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生徒会長の声が推し

生徒会長の秘密を知ってしまった私……もちろん全身全霊で推しますけど何か?

作者: 奏君。


 ーー春。それは別れの季節であり、また、出会いの季節でもある。ーー


------------

 …………春。それは別れの季節であり、出会いの季節でもある。………とは、誰の言であったろうか?………まあ、誰でも良いけど。


美春(みはる)~!」


「………秋菜(あきな)……。」


「相変わらずボーッとしてるねぇ。」


「……余計なお世話。……それで、何か用?」


「あ、そだった!あんね!落ち着いて聞いてね!」


「………何よ。」


「あのね、生徒会長がグラウンドで応援合戦のれんしゅーー」


「それを早く言って!」


「ちょっ!?美春!?」


 春。それは別れの季節であり、出会いの季節でもある。それが誰の言であっても、どうでも良い。………そう、何故なら………私、新庄美春(しんじょうみはる)は現在進行形で、出会い、青春しているからだ。


------------

 桜咲く、春めく4月。………と言っても、もう入学式も終わり、はや3週間………もはや慣れたものである。


「…………眠い………。」


「美春ー。ちょっとー!」


 ………元気ねぇ………こーいう子のことを青春してるって言うんだろうなぁ………。私にはとても無理ね……。


「何よ………?」


「ほら!見てみて!生徒会長が!」


「……また、生徒会長?ミーハーねぇ………。」


「違う!生徒会長はもはや公式!グッズすら売り出しても良いくらいの学園のアイドル!」


「……そーいうとこがミーハーだってのよ…。」


 …………この学園のアイドル……もとい生徒会長である海谷斗冬(かいたにとふゆ)先輩は、確かに凄い人ではある。

 ルックスよし、性格よし、振る舞いよし、の学校の「三◯よし」かと疑うほどの超ハイスペック。

 学園の女子のなんと全体の5/4が海谷斗冬ファンクラブの会員という。男子は全体の3/1だっけ?とにかく男女共に人気があるのである。

 

「………アイドルみたいにファンサ?してくれないけど?」


「そこがまた良い!」


「えぇ………?」


 そう、もちろん全ての学園のアイドル=ファンサしてくれる、ファンに優しいなんて方程式は成立するはずもなく、海谷先輩は良く言えばクール、他の言い方をすればドライだ。………何故か塩対応が良いって人が大半だけど。……理解できないわ。


「そんなに騒ぐとまた先生に怒られるよ?」


「うっ………!それは……!」


 ………実は、まあここまで大々的に言っている時点でお察しの通り、と言うあれだけども、ファンクラブのことは学園側も知っている。と、いうか黙認している。

 これを下手に抑制すれば、女子から暴動が起きる。比喩ではなく、ガチで。

 まあ、もちろん騒ぎすぎるとお叱りがくるんだけど。


「私にもお叱りがくるんだから………あんまり騒ぎすぎないでね。」


「騒ぐこと自体は否定しない美春大好きっ!」


 …………まあ、夢中になれるものがあるのは良いことだし。………私はリアルな相手はちょっと無理そうだけど………私(次元が)一個下が好みなんだよねぇ…………。


「はいはい………それで?生徒会長が何だって?」


「ほらほら!サッカーしてるっ!」


「………それだけ?」


「嘘でしょ!?サッカーしてる会長に興奮しないの!?」


「秋菜、あなたいつから変態になったの?」


「美春が真面目すぎるんだって!」


 ………いやいや、私が真面目ということは、百歩………いや、千歩譲って認めよう。

 でも………これは私が正常でしょうに。……え?私正常だよね?ね?え、これ私が可笑しいの?


「………って、そんなわけないでしょ!」


「ふわぁ!?何急に!?」


「あ、ごめん………。」


 これは私が悪かったかな………失敗失敗……!


「………それで?生徒会長の何に興奮してるのあなたは?」


「ふふ!美春もとうとう海谷沼にハマったわね!」


 ………いや、別にハマってはないんだけど。………気付いてないのかな、凄く話したそうにしてたから、話をふっただけなんだけど。


「まず!斗冬と言う名前に負けないあの白い肌!雪の妖精か!?女子からすると滅茶苦茶羨ましい!お手入れ何してるのあれ!?」


 ………まあ、それはわからなくもない。海谷先輩は、秋菜の言う通り、雪の妖精って言われても違和感がないくらい肌が白い………。あれは確かに羨ましい………。


「そしてあの制服の袖を捲り上げたことによって見える肘下!白いのはもちろんだけど、細く見えるのに実は結構筋張ってて筋肉が見え隠れしてる!最高!」


 …………いつからこの学園は筋肉フェチが集まり始めたんだろうか?可笑しい。中学の時までは秋菜も筋肉に関心がなかったはずなのに………!


「極めつけはやっぱり顔!」


「結局顔なのね……。」


「いや、だって冗談抜きで国宝級よ!?」


「………確かクォーターなんだっけ?」


「そう!確かお祖父さんがロシア人だとか何とか……!その遺伝子に感謝だわ!毛先が白みがかったサラサラな黒髪!青と緑が溶け合ったようで、まさに雪の妖精ような切れ長な瞳!天然で長い睫毛!」


 …………睫毛が、天然かどうかはわからないだろうに………。ってか遺伝子に感謝って……初めて聞いたよ?

 …………顔が良いことは否定のしようもない事実だけどね。


「しかも運動神経滅茶苦茶良いし!確かこの前の全国模試2位でしょ!?完璧すぎ!」


 それはホントにそうね。………運動能力はまだしも、頭脳はちょっと分けてほしい。

 

 …………って、今気付いたけど他クラスの窓からも多数のギャラリーが………あー………声援飛ばしてるなぁ………。


 …………先輩嫌そうな、というか複雑そうな顔してるけど、それはファンクラブ的には良いのかな?


「あーもう最高っ!この学校入って良かった!」


「………良かったね。」


 ………うん、もはや何も言うまい。


「そういえば秋菜。」


「何?」


「今日の放課後は一緒に帰れなーー」


「「「キャァァァァ!!!」」」


「「!?」」


「え、何!?」


「え、えっと…………あぁ!会長が廊下歩いてる!」


「歩いてるだけ!?」


 嘘でしょうこの学園の女子達よ!あなたたちは推しが廊下を歩いてるだけで叫ぶのか!?そりゃ先輩も嫌になるよ!


「……………はぁ………カッコよかった………!」


「………先輩に同情するわ……。」


「何で!?」


「考えたらわかるでしょ!?」


 あれはまさか悪意無しでやっているの!?だとしたら結構末期………いや、それは元からだったかしらね。


「あ、それで、美春さっき、何て良いかけてたの?」


「ん、聞こえてたんだ。」


「聞こえてるよ!?」


「………うるさい……。」


「あっ……ごめん……。」


「んーと、そんなたいしたことでもないんだけど。私、今日一緒に帰れないわ。早く帰らないといけないから。」


「たいしたことじゃん!何で!?」


「いや、ちょっと用事………。」


「うえぇ…………カラオケ誘おうと思ってたのに………明日は絶対付き合ってよ!」


「ん。了解。ごめんね。」


「もー………今日は一人かぁ……!」


 さて、帰りますか…………。


------------

「…………よし!まだ7時!急いだかいがあった!………後30分くらいあるか………お風呂くらいなら入れるかな?」


 パッと入ってパッと出れば良いでしょ。


------------

…………はぁ…………サッパリした………やっぱり………()()に会うためには身支度を整えないとね!」


 そう、学校のみんな同様、私も推しがいる。それも多数の。彼らは共通して、リアルにいるのではなく…………2次元に存在している。

 そして!今日は!


「《冬月(とうが)》君の歌の更新日!」


 その多数いる推しの中でも一番!今私の中で一番来てるのが!歌い手の《冬月》君なのだ!

 歌声はもちろん、声の質も私の好みど真ん中!しかも!《冬月》君は自分で作詞作曲も行っているのだ!

 最高か?天よ、《冬月》君を造り出してくださりありがとうございます!

 そして《冬月》君のご両親の方々!この世に《冬月》君を産み落としてくださり本当にありがとうございます!もう全てに感謝………!一生推します………!


「………そういえば、会長の声質、何か《冬月》君に似てるんだよね………?」


 ………まさか、会長が《冬月》君?…………いやいや、そんなわけないって!声質似てる人間なんてごまんといるでしょ!

 しかも2次元の推しがリアルの先輩って………漫画の見すぎね。


「って!そんなこと言ってる場合じゃない!」


 私は急いで《冬月》君のチャンネルをチェック………


「あぁ…………2分前にアップされてる………!」


 ちょうど生徒会長のこと考えてたあたりだ………!くっ……先輩!あなたに罪はないとはいえ、恨みますよ!明日には忘れてるでしょうけど!


「はぁ…………とにかく聞こう………。」


 うう…………ホントはリアタイの更新と同時に聞きたかったのに………!


『~~~♪︎』


 …………………??????


「え、もう一回。」


『~~~~~♪︎』


 ……………ふぁっ!?


「もう一回!」


『~~~~♪︎』


 ……………


「最高か?」


 え、待ってマジで待って。え、嘘ヤバイ取り敢えず語彙力喪失しそう………!何これこの曲誰が書いたん?貢がせて。《冬月》君の魅力が今までで一番引き出されてる歌なんだけど。というかタイトル!【思春期】て!待って新情報!《冬月》君今思春期なの!?

 あ、コメントある………。 


“お久しぶりです!今回の歌は久しぶりに自分で作詞作曲してみました!ちょっと最近、リアルの方で色々ありまして………自分の思ったこととか、色々ぶつけたらこんな歌詞になっちゃいました……。※更新頻度が落ちてしまうかもしれませんが、2ヶ月に一回は最低でも更新するつもりなので待っていただけると嬉しいです……!”


 待つよぉ!?いくらでも待ちますけど!?2ヶ月どころか20年くらいは待つ………いや、それは供給が足りなくて私が死ぬか。


「あー………さいっこう!」


 《冬月》君の歌ホントに聞いてて気持ち良い!嫌な気分になるような歌詞書かないし歌わないもんね!安心して見れる大事な要素だよこれ………!


「…………でもやっぱり、何か似てるような………?」


 いやでも、あれだけ騒がれてるんだし………《冬月》君は今女子中高生を中心に凄い流行ってるし………誰にも疑われないなんてことはないはず………じゃあやっぱり勘違いだよね?


「あーあ!もう良いや!考えるの疲れた!歌、もっかい聞こう!」


------------

「……………眠い………!」


「またぁ?最近どうしたの?」


「いや、今日のは単純に寝不足………」


「昨日の夜何してたのよ………?」


「…………黙秘する……。」


 あれからエンドレスで《冬月》君の【思春期】を聴いてたから………気が付いたら朝の一時だったっていうね…………!


「もー………あ、そーだ!」


「何?」


「ごめん!今日は私が用事!」


「………マジで?何?」


「歯医者…………虫歯があるって……ママに連れてかれる……!」


「………それは頑張って。虫歯は長引くと余計痛くなるから。初期ならまだ大丈夫よ。治療も初めの方なら、まだマシだから。」


「うう………頑張る………。」


「ほら、明日はどこでも付き合うからさ。」


「ホントに!?ムーンバックス行ける!?」


「………まあ、良いよ。あそこコーヒー有ったよね?」


「もち!あぁ、明日が俄然楽しみになってきた!」


「それじゃあ今日の歯医者頑張らないとね。虫歯に滲みるわよ。」


「…………頑張る………。」


 今日も一人かぁ…………それじゃあ学校にちょっと残ろうかな?


------------

「ふんふふーん。」


 さてさて。何処に行こうかな…………学食は……別にお腹減ってないし………私部活にも入ってないしなぁ………。

 図書室でも行く?………ダメね、私、興味ない本読むと5秒で頭痛くなって10秒で寝落ちするんだったわ。


「………ん?………音楽室?第二?」


 第二音楽室なんでこの学校にあったんだ………何で使わないんだろ。って、私いつの間にか校舎の端の端まで来てたのか………そりゃ知らんはずだわ……。


「まあ、ここまで来たのも何かの縁だしね。………鍵は……開いてる?それじゃあーー」


「~~~~~♪︎」


 っは!?待ってこの声………《冬月》君!?何で!?

 ってことは………この扉の向こうには………《冬月》君の、所謂中の人が…………?


「………ええい!女は度胸!失礼しまーー」


「~~♪︎………はっ!?」


 …………そこには、妖精がいた。黒い糸を耳から垂らし、右手にはこれまた黒く薄い板のようなものを持っている。

 髪は毛先が白みがかっている黒髪で、とても神秘的だった。瞳は蒼と翠が溶け合ったような、そんな色。まさに、そう、まるで()()()()のような………。

 そこに居たのは………スマホから繋げたイヤホンを耳につけた…………生徒会長、海谷斗冬先輩その人だった。


------------

「海谷先輩ー!もっと声だしていきましょー!」


 …………あの日から、私は海谷先輩の声に夢中である。

 

「「「海谷先輩こっち向いてくださーい!」」」


 お、私の叫びに同調した人達が………仲良くなれそうね。


「…………今日も熱心だねぇ。」


「海谷先輩は存在してるだけで尊い!そしてあの声はホントに尊い!神みたい!………あれ?もう先輩が神で良いのでは……?」


「落ち着いて。」


「はい。」


 ………いやー………まさか、2次元の推しがリアルの先輩なんて、そんな漫画みたいなことが本当に起こるなんて………フィクションだけだと思ってたよ。

 あれだね。現実は小説より奇なりってやつだ。


「あーもう!ホントに良い声!」


「あんた、…………そろそろ本当にうちわとかペンライトとか持ってきそうね。」


「その手があったか!?」


 そうか!リアルの推しがいなかったから、そんな発送がなかった!そうだ、私の先輩への愛を伝えるために、うちわ作れば良いんだ!


「秋菜天才!ありがとう!」


「え、ちょっと私冗談で言ったんだけど………!?」


 秋菜が何か言ってるけど、私にはもう聞こえない。


「…………待っててくださいね、先輩!必ず私からの愛を余すことなくあなたに伝えてみせます!」


「ねぇちょっと美春!?」


 ああ!やっぱり推しって、最高!せっかくなんだから、目一杯青春して、夢中にならなきゃね!先輩に愛を伝えるために!


++++++++++++

「海谷先輩ー!もっと声だしていきましょー!」


「……ん?」


「「「海谷先輩こっち向いてくださーい!」」」


「……………またか………。」


「はははっ!相変わらず、大人気だな冬!」


「………うるさい………別に嬉しくない。」


「はいはい。何てったって…………冬には心に決めた人ーーモガァッ」


「……………それ以上話したらシバく。」


「悪い悪い。まあ、本人には聞こえようがないし、大目に見てよ、な?」


「…………本人いる前で言ったら、ホントにシバくからな………!」


「わかってるって!」 

 

「…………待っててくださいね、先輩!必ず私からの愛を余すことなくあなたに伝えてみせます!」


「……!?………………は!?」


「…………どっちもどっちなんだよなぁ…………はははっ……。」

    


 息抜きに書いてみました………。

  続編が少しでも気になると思ってくださる方は、

 ブクマや【評価】、よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 素晴らしい作品ですね! ☆5個つけさせて頂きました。 これからも頑張って下さい! 応援してます。
2021/11/13 14:12 退会済み
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