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1話 登校

 恋愛……それは今の俺にとってまったく縁の無い世界、そしてこれからもそうなのだろう。


 俺、天野才司(あまのさいじ)才華(さいか)高校に通う高校2年だ。


 生来の性格から誰にも話しかけることが出来ず、また話しかけてくれる者もおらずで今のところ友達は0。


 それゆえに周りが友達とワイワイしながら登校しているのに対して俺はこうして一人寂しく登校している。


「ねえねえ美優(みゆ)ちゃん、聞いたよ。拓真(たくま)君と付き合うんだって?」


「えっ? どうして知ってるの?」


「昨日拓真君から聞いたんだよ、この幸せモン!」


 目の前の女子がこんなことを話し合いながら楽しそうにしている。


 何だろう? 拷問かな?


 耳を澄ませば、この場にいる俺以外のすべての者が恋愛話をしているんじゃないかと錯覚するほどに多くの生徒が恋愛にうつつを抜かしている。


 それに対して羨ましいという感情を持つわけではない。ただ、居心地が悪いため俺は外界から遮断するためにスッとポケットの中からイヤホンを取り出す。


 歩きながらイヤホンなど本来ならば危なっかしくてしたくないのだが、今回ばかりはやむを得ない。


 スマホを操作して俺のお気に入りのゲーム、「モンスターズサーチ」略して「モンサ―」の曲を流し始める。


 それからというもの、周りの話など気になることはなくやがて見えてきた校門をくぐり、下駄箱へとたどり着く。


「おっはよー!」


 俺のイヤホンを貫通するほどの大きな声で挨拶をするいわゆる陽キャ女子。当然俺に対して言っているわけではないので特に気にすることも無く、靴箱を開こうとすると、同時に横から腕が伸びてきて俺の腕と交差する。


「あっ、ごめん」


 そこにいたのは先程の陽キャ女子に大声であいさつをされていた女子であった。


 俺は持ち前の低いコミュニケーション能力を発揮して少し頭を下げると相手の顔も見ずにそのまま逃げる様にしてその場を離れる。


琴音(ことね)~、何してんのよー」


 笑いながら陽キャ女子がそう話すのが聞こえる。相変わらず俺のイヤホンを貫通する声量だ。


 俺は特に気にすることもなく、颯爽と廊下を歩いていく。


 2階の教室に着き、自分の席にカバンを降ろすと、俺はイヤホンを取り外し、スマホを操作してあることを調べる。


 そこに書かれているのはあるゲームの発売情報。


 今週の火曜日、つまり明日に俺の大好きなゲーム、「モンサ―」の第2弾、「モンサ―2」が発売されるのだ。


 しっかりと前もって確認して俺は明日に備えている。どこの店でどのくらいの値段なのか。


 俺の学校はバイト禁止のため、小遣い制度である俺は日々困窮しているのだ。


(早く明日にならないかな)


 発表されてから異常なほどに公式サイトにひっついている。


「おーい、座れー」


 そうしているとガラリと教室の扉が開き、担任の柊先生が入ってきて朝の会が始まる。柊先生は女性なのだが、そのカッコいい言動で女子からも男子からも人気のある先生だ。内容はいつも通りで特段変わったことのないまま、話は進む。


「天野、分かったな?」


 明日の事で頭がいっぱいだった俺に突如として声がかかり、俺はびくっと肩を震わせる。


「えっと、なにがですか?」


 俺が素直にそう言うと、柊先生は呆れたように額に手をやる。


「まーた話を聞いていなかったのかお前は」


「すみません」


 謝ると周囲から痛い視線が飛んでくる。(ひいらぎ)先生に迷惑をかけるなよという無言の圧力が俺を襲う。だが俺には効かない。なぜなら友達がいないからな……関係ないか。


「聞いていなかった天野のためにもう1回言うぞ。今日の放課後、週番の天野と高花(たかはな)は職員室に来てくれ。手伝ってほしいことがある。これで分かったな? 天野」


「はい」


 そうか、俺は今日から週番だったのか。黒板に吊るされている名前カードを見て理解する。


 週番か……面倒だな。


 体育の体操の号令とかいろいろ仕事があるんだよな。基本的に男子と女子でペアであり、この学校は女子と男子が全く同じ人数だという事で毎回同じ生徒同士がペアになる。そのペアの決め方は担任の教師による。


 今年の俺のペアは高花さんらしい。出席番号はかなり離れているため、意外だな。


 高花さんというのは俺ですら知っているクラスの人気者だ。それどころか学校中の人気者かもしれない。本名は高花琴音(たかはな ことね)。その美貌は男女問わず魅了し、いつも彼女の周りには多くの生徒たちが集まっている。


 そのため、週番のペアになりたいと思う男子は多いのだ。今でも俺のことを射殺すような目で見てくる男子が多い。なんであんな奴なんかが、とでも思っているのだろう。


 仕方がないだろう。俺だってなりたくてなってるわけじゃないんだから。


 それから、週番の号令と共にいつも通りの授業が始まった。


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