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06:決戦! デカイ奴!

「だ、そうよボーイ。どうするのかしらん?」

「愚問、俺と美琴の前に立ちはだかる敵は全て切り伏せるのみ!!」

「アハン♪ それでこそ、ね。聞いたかしら司会者……いえレフェリーかしらん? 死合(・・)は続行よん」


「聞いたか? 紳士淑女! ェア~ンドゥ~ クソ野郎ども! この世に神も仏もいないのか? 否! 信じるのは自分の力のみ! その言葉を体現するかはこの男、ナガレが決定する!! 富と名誉を毟り取れ!!」


「美琴……先日死にそうになったつーのに、何だか楽しいな……たまらん、これぞ異世界で生きている実感だ!!」

「アハン♪ 勝負はお互い戦闘不能になるまで、勝負は一本勝負よん。周りは多重障壁と、強化土魔法で作られた観客席の土台があるから、気にしないでハデに暴れてちょうだいねん」


 流はこくりと頷くと、開始位置と思われるラインまで進む。


「双方準備はいいか?? それではこれより公開認定死合を開始する!! 思う存分殺りやがれ!! ――始め!! 」


 会場は割れんばかりの歓声と熱気で炎天下の昼間より、尚熱い風が熱波となって流を刺激する。


「グゴオオオオオオオオ!!」

「吠えるな獣、すぐに故郷(ジゴク)へ送ってやる」


 両者の睨み合いが激しくなり、今にも斬りかかろうと巨滅兵が流を威嚇(いかく)する。


(プの時のような早鐘を打つ危機警報もない……よし、やれる!)


 流れは美琴を納刀したまま、ごく自然体で佇む。

 それを見た巨滅兵は剣と盾を上方に掲げ叫んだ後に、流へ向けて突進する。


「お、おい! 蛮勇者が剣を抜かないぞ?」

「チッ、あいつこの熱気と、巨滅兵に呑まれてやがるんじゃねーのか!?」

「どうしたのよ! 早く動きなさいよ~!」


 観客達が流の無防備な姿に、焦りと落胆を合わせた怒号が飛び交う。

 そんな流は冷静に巨人を「観察」する。


「俺は殺れる時に躊躇(ちゅうちょ)はしない。――まずは一つ!」


 巨滅兵はその体格差で侮ったのか、盾を大きく振りかぶり流へ叩きつける。

 轟音と土煙が流がいた場所から爆発的に打ち上がり、会場は悲鳴のような叫びと、歓声で満たされ後、流の安否に会場が一瞬静寂に支配されたが――。


「ジジイ流・抜刀術(ばっとうじゅつ)! 奥義・太刀魚(たちうお)!!」


 巨滅兵が盾を振り下ろす瞬間、流は腰を落とし素早く巨滅兵の懐へ入ると同時に、斜め上へ美琴を抜き『太刀魚』を解き放つ!

 照明に照らされた銀光は怪く光りを()きながら、巨滅兵の左上腕を斬り飛ばす。

 

 流を叩き潰さんとした盾は、そのまま重力の鎖で引きずり落とされるかの如く、地面へと激しく落下し、一度地面にバウンドした後に観客席の中段へ向けて高速で飛んでいき、そのまま障壁に当たって粉々になる。

 そして盾を握っていた腕は地面に強烈にめり込み、双方その原型を喪失したのだった。


「グモオオオオオオオオッ」

「だから叫ぶな、鬱陶しい」


 土煙が晴れた時、観衆は目撃した。そのありえない現実を。

 そこには左腕を失った巨滅兵が苦しそうに、失った腕の先から血飛沫を撒き散らして(うめ)き声をあげており、威嚇するように流に大剣を向けている姿を。


「な……何が起こったーーー!? 巨滅兵が蛮勇者を攻撃して潰されたかと思いきや、逆に巨滅兵が腕を斬り飛ばされている~~~!!」


 静まり返った会場は息を吹き返す。

 それに呼応するかのように、大歓声が場外からも聞こえた。


 ジェニファーには流の行動と業は見えていた、だからこそ思う。「それは人の業では無い」と。


「ボーイ、貴方は何と言う……でもその子も巨滅級を狩る者。そう簡単には行くかしらん?」

「凄まじい剣技だったな。そしてアレにはまだ奥の手があったな」

「ヴァルファルド貴方、いつも突然現れるわねん。しつこい男子は嫌われるわよん?」

「……待て、俺は他人の()に手を出す趣味は無い。誤解をするな」

「あら、そうなの? それは少し残念だわん」


 そう言うと二人は流を注視する。


(生命力は依然健在か。弱点判定は……二つ、左腰と左脇腹!)


「殺られる前に殺っちまえってな~」


 流はどこぞの盗賊と思えるセリフを言いつつ、巨滅兵へ向けて走り出す。目標の左腰へ向けて斬撃を放つ刹那、第六感が警報を鳴らす!


「ッ!? 何だッ――」


 慌てて美琴を地面に突き刺し、車両のように急制動をかける。巨滅兵まで流の間合いがあと半歩と言った所で「ソレ」が起こる。

 

 先に切断した上腕部からは血が噴き出ていたが、その血が生き物のようにうねりだし、鞭のようにしなりながら、流へと向って来た。その長さ、約三メートル。

 流は美琴でガードをするが、美琴へ当たった瞬間そこを起点としてグネリと曲がり、流の左腕に強烈に直撃する。


「グウウ!! クッソ! 何だそれは、チートやチーターだろそんなん!」


 伝説の牙の王様が聞いたら『どの口が言うとんねん!』と、激しく突っ込まれそうなセリフを、流はまだ言えるだけ余裕だった。それは何故か?



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