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終春プロローグ  作者: 毒メガネ
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平凡主人公ガッデム!!


平凡主人公ガッデム!!!!!!


三時限目と四時限目の間の休み時間。俺は一人自分の席でそう唱えた。心の中で。

窓の外の景色は色あざやかで目の保養になる。外で満開に咲く桜や、校庭で体育の授業を受ける一年生。ましてや女子。桜と彼女らを見ていると心が浄化される。

うふふふふふふふふふふふふ。

女子が32人いる。って事はおっぱいは64個。

うふふふふふふふふふふふふ。

が、俺の心の中はその程度のプリフュケーションでは浄化しきれなかった。

話を戻そう。

ラノベや漫画に出てくる主人公達に多く見られる特性は何でしょう。

まあ言っても色々なシリーズがあるし色々な作品があるのだから数えだしたらきりがないだろう。

その中で特に多いものを挙げるとしたら「平凡」では無いだろうか。

「俺の名前は○○○!!特に優れるものも無く、いたって平凡などこでもいる普通の高校生!!!」

こんな感じの出だしを見たことは無いだろうか。よくあるやつ。

見たことあるよね?あるよね?ね?ね?ね?

最近の作品では腐るほど見たことのある出だしだ。

皆さん。ちょっと立ち止まって考えてみてほしい。「平凡」とは何か。

たった今スマホの「ゴーグル」でゴゴってみました。

平凡とはこれといった優れた特色も無く、ごく当たり前なこと。また、そのさま。

だそうです。

はたしてこの「平凡」に彼らは当てはまっているでしょうか?シンギングターイム。

例えばとある作品で、主人公は自らの事を「平凡でさえないどこにでもいる高校生」そう主張しています。が、その数ページ後にめっちゃ可愛い幼なじみに思いを寄せられています。

はい!ギルティィィィィィィィィィ!!!

これは立派な詐欺罪です。

どこでもいる平凡の高校生。彼はそう主張していますが、はたして超可愛い幼なじみに思いを寄せられている平凡な高校生は世の中にどこにでも存在しているでしょうか?

否!!!!!!!!!

世の中にそんな奴はどこにでもいるわけがありません。現に俺がそうです。

よって彼は詐欺罪が適応され立派な犯罪者でファイナルアンサー。反論は認めない。以上。

そして二人目!

彼も同じく似たような手口で詐欺を行っています。

彼は「俺はどこにでもいる平凡な主人公!」的なことを公言していますが、自己紹介の終盤あたり、こんな失言をしています。「容姿はいい方だ」

ホワイジャパニーズピーポー!!!!!

コレガイワユルムジュンテヤツダヨ!シュジンコウヘイボンッテイッテルノニ、ヨウシハイイホウトモイッテル!カンゼンニツジツマガアワナイ!ヨッテギルティダヨ!!

と一人自分の席でうつ伏せになりながら心の中で叫んでいた。ソースは厚切りジェイソン。

平凡とか言ってるのに容姿はいいらしいっすよ。なんやねんそれ!そら平凡やあれへんがな!!

どうせその先の展開なんて読めてるわ!

「そう、あいつと出会うまでは?」「あの日までは……」

とか言って超可愛いヒロインと出会うんだろ?で、最終的にそのヒロインとくっつく。

平凡にそこまで出来るか?できねえよ。

とどのつまりこれは完全なる平凡平凡詐欺だ。自分は平凡だと言い張りながらも実は高スペックでおいしい思いをしていく。

小さい頃の俺はどれ程この平凡平凡詐欺の被害にあったことか。

平凡になれば超かわいいヒロインとくっつく事ができると思わされた。

おかげで中一の将来の夢作文に平凡って書いちゃったもん。

俺の夢に対して難色を示す先生に「俺は超絶可愛いヒロインキャラとイチャラブしたいんだ!」と熱弁してしまった事は、俺の黒歴史ランキングのトップに残る。

俺の夢を返せ。

被害総額ざっと三百万はいくな。


くっそ!!!平凡なんて大っ嫌いだ!


この時の俺はまだこんな事を思っていた。平凡という言葉に疑問を抱き、割と高スペックな自分を肯定し続ける。それこそが正しいと勝手に解釈していた。

が、その考えが大きく変わった。


そう……。あいつと出会ってから。

あいつとの出会いが俺の青春プロローグの始まりとなった。



〜数時間前

眩しいほどのお日さまの光が、寝起きで間も無い俺に爽やかな朝を知らせる。

今は4月の後半。新学期も始まったばかりで、夏には程遠い。そのため今日もこうして心地いい具合の朝日が眩しいぜ。

外では鳥たちがチロチロとさえずり合っている。なんとも微笑ましい光景だ。可愛すぎて食べちゃいたい。

それはまるでいつも通りの日常とは違う朝の到来を予兆しているような。(俺の心の声)

後もうしばらくはこうしてのんびり朝の至福に浸っていたのも山々なのだが、俺には朝一で課せられた使命があった。

「お兄ちゃん。もう8時だよ?遅刻しないの?」

俺の部屋の外から可愛い可愛いプリティ妹ちゃんがそんな馬鹿げた事をほざいている。


---望月(もちづき) 綾愛(あやめ) 中学3年生


「遅刻するに決まってんだろ。わざわざそんなこと聞いてくんな」

「あっそ、じゃあご勝手に」

俺が少し無愛想に言ったせいだろうか。妹ちゃんは冷たい反応を見せると、すぐに学校に向かってしまった。

あいつは確か今中学三年生だ。受験真っ盛りだから多少イライラしてるんだろうな。絶対そうだ!俺のこと嫌いなんてありえないもん!

「って、そろそろ準備しないと」

いい加減こんなのんびりしていると、遅刻が現実味してきてしまいそうだ。



「行ってきまーす」

と、母に言って家を飛び出したのだが返事はなかった。

我が家の朝は忙しない。

父が7時に家を出ると、次は8時に俺と妹が登校する。

俺たちがご飯を食い終わるまでは、家の中がゴタゴタしているイメージが強い。

それから、母は俺たちが朝ごはんを食い終わる7時半ぐらいからは暇なのだよ。

だからまだ母は…。

ちょい待てい。今何時だ?

「…………………………」

俺のスマホの時計は高スペックだ。いつ見ても絶対に時間が狂ってるなんてことはなかった。しかし、今日の時計は明らかに狂っている。

だって八時五分を指してるんだもん!そんなことは絶対おかしいもん!

八時超えてるならお母さんは仕事に行く前に少し韓流ドラマを見てる時間だから、絶対に行ってらっしゃいって言うもん!

俺は駄々をこねた。これでもかっていうぐらい駄々をこねた。こねこねした。

そして、冷静に現実を受け止めた。

スマホの時計が狂うという、あまり現実味のしない話し。いつも俺にだけ対応が冷たい家族全員。

俺は恐怖でしばらく歩けなかった。

「グスンッ……。俺……絶対母ちゃんに嫌われてるよ……」

男泣きをした俺は一人、たった一人でこの辛い現実という長き道を歩くのであった。


「あ〜あ〜。今日も学校か」

俺は溢れんばかりのため息と一緒に小さくそう呟いた。

耳にイヤホンをはめているせいで音の大小はそんなに厳密にはわからないが、周りの人の迷惑にならないようには配慮した。

俺が今いるのは学校に行くための電車の中だ。電車は他の人がいる。それぐらいの常識は抑えているため、かろうじて電車の中では独り言は控えているのだ。

たまに無いだろうか。イヤホンしながらとか、耳ふさぎながら話してたら意外と声がでかかったみたいな。ほんとにしょうもないあるあるだけどよくあるよね。

それが怖くて独り言を抑えたのだ。

。。。。。。。

それだけです。


うちから駅を四つまたぐと、俺の通う私立恵比寿高校のある地区に到着する。

私立恵比寿高校。おれの通う学校だ。

私立恵比寿、高校。

え?アイドルグループ?

違う違う違う違う違う違う違う。全然違う。

あれはだって中学でしょ?こっち高校だから。パクリとかそんなんでは一切無い!言いがかりつけんな。

もう中学生ともう高校生。な?全然違うだろ?てかあの人最近見ねえな。

そうだ。自己紹介を忘れていた。


---望月 春馬 (もちづき はるま) 高校二年生


ずっと喋ってたのに自己紹介を忘れてしまった。てへぺろにござんす。

ちょっと話を戻しますけど、うちのばあちゃんは連合国軍総司令部の初期メンバー……。止めよう。怒られそうだ。

といった具合に俺の性格を一言でまとめると「適当」というのが適当だ。

うん。ダジャレとかじゃ無いよ。日本語って難しいよね。

外見は、ジトッとした黒髪の青年。覇気が無い性格のせいか常に目は半開き。しまりの無い表情をしている。が、目鼻立ちは整っていてどこかあどけなさの残る顔立ちをしている。

いつでも「あなたの外見をラノベの紹介風に表してみてください」と面接官に質問されもいいようにある程度組み立てておいたのだ。

うん。痛いね。

外見はそんなとこだろうか。あー。身長。身長だよね。身長気になるよね。身長はデカイのか小さいのか平均なのか定かでは無いが、175センチという数字である。なんかデカすぎもしないし普通でも無いし。いわば微妙なんだよな。

あとは、基本俺は高スペックだ。料理も少しできるし、勉強もちょっとできるし、運動も少しできる。人との会話もある程度できる。手先は微妙に器用。ゲームの腕前も平均以上プロ未満。

これだけ言えばわかるかな。伝わるかな。

どの分野でも平均以上はできるつもりなのだが、よくいる異世界ものの主人公ばりにチートでは無いのだ。

俺は一概に高スペックとはいえないのだ。

つまり俺は微妙高スペックキャラなのだ。

え?微妙に高スペック?普通にいいじゃん。平凡より全然マシじゃねえか。自慢してんじゃねえよ。そんなことを思う奴も出てくるだろう。

きみたち。少し考えて欲しい。俺がどれほどの苦痛とともに生きているか。

RPGモノで例えるのならばめっちゃ強い中ボスが出てきたら、ラストゲージの半分ぐらいで負けるぐらい。

弱すぎて「は?」となるわけでも無いし、強すぎて「すげーーー!」と歓声が上がるわけでも無い。

中途半端なのだ。

一瞬でボロボロに負ければかなり好印象として残るだろう。逆にそれをネタにもできる。例えばこれが異世界ものの作品ならば、そのど底辺から努力して強くなって中ボスを倒せばそれなりの作品に仕上がる。

逆に圧倒的な強さで中ボスを倒せば、それこそ超好印象を得る。何よりカッコいいだろ。そいつがラノベの主人公ならば俺TUEEEEEEEEEEEEEものの主人公として十二分に活躍してくれること間違いなしだろう。

その二つに対して、微妙に高スペックが中ボスと戦うとこうなる。

「わあ!中ボスモンスターだ!戦うぞ!」

ジャキン!ジャキン!ジャキン!

「よし!ボスをラストゲージまで追い詰めたぞ!あと一息だ!」

ジャキン!ジャキン!ジャキン!

「よし半分!あと少しだ!!って、あれ!もう回復のポーションが無い!」

「待て待て待て待て!ちょっとタイム!ちょっとタイ……グハァ!」

ゲームオーバー。

。。。。。。。。。。。。(周りの奴らの反応)

なんかさ。微妙じゃね?

ラストゲージまで追い詰めた。すごいよ。半分まで追い詰めた。すごいよ。そこで死んだ。うーーーん。

例えばこれがラストゲージのあと四分の一で負けたのなら「おしい!次やれば絶対に勝てるよ!」と、応援できる。

が、半分て微妙じゃね?別に対して惜しくなくね?「次勝てるよ!」説得力ゼロだろ。「おい雑魚WWWW」そんなこと言ったら本気で凹ませてしまうだろ。

そう。結果彼らが出す結果はただ一つ。

「あ、半分のとこで負けたんだ。可哀想」

といった哀れみの目。

お前ら本当に微妙高スペックになりたいか。

俺は止めるぞ。絶対こんな微妙な高スペックを持ってはダメだ。

と、説明していると学校まであと200メートルのいちまで来ていた。

そこは、学校の周りだけあってなかなかの市街地となっている。

道はある程度整備されていて、その周りにはおそらく1、2年前に建てられたであろう新築が並ぶ。

車の通りも多く実に賑やかな通りと言える。平日にイヤホンを両耳につけながら歩いていたらイヤホンから流れる音楽なんてろくに聞こえてこないだろう。

ここから学校までは200メートルといっても道はジグザグが多く、見渡しが悪い地形になっているのだ。ジグザクマに匹敵のコースといえよう。

そして、ここに来るとおれは毎日決まってする事がある。

今からそれの準備に取り掛かるところだ。

「よーし、ここからが本番だ」

俺はカバンの中から食パンを引っ張り出す。それも少し前トースターでこんがり焼いたものを。

カバンの中パン屑でいっぱいじゃん。て言うツッコミは少し待ってて欲しい。あとで多分なんとかするから。

俺はそれを口で咥えると、すぐにバァと走り出す。

ジグザグで見渡しの悪いこの地形を。付け加えるなら遅刻まじかで周りの生徒も少し焦るこの時間帯に。

いい加減察しのいい子は気付く頃だろう。そう!俺のやりたいことはただ一つ!

「主人公とヒロヒンのではいのシーンのおうぼう!パンをくわへながらはひっていはら、角を曲がったとほでヒロヒンとぶつはる。そのまますこしいいはいをしたあと、教室でそのヒロヒンとばったりそうふうという王道パターン(主人公とヒロインの出会いのシーンの王道!パンをくわえながら走っていたら、角を曲がったところでヒロインとぶつかる。そのままお互い少し言い合いをした後、ら教室でそのヒロインとばったり、そんな感じの王道パターン)」

走りながらパンを咥えて必死に説明した。おそらく8割型伝わってないと思う。

とにかく簡単にまとめると、出会いのシーンの王道をやりというわけですよ。ぬるふふふ。

……。はいそこ、マジ痛いやつとか言わない。

「って、あれ?」

そんなことを考えていたら、俺はもう校門についていた。出会いどころかほぼ人ともすれ違いすらしなかった。

完全に俺の王道出会いシーンの実現の夢は儚く消えていった。

世の中無駄の積み重ねだとはよく言ったもんだ。


そんなこんなで休み時間の今に至る。

マジでラノベのような展開が一つも起こらないまま。

確か次の時間は数学だったはずだ。

机の中から数学の三点セットを引きずり出して机に無造作に並べたら俺の休み時間にやるべきことは終わる。

やるべきことが終わったら、一人本を読むとかスマホいじるとかそんなことをして時間を潰している。

周りの連中は仲のいいもの同士おしゃべりおしゃべりどんぱちやってる中、俺は一人単独で時間を潰しているのだ。

別に俺はぼっちなわけでは無い。友達はある程度いる。本当だよ。

今の時代、主人公はぼっちってだけで十分に華があるのだ。とある作品の影響でぼっちへの意識が変わったおかげだ。

あの作品は、普段なら欠点でしか無いぼっちを面白おかしく表現している。よってぼっちを最強の武器にしているのだ。

かくいう俺は友達が二、三人いる。ギリギリぼっちになんねえんだよ、ちくしょう。本当だよ。

それなのになぜみんな俺の周りにこないかって?

そんなの簡単さ。

俺、かなり影が薄いんだよね。

だから多分みんな俺の存在に気づいてないんだと思う。

本当に微妙高スペック主人公は辛いよ。いっそのこと平凡主人公にでもなりたいわ。


そして、1日が終わった。

俺の1日は他人と会話する回数が少なすぎてろくな出来事も起きず、F1カー並みのスピードで過ぎ去ってしまう。

今日もこうして気づいたら真っ暗の部屋で目をつむっているまでである。

ところで、君たちはもう気がついたかい?

少し前のプロローグ的なやつで言ったアレだけどさ


そう……。あいつと出会うまでは。


あれ、俺のただの妄想でした。てへぺろ。

よくあるだろ?ラブコメとかの始まりとかのあれ。あれを俺もやってみたかっただけです。

現に俺にそんな出会いは無いと割り切ってはいるのだが。どうにもなあ。

そんなこと起きないかな。みたいな淡いことをふと考えてしまう。

ああ。何でもいいから、なんか起きねえかな。

こうしてまた将来に期待を抱いた。

窓の外に広がる果てし無い空のように、何が起きるかわからない、不確かな未来に。

ふと見上げた夜空が、いつもよりも明るく感じた。

気がする。


とりあえず、ご視聴ありがとうございます。

おい!テメェ!ラブコメとか言っておきながら女キャラ出てこねえじゃねえか!

と、不満をお持ちのあなた!

安心してください。次出ますよ!

…………。

なんか疲れてるみたいです。

今日はあったかい布団で早く寝ます。

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