THE プロレス2 〜ROUND 7 イベントスタート!〜
もちろん、「ホントに戦ってるんですか?」なんて言っちゃう人にそんな行動力、あるわけないのも分かってるんです。なぜなら、「ホントに戦ってるんですか?」なんて質問をするってことは、プロレスの予備知識があるからに違いないのです。なければそんな質問しないし、できないはずです。
これは筆者の邪推に過ぎませんが、訳知り顔で「ホントに戦ってるんですか?」なんてスカした顔で言う人は、かつてプロレスに熱狂していた時代があったんではないでしょうか。そう考えでもしない限り、あのテの質問の説明がつきません。
「ホントに戦ってるんですか?」と聞くのは、予備知識があるってことです。予備知識があるのに、わざとトボケて知らないフリをして質問してるってことです。まるで過去の自分などいなかったかのように。
そうです。あの質問の真意は、「かつてプロレスに熱狂していた自分」を抹消するためのイニシエーションなのです。日本人の国民性が、ここに如実に現れてます。いや、国民性かどうかは分かんないんですが。
とにかく、かつては熱狂し、声援を送っていた。ところが、何かのきっかけで熱が冷め、熱狂していた自分が恥ずかしいとさえ思うようになった。そんな自分を誰にも知られたくない。だから、「ホントに戦ってるんですか?」などと、一般人でしかないただのファンに聞くわけです。それで自分の過去が露呈してしまうなどとは想像もせずに。
これはグレーでアングラの副作用です。リアルっぽいけどリアルじゃない、嘘っぽいけど嘘でもない。どこか背徳的でいかがわしい世界観。そんな世界に足を踏み入れたことなんて一度もないよ、興味すらもったことないよ、という強がりを、筆者はあの質問を聞くたびに感じてしまうのです。私は美しい人間なんです、という強がりを。
かつて我が国を美しい国へ、などと言ったその口でカジノ構想をぶち上げるどこぞの国の宰相のように。
美しい国にしたいってことは、今は美しくないってことです。それはつまり、私は誰よりも美しい人間なんです、ということをことさら強調したいのです。
あのテの質問を耳にする度に、筆者は戦中、戦後にかけての無節操な国民性から、どれほども進歩はしていないのだな、という現実を見せ付けられる思いがするのです。