手話
上唇にシャーペンを乗せて上を見るうわ調子。
夕日が差し込む教室は天井だけはオレンジで汚れない。
カタン。
考える間にシャーペンがノートに零れた。
『……』
ペンを拾う私の手の上に手が重なる。
『究極に暇そう』
友達の声。彼女の声。私は暇だよって返した。
「よーし、じゃあ手相を占ってあげよう」
人差し指を立てて提案する相手に頷いてあげる。
頬杖に使ってない方の手を上げて診断を少し待つ。
「ほうほう、これはこれは」
私は頬杖を捨てて話を少し見た。
「恋愛線が良い調子ですね、あなたのお近くに、あなたのことを思っている人がおられるのかもやしれませんよー」
へえって思いながら流す。
「それは灯台のように暗く、外のように明るい。近すぎて見えないのかもしれません」
なるほど。曖昧な答えが彼女のやり方らしい。
「愛の告白も予想がつく、そんな濃ゆい線です。おほん」
手を口元に乗せて咳払う。
『好きです。付き合ってください。と言うでしょう』
在り来りすぎてその通りだと思った。
「お礼の返事は私も好きでしたを希望しています」
私は二回だけ瞬きを送って話を促す。
「おおっと、生命線はその分ペラいです。死に際は振られた友達に刺されて一瞬、これが本当のフレンドリーファイア」
面白くはない、上手なジョーク。
「生命線はギリギリまで来ています、心当たりは?」
彼女が朝の持ち物検査を顔パスした事実が今になって響いてる。
「感情線が、揺れてます。ふらふら、ふらふら」
もう手相なんか必要ない。彼女はそう言って私の手を握り込む。
ギュッと握ってズッと引き込み私の二の腕を捉えて薄ら笑み。
傾く酒瓶のように少なく多い言葉が一つと一つ。
『占ってあげた、お礼は』
鋭い眼差し。手汗を吸う手。孫の手も借りたい危機的状況。
『好きです、付き合ってください』
刺される前に精一杯の返事。
『私も好きでした』
口元がチュッと音を立てた。
他のサイトにも投稿されるらしい。そのサイトはまだできてないみたいなのであれですが。