10話 同好会からの帰り
「やった、ようやく2つ目の島の最初の中ボスを倒せたよ」
相変わらず最弱モンスターの「カラフルベイビー」を使用しながらの中ボス攻略。2つ目の島の難易度は1つ目の島に比べて大幅に変わるわけではないので、高花さん、いや高花でも一人でクリアできたようだ。
「てことは俺のところまでもう少しでたどり着けそうだな」
「才司は今どこなの?」
「俺は2つ目の島の2体目の中ボスを倒した後はずっと探索してるから、まだ島の最終ステージまではいってない」
モンサーは基本的に一つの島に3体中ボスがいて、最後にその島の大ボスが出てくる。そう考えるとまだ二つ目の島を半分くらいクリアしたことになる。
まあ、高花の進行の様子を見てペースを落としてるからこんなに遅いだけなんだけどな。
「え~、もう2体目まで行ってるの? 早いよ」
「いや、高花が遅いだけだ」
1つ目の島のボスを倒してから2時間くらい経ってるんだが。
ん? もう2時間も経ってるのか。
部屋の壁にかかっている時計をちらりと見ると、針は7時30分を指していた。
「もう7時半か」
「どうする? そろそろ帰る?」
「そうだな」
俺はゲーム機の電源を切り、鞄にしまってソファから立ち上がる。
「下まで見送るよ」
「ああ、ありがとう」
大きなリビングを後にして広い玄関で靴を履く。高花はサンダルを履いて見送りに来てくれる。
「ところでさ、次の中ボスのステージに行くための道具ってどこにあるの?」
「ああ、あれは最初の中ボスのステージから少し行ったところの洞窟の中にあるんだ」
まだゲームの余韻を残した会話を弾ませながらエレベーターへと向かう。まだエレベーターは来ていないらしく、ボタンを押してエレベーターが来るのを待つ。
「その洞窟にも門番って……危ない。これ以上聞きすぎちゃったら楽しみが減っちゃう」
「まあ、自分で探索するのがモンサーの醍醐味だしな。聞かなくて正解だと思う」
チーンという音が鳴り、下りのエレベーターが来たので二人とも乗る。
「別に下までじゃなくていいぞ?」
「今日は同好会を設立した記念の日だから良いのよ」
なんだそれと思いつつも俺は妙に納得してその言葉を呑み込む。
何だかんだいって同好会という言葉を素直に受け止められるようになっている自分が怖い。やっていることはただの遊びなのに、高花にゲームを教えていく過程で必然と俺自身もゲームをより研究するようになり、同好会っぽさがあるからかもしれない。
少しして1階にたどり着き、そのままエントランスへと歩いていく。
「じゃあ、ここで。また明日ね」
「ああ、また明日」
なんだか名残惜しさを感じながらも俺はマンションに背中を向け帰り道を歩いていく。
こんなに遅くまで外にいたのはいつぶりだ?
そう思い、俺は久しぶりの感覚を味わいながら家に帰るのであった。
♢
「ただいま」
「おかえりなさい。遅かったわね」
家に帰ると既に母が食事を用意してくれていたらしく、良い匂いが漂ってくる。
「ああ、ちょっと友達とな」
俺はそう言うと、手を洗い自分の席に座る。
「と、友達……まさか才司にそんな友達がいるなんて……」
なぜか母に衝撃を与えたらしい。
「俺に友達がいて何がおかしい」
「いや、だって。ねえ、お父さん」
「ああ、そうだな。まさか才司が友達を作るなんて……」
「そんなに珍しいことでもないだろ。小学校の時までは居たんだし」
「逆に言えばお兄ちゃんは小学校の頃からずっと友達がいなかったんじゃない。そりゃ、誰だって驚くよ」
花音がそう口をはさんでくる。
「お前には出る前に言ったと思うが?」
「今日は用事あるとしか聞いてないよ。なんかやたらウキウキしてたから気持ち悪くて詳細は聞かなかったけど」
「大きなお世話だ」
そこまで言っていて俺はふと思う。そういえば高花の事を友達と呼んでも良いのだろうか? いや、遅すぎる疑問だとは思うのだが、考えても見てほしい。話すようになったのはつい数日前、なんなら親しく話すようになったのは今日が初めてだ。
話が弾んでいたため、遊んでいるうちは気付かなかったがもしかしてまだ彼女の中では友達認定になっていないのではないか?
いろんな不安をかき消すようにご飯を一気に口にかき込む。
「ごちそうさま」
「あらあら、そんなに急いでなにするのよ」
「宿題だよ」
「お風呂はどうするの?」
「後で入る」
そう言って俺は自分の食器を流しに置き、水につけると自分の部屋へ向かう。
俺は部屋に入るとすぐに自室の椅子に腰かける。
宿題とは言ったものの全然やる気になれない。俺の頭の中にあるのは同好会についてだ。
「週5ってハード過ぎんだろ」
次からは宿題も含めての活動にしよう。そう思っていたらピロンとトークが来た音がする。
差出人は……高花であった。




