01:巨滅の英雄章を手に入れよう!
【本編について】
このお話は現在連載している【日本最狂の妖刀で、誰も見た事がない異世界『骨董無双』】のダイジェスト版になります。
このダイジェスト版が2万字ほどになり、このお話を『リクヤ様』(@rickyrichard201
)が朗読にてご紹介いただけると言う、ビックリなプレゼントをいただきました!!
せっかく朗読をしていただける……ならばダイジェストで出そうじゃない! と言うことで、朗読用に内容を変更したものとなります。
なので、本編とは違い加筆&修正部分があります。
朗読は【6月6日(日曜)21時からツイキャスにて朗読予定】です!!
詳しくは今後、ツイッター(@t_rantarou)にて告知予定ですので、よろしければ遊びに来てくださね!
おまちしていまっす٩(๑•̀ڡ•́๑)وマッテルヨ
現在俺は、異界骨董屋やさんとか言う、看板がファンシーなクソったれな店へ足を踏み入れた事を少し後悔している。
なぜって? それはアンタ、元の世界に帰れないからだよ。
たくっ、俺が独り言の多い骨董狂いだからって、こいつは勘弁してくれよな。
え? 俺が誰かって? あぁ、失礼した。俺の名前は「古廻 流」って言う、現在二十歳のただの『善良な』商人だ。
話は戻るが、この骨董屋の品が、まさか魂……いや、付喪神が宿ってるなんて思わないだろ?
しかもその中でも俺の相棒のコイツ、日本最強にして、最も狂った妖刀『悲恋美琴」を、骨董屋の番頭である狐娘に押し付けられて、異世界で毎日ハードモードな人生だ。だれかイージーモードを実装してくれ。
しかもこの美琴……あ、この妖刀の事ね。それでコイツは、自分の気にくわない奴が触れると、即死させるほどの「ヤバイ呪力」を持っている。
だが、なぜか俺は持つ事が出来た……。後々分かるんだが、どうやら俺の過去が原因らしい。
まぁ、その辺りは本編を読んでくれ。朗読神たるリクヤ様の朗読にも限度ってのがあるもんさ。
それで今日、朗読神のリクヤ様に読んでいただくのは、俺が巨滅の英雄章ってのを手に入れた時の話なんだが……聞いてくれるかい?
おっと、そうだった。ついでに、ある男のちょっとした『ざまぁ』な話も聞いてくれ。
◇◇◇
いま流がいるここは、冒険者ギルドの訓練場とも言える場所で、冒険者ランクの実力テストに参加していた。
通常は冒険者登録をしたら着実にランクを上げ、力を蓄えていく事が一般的だが、実力に自信がある者はこのテストで結果を出し、その力に見合った等級を与える実力主義なのが、この世界のやり方らしい。
流もそれに参加し、前二組の実力テストが終わった後で、一人での参加となった。ちなみに二組のパーティーは双方とも三名で挑んだ敵である。
「さて、最後はロンリーボーイの出番かしらん。これまでの戦闘を見ても一人でやれるのん?」
「問題ない……が、言い方を変えても意味は一緒のネーミングで呼ぶな!! 俺は古廻 流って言うんだ、流と呼べ! ちゃんと覚えとけ。そして相棒はこの美琴だ」
流は腰にさした刀である、悲恋美琴を指差しジェニファーにアピールする。ぼっちじゃないよ! と。
「プハッ、アイツのお友達はその微妙に曲がった剣なのか? 笑えるぜ、なぁ、レイナ?」
「貴方と一緒にしないでよ、私は物を大事にする人は好きだよ」
今回実力テストに参加したチームの一つ、ドラゴンスレーヤーのメンバーで、唯一流に敵対的である男の声が休憩席の方から聞こえたが、それに対してもう一つのパーティーである「殲滅し隊」の面々は、流の刀である悲恋美琴の珍しさと美しさに関心していた。
「確かに相棒と言うだけはあるな、凄い作り込みに見える」
「ほんとだね、あたしもあんなの初めて見たよ」
「だな……これから抜くんだろ? 楽しみだな」
そして今回の監督者である超弩級の変態紳士で、ホットパンツから伸びる「ムタンガ・サスペンダーをこよなく愛する」漢女、ジェニファーちゃんは、流の腰の剣を眉をひそめるように見据える。
(これは……いや、まさかねん。でも聞いたことがある、アレと似ているわん)
そう疑問が口から出そうになったが、今はそれよりもテストを優先させる。
「はいは~い、独り身ボーイは参加って事ねん。じゃあ中央へ行ってねん」
「チョットマテ、だから一人じゃないって……ん? でも独り身なのは確かだから言い返せない! ぐぬぬぬぅ」
なぜか戦う前から敗北している流は、敗残兵の面持ちで中央へ向かうのだった。
「じゃあ早速始めるわん、黄狼三匹……いくわよん?」
「はいよ~」
なんとも気の抜けた返事をする流に、見学者達も固唾をのむ。
直後、魔法陣から黄狼が三匹這い出て来るが、これまでとは違いジリジリと後ろへと下がって行く。
「あらま、何事かしら!? アナタ達! ちゃんとお仕事しなさい!」
ジェニファーの叱責を受け黄狼達は一塊になる、そして一列になって流へと疾走しだす。
「あ~美琴さんをアイツが馬鹿にするから~。やっぱり怒ってるのを動物は分かるんだろうな。丁度よく一列か……観察眼で見た弱点は眉間だし、やってみようかね」
流はおもむろに美琴を抜刀すると、右足を後ろへと下げて中腰になった。
さらに美琴の刃を上にし、それを水平に構えて刃を後ろへと引き、刃と流の顔が隣り合わせになる。
迫る黄狼達。距離が残り五メートル程になってから左手を前に出し、中指と薬指の間だけをⅤの字に開き、黄狼の眉間をその指の間に捉える。
黄狼が射程に入るまで残り三メートル……二……一!
「ジジイ流・刺突術! 間欠穿!!」
――本来、この間欠穿と言う業は、敵に直径五センチ程の穴を穿ち、その穴を貫通させた背後から血液が間欠泉の如く、勢いよく噴き出す事から命名されたものだった。しかし今「現実に起こった」事は――。
「………………は?」
流が放った間欠穿は狙い通りに先頭を走る黄狼の眉間に吸い込まれた。
その直後〝ゾウン〟と言う形容しがたい音が響き、そして全員が目撃する。
先頭の黄狼が左右に真っ二つに割れ、それが連鎖するように背後の二頭にまで波及すると、まるでドミノが倒れるようにパタリ、パタリと割れた三匹が倒れた。
その直後、割れた黄狼達から勢いよく血飛沫が吹き上がり、正に地獄の間欠泉がそこにあった。
その場にいた全員があまりの惨状に驚愕して誰も動かない、変態紳士のジェニファーちゃんすら口をあんぐりとしている始末だ。
しかしその結果に一番驚いたのは、本来の業の結果を知っている、間欠穿を放った流れであるのは言うまでもない。