見て解き方を眺める。


「ああ、ここの変数で積分すればいけるな」


「えっ、この一瞬で分かっちゃったの? すご~い」


 桜川さんが大げさに驚く。


「まあ数学だけだけどな」


 そう言って俺はまた攻略本へと目を戻すのであった。

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