プロローグ
魔導具系、魔法使い系、魔法少女系、ダークファンタジー系、PK系、王道系、迷宮探索系、チート系などなど、デスクトップ上にボツになった小説が山積みだ。
これは三話しか書いていないけど、取り敢えず少しずつでも投稿する予定だ。
騎士道編としたのは、途中で作風が変わるかも知れないからだ。
そんときは新規として投稿する。
「第五騎士団は市壁の外堀のヘドロ除去だ。期間は7日後までとする。道具は明日朝イチで支給する」
朝礼に参加した王宮近衛騎士団長のヘルゼ・カービスの情け容赦ない命令が、雑務専門騎士団と化している……俺が所属する第五騎士団に下る。
マジカヨ!?
頭の中が真っ白になった俺達を無視して、王宮近衛騎士団長のヘルゼ・カービスは、第五騎士団の詰め所から逃げるように去っていった。
詰所が臭くてゴメンな。お前が汗臭くなる仕事ばかり命令するからなんだけどな。
「た、隊長……7日って無理っすよ……」
同僚で幼馴染のパーズが隊長に泣きつくが、隊長だって王宮近衛騎士団長には逆らえない。
そんな事をしたのなら、明日から見事に無職決定だ。
日数が少ないのに、道具がないため明日からじゃないと仕事が出来ないとか……。
そもそも王宮近衛騎士団長に計画性がないのが原因だ。
アイツは何度も同じ失敗を繰り返している。
管理職として無能なのだが、俺たち第五騎士団が帳尻を合わせているため、端から見ると王宮近衛騎士団長はきっちりと仕事を完遂させる有能な指揮官と評判なのだ。
そして、尻拭いのため時間も体力も気力も失っている第五騎士団は、勿論低評価でお荷物騎士団と言われている。
足の折れかかった椅子に腰を掛けるていたが、「ちと、水タバコ吸ってくるわ」と席を立った。
俺たち第五騎士団は、常に泥だらけの作業着を着ているため、そのまま街に出ても誰も騎士団員とは思われない。
ちなみに第五騎士団の詰所は、城内でも王宮内でもなく平民街の一角にある。
近所の平民たちは土木作業者の休憩所だと思っているぐらいだ。
「なぁ、俺さ。異世界に転生したら英雄になると思ってたんだけど?」
俺は俺以外に見えない光る球に話しかけた。
『なんで英雄になれると思ったんじゃ?』
「いや、逆に何でなれないのよ?」
『お前ら”日本人”は、皆同じことを言いおる。現実を見ろじゃ』
「だったら英雄になれるようなスキルをくれ!」
『馬鹿なのか? 考えてみろ。お前のような後ろ盾のない平民上がりの騎士が、王宮近衛騎士団の立場を脅かそうものなら、死地に送り込まれるだけじゃ。出る杭は打たれるんじゃぞ?』
「だから! そんな逆境も跳ね返すスキルをくれっていってんの!」
『無理じゃ。どんなスキルを与えても、その隙きを狙って来る。濡れ衣を着せられ断頭台送りじゃ』
「そんな……。俺、このまま馬車馬のように働いて、じじいになるだけなのかよ……」
マジで6K。
【きつい】、【汚い】、【危険】、【休日なし】、【金貨2枚】、【恋人できない】なんだよ。
労働基準法がある日本のほうが、まだまともだ。
俺は水タバコを吸う気力も無くなり、街を縦断して流れる運河を見下ろす土手に座る。
Lvもねぇ、ステータスもねぇ、スキルもねぇ、魔法もねぇ、そんな夢も希望もねぇ、美少女もいねぇ、モフモフもいねぇ、冒険もねぇ、こんな異世界転生があって良いのかよ。
確かに赤子として生を受け、幼少の頃に夢見た騎士になったんだがよ。
そこまでは……俺にしては上出来だった。
子供の頃は、夢や希望に溢れ、毎日が心躍っていた。
その思いを返せってんだ!!
「おっ。こんなところにいたのか」
「なんだ。パーズかよ。どうした?」
振り返りもせず幼馴染のパーズだと確信した。
「おい、午後から第ニ騎士団と合同稽古らしいぞ」
「はぁ? また弱い者いじめかよ」