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レジェンド・オブ・ダーク  作者: 粗茶
第一章 未知の世界
6/17

スキル・新たな拠点

 翌日、レオンの自室にはアインスが呼び出されていた。


「レオン様、今日はどのようなご要件でしょうか?」

「うむ、他でもない。お前に調べてもらいたいことがある」

「レオン様のためでしたら如何なる事でもお調べいたします」


 アインスは喜々として答える。

 レオンの役に立てることが嬉しくて、その表情からは喜びが溢れ出していた。


「それは頼もしいな。この世界では痛みを感じるのは知っているな」

「はい。一部の従者から伺っております」

「一部のだと?痛みを感じない従者もいるのか?」

「そのようですが、それがどうかなされたのですか?」


 アインスの言葉を聞いてレオンは嬉しそうに声を上げた。


「そうか、痛みを感じない従者もいるのか。アインス、痛みを感じない従者をリストアップしろ。それと、些細なことでもよい。この世界で気付いた事や変化したことがないか調査せよ」


 従者たちに取って主人であるレオンの喜びは何よりも代え難いもの。レオンの嬉しそうな声を聞いて、アインスも釣られる様に微笑んだ。


「レオン様、調査結果は書面に纏めた方がよろしいでしょうか?」


 にこやかに答えるアインスの言葉に、レオンも書面の方が確認しやすいなと小さく頷いた。


「そうだな。そうした方が分かりやすいか。では、そのように頼む」

「畏まりました」


  アインスは敬意を払うように深々と一礼してから立ち去った。その後ろ姿を見送り、レオンはボソリと一言呟いた。


「何とかなるかもしれないな……」




 調査を命じて丸一日が経つ頃。

 アインスは数十枚の書類を持って再びレオンの部屋を訪れていた。

 レオンはその書類に目を通しながら、確認するように従者の管理画面を開いていた。

 書類と管理画面を幾度も見直し、間違いないと確信すると目を細めてほくそ笑む。


「そう言う事か……。スキルの効果が変わっている。いや、追加されていると言うべきだな」


 アインスはレオンの傍に佇み、嬉しそうなレオンの様子に頬を染めていた。

 そんなアインスに不意にレオンから質問が飛ぶ。


「アインス、痛覚無効のスキルはどういったものか知っているか?」


 不意に話しかけられ、ドキッとしたアインスであったが、レオンから笑みを向けられ更に喜びが込み上げてくる。

 本当なら今すぐにでも飛び跳ねて喜びたいところであるが、臣下としてみっともない姿を見せることはできない。

 そのため、アインスは冷静を装い普段と変わりない優しい笑みを浮かべる。


「存じ上げております。激痛や鈍痛と言ったバッドステータスを無効化する働きがございます」

「その通りだ。それらのバッドステータスはHPの自然回復を阻害し、一部のステータスを僅かに下げる。痛覚無効のスキルはそのバッドステータスを無効化することができる。しかし、どうやらこの世界ではそれだけではないようだぞ?」


 レオンの言葉にアインスは首を傾げた。


「と、仰いますと、他にもまだ何かあるのでしょうか?」


 アインスの知る知識の中ではその以外の効果はない。まだ何かあるのかとレオンの言葉に耳を傾けた。


「うむ。どうやらスキルの名の通り、本当に痛覚がなくなるようだ。従者の取得しているスキルを確認したが、痛みを感じないと言っている従者は、みな痛覚無効のスキルを取得している。これの重要なところは、装備品で痛覚無効のスキルを取得しても痛みを感じることにある。つまり、自身で取得したスキルでなければ痛みを感じてしまうという事だな」


 レオンは話し終えて再び書類に視線を落とした。

 アインスは感心したようにレオンを見つめ、少し気になっていたことを尋ねた。


「レオン様、もしや他のスキルも同じような効果があるのでしょうか?」

「それはまだ分からない。だが、調べる必要はある。アインス、もっと詳しくスキルに関して調査しろ。僅かな違和感も見逃すな」

「畏まりました。すぐに調査に取り掛かります」


 アインスはレオンに深々と頭を下げて部屋を後にした。


 後日、アインスの報告で幾つかのスキルでも同じような効果が確認される。

 アインスに渡された書類に目を通し、レオンは部屋で一人追加の職業をどうするべきか悩んでいた。


(恐怖無効など幾つかのスキルでも効果が追加されているのか……。取り敢えず、状態異常を無効化するスキルは全て取得した方がよさそうだな)


 痛みに耐性の無いレオンが、痛覚無効のスキルを持つ職業を選択したのは言うまでもない。

 レオンはその他にも恐怖無効、魅了無効、支配無効、即死無効など、状態異常無効化のスキルを持つ職業を新たに幾つも選択していった。

 レオンは今まで装備品で全ての状態異常を無効化していたが、この世界では装備品を奪うことも破壊することも可能であり、それらは従者たちと検証し確認済みであった。

 そこでレオンが最も危惧したのが、戦闘中での装備品の破壊及び、スキル強奪(スナッチ)での装備品強奪である。

 状態異常を無効化する装備が奪われ精神支配を受けた場合、レベル200のレオンを止める者は誰もいなくなる。

 そうならないためにも、レオンは万全を期して全ての状態異常をスキルで無効化することに決めたのだ。

 レオンは全ての職業を選択し終わると、訓練教本・極を取り出し使用した。

 膨大な熟練度がレオンの体に流れ込むと同時に、レオンの目の前にメッセージが現れる。


【転職できる職業がございます】


 レオンはメッセージに従い次々と職業を転職させていく。

 その過程で、お目当てのスキルを持つ職業を選択することも忘れない。

 レオンは全ての職業がマスタークラスに転職しているのを確認してから、ステータス画面を開いてスキルを確認する。

 そこには膨大な量のスキルが表示されており、その中から状態異常無効化のスキルを探していった。

 取得しているスキルで全ての状態異常を無効化しているのを確認すると、安心したのか自然と胸を撫で下ろしていた。


(よし、これで状態異常に関しては非の打ち所がない。後は拠点の完成を待つばかりか……)


 今まで悩んでいた職業も選び終え、後は拠点の完成を待つのみであった。

 この世界を知るためにも何れは外に出なくてはならない。しかし、この未知の世界を調べるためには、身の安全を確保するための拠点は必要不可欠である。

 そのためレオンは拠点の完成まで動かない。


 そして世界はまだ知らない。世界を蹂躙する化物がこれから解き放たれることを……



 更に月日は流れ、レオンがこの世界に来てから半年、ついに新たな拠点は完成する。

 拠点の内部は、迷宮がある第一エリアから、レオンの居住区がある第八エリアまで八つのエリアに分かれていた。


 第一エリアは同じ部屋が幾つも連なる迷宮。

 その数は地下も合わせると1000にも及ぶ。

 しかも、侵入者を捉えるための麻痺毒のガスなど数多くの罠が仕掛けられていた。

 当然のように転移系の魔法を阻害する結界も張られており、一度深く潜り込めば簡単に抜け出すことでがきない作りになっていた。


 第二エリアは闘技場。

 古代ローマのコロッセオを彷彿とさせる作りであるが、その大きさは直径1キロにも及ぶ。

 観客席の高さは最大200メートルを越すほど巨大であり、中には豪奢な貴賓室も設けられていた。

 上空にはアインスの創り出した偽りの大空が広がり、更にその上には人工太陽が輝いている。

 闘技場には常にレオンの従者が控えており、万が一に迷宮を突破されても、ここで殲滅できるように常に鉄壁の布陣を敷いていた。


 第三エリアは牢獄と尋問部屋。

 侵入者や敵対者を閉じ込めるための頑強な牢獄が幾つも連なり、その一角には尋問を行うための尋問部屋も完備されている。

 しかし、そこに置かれているのは見るも(おぞ)ましい拷問道具ばかり、正確には拷問部屋と呼ぶのが正しいのかもしれない。


 第四エリアは農場プラント。

 (かつ)ては木材を確保するための植林場であったが、エリア内を更に拡張し、今では多種多様な薬草や野菜なども栽培していた。

 その大きさは直径20キロにも及び、エリア内には小さな湖もあれば、川も流れ風も適度に吹いている。まさに、外にいるのと何ら変わらない風景が広がっていた。

 上空には闘技場同様に偽りの空があり、魔法で創り出した人口の太陽が輝いている。

 しかし、こちらは常に太陽が昇っているわけではない。外の太陽の動きに合わせるように、夜になると太陽は沈み暗闇が訪れる。代わりに夜空には満点の星空が広がり、微かな月明かりが植物たちを照らし出す。

 態々(わざわざ)こうして夜を演出しているのには理由(わけ)がある。それは、ペットたちが暮らしていることや、植物を栽培していることに起因していた。

 夜行性のペットがいることや、植物の生育には適度な寒暖差も必要だからである。


 第五エリアは海洋プラント。

 ここは海洋系のペットが暮らす場所。その他にも多種多様な魚介類を養殖していた。

 尤も、養殖といっても何か手を加えるわけでもなく、稚魚を放って後は放ったらかしである。

 エリアの大きさは直径20キロと農場プラントと同じであるが、こちらは見渡す限りの海で、中央に真っ直ぐ桟橋が伸びているだけであった。

 エリアの中央に小さな小島があるが、そこには一部のペットの住処として幾つかの家が建てられているだけで他には何もない。


 第六エリアは戦略室とそれに付随する施設。

 戦略室といっても特別な何かがあるわけではない。広い会議室の中に、レオンや従者たち全員が座れるだけの巨大な円卓が置かれているだけである。

 その他には書庫、錬金棟、監視部屋など様々な施設が併設されていた。

 侵入者が現れた際に指揮系統を統一する場所でもある。


 第七エリアは商業施設と従者の居住区。

 商業施設はよく見かける商店街のように、通路の左右に数多くの店が立ち並んでいた。尤も、商業施設は人手が足りず、今は残念ながら全て閉まった状態である。

 そして、従者が住むための居住区は二つの区画に分かれていた。

 一つはレオンが自らの手で一から創り出した従者、ナンバーズが住む区画である。

 従者たちの中でも上位の存在ということもあり、第八エリアに最も近い場所に居を構えていた。

 もう一つはガチャの従者たちが住む区画である。

 区画が分かれているといっても部屋の大きさが変わるわけではない。レオンの住む第八エリアに如何に近いかの違いでしかなかった。

 尤も、従者たちの中ではそれが何より優先されるため、上位者であるナンバーズが、第八エリアに最も近い場所に居を構えるのは必然であった。 


 最後の第八エリアは玉座の間と控えの間、そしてレオンの居住区となっていた。

 ナンバーズとアーサー以外は軽々に立ち寄れない場所であり、従者にとっては神にも等しいレオンの住まう神聖な領域である。

 そして今まさに、その神聖な領域に全ての従者が足を踏み入れていた。

 拠点の完成を祝し、玉座の間には全ての従者が集い跪いている。

 拠点拡張の際に黒曜石や大理石、様々な鉱石が見つかったこともあり、玉座の間は美しい黒曜石で出来ていた。


 天井には宝石を散りばめた煌びやかなシャンデリアが等間隔に吊るされ、その光は黒曜石に反射して幻想的な光景を生み出している。

 入口から玉座までは見るも鮮やかな真っ赤な絨毯が敷かれ、その横には黒曜石の柱が規則正しく並んでいた。

 数段高い場所に置かれた玉座は上質な木材を用いて重厚な作りになっており、肘掛(ひじか)けや背凭(せもた)れには金糸、銀糸の刺繍が施された最高級のクッションが使用されていた。

 椅子を縁取るように、宝石や金細工で豪奢な装飾が施され、それが眩いばかりに輝いている。


 従者たちが見守る中、レオンはメニュー画面から拠点画面を開き、新たな拠点申請をしていた。


【この場所を新たな拠点にしますか?】


 レオンが【はい】を選択すると、不可視の波紋が広がり洞窟内を覆っていく。

 これはゲームの頃と変わらない仕様である。拠点として相応しいか、他に占有者がいないかの審査であり、これに合格することで新たな拠点として認められる。

 程なくしてメッセージが現れた。


【新たな拠点として認められました】


 レオンはメッセージを確認して拠点画面に視線を移す。

 そこには洞窟入口から最奥のレオンの寝室までが拠点として登録されていた。


 レオンは鷹揚に頷き、跪く従者に視線を落とす。


「ご苦労であった。お前たちの献身的な働きにより、ここに新たな拠点が誕生した。改めて礼を言う。お前たちの働きに感謝する」


 アインスが従者を代表して口を開いた。

 その表情は喜びに満ち溢れ、今にもレオンに抱きつかんばかりである。


「なんと勿体無いお言葉。我ら従者は今後より一層、レオン様に忠誠を誓うことをお約束いたします」


 アインスの言葉が終わると示し合わせたかのように他の従者が声を揃える。


「レオン様に絶対の忠誠を誓います!!」


 その言葉を聞いてレオンは満足気に頷き返した。


「うむ。お前たちの忠誠心嬉しく思う」


 歓喜の表情を見せる従者たちを見渡し、レオンはこれからのことを考えていた。


(先ずは周辺調査だな。ガリレオのスキル神の眼(ゴッドアイ)で森の大きさは調べがついているが、そこに生息する魔物については未だ不透明なことが多い。今の俺の従者たちなら例えレベル100の魔物と遭遇しても負けることはないはず。何せ装備ガチャを回して装備品を集めたからな……。特に全状態異常を無効化するアルテミスの指輪を集めるのには苦労したよ。あれで課金ポイントをどれだけ使ったか……。本当ならダメージを軽減する守護獣の腕輪も欲しかったけど、あれは製造限定の希少アイテム、そこまで贅沢は言ってられないか)


 レオンはコレクター気質が有り、ゲーム内で売られているアイテムは勿論、様々な装備品を持っていた。それでもレベル100の装備に限定すると、47人分を賄えるほど手持ちの装備を持っていたわけではない。

 特にレオンが重要視したのが状態異常である。魅惑、支配、混乱なので同士討ちや情報の漏洩が起これば、この拠点も安全とは言えなくなる。

 そのため、全状態異常を無効化するLR(レジェンドレア)アイテム、アルテミスの指輪は47人分どうしても必要であった。


 本来であれば手詰まりの状況だが、レオンには装備の問題を解決する奥の手がある。

 それは有り余る課金ポイントでガチャを回すこと。レオンの運の良さもあって装備は順調に集まり全ての従者に行き届いた。

 ガチャで課金ポイントを大量に消費したが、それでもまだ7182000ポイントも残っていた。


 レオンは周辺調査を開始すべく従者に命令を下す。


「フレッド、霞、ノワール、隠密能力に長けたお前たちで森の調査にあたるのだ。特に、未知の魔物やレイドと遭遇した際には、戦闘を避け情報を持ち帰ることを優先しろ。もしかしたら、レベル120の魔物もいるかもしれない。必ず三人一組で行動し、単独行動は絶対にするな」

「はっ!!!」


 三人は返事とともに深々と頭を下げる。

 レオンは三人の様子をつぶさに観察するため、先ずはフレッドに視線を向けた。


 義賊フレッドは金髪碧眼の青年で、隠密行動や盗みに特化した盗賊(シーフ)である。

 邪魔にならないように短めに切られた髪の隙間からは、鋭い眼光が見え隠れしていた。

 他の従者に比べ戦闘能力は一段劣るものの、盗みに関しては従者の中で随一である。

 盗賊のような軽装の上からフード付きの黒い外套(がいとう)を羽織り、その下には短剣やクロスボウを装備していた。

 洗練された動きで恭しく頭を下げる様子からはレオンへの敬意が感じられる。


 レオンが次に視線を向けたのがノワールである。

 忍び寄る影(シャドーストカー)ノワールは影の悪魔であり、ガチャの設定で魔王配下の十二魔将となっていた。

 十二魔将は言葉通り12人存在する。魔王も同じガチャの従者であるが、魔王と十二魔将にも主従関係があり、ガチャでの設定がそのまま現実の世界に反映されていた。

 ノワールは悪魔と言うだけあり、風貌は異様で黒いフード付きの外套を深く被り、微かに見える顔は黒い(もや)で覆われ窺い知ることはできない。その黒い靄の中に目と思しき二つの赤い光が浮かんでいるだけであった。

 実体を伴わないことから隠密能力は従者の中でも極めて高く、表情が見えないことから、その思考を読み取ることは極めて困難である。 


 レオンは最後に霞に視線を移した。

 くノ一の霞は見目麗しい女性である。

 艶めく長い黒髪は後ろで一つに束ねられ、吸い込まれるような黒い瞳が印象的であった。

 霞はくノ一という職業を有していることもあり、当然のように隠密能力に長けていた。

 しかし、霞が本来の力を発揮できる場は暗殺である。

 それを考慮するならば、唯の調査に駆り出されるなど霞にとっては不名誉なことなのかも知れない。

 霞は表情を悟られないように黒い外套を目深に被り俯いていた。


 そして、三人とも同じ黒い外套を羽織っているのには理由(わけ)がある。

 黒い外套の名は透明(シースルー)マント。一日の使用時間に制限はあるが、姿を消すことが出来るマントである。

 三人は隠密能力に優れているが魔法で姿を消すことはできない。そのため、念のためにとレオンが予め持たせていたアイテムであった。

 透明(シースルー)マントに身を包み踵を返して立ち去る三人。

 その後ろ姿にレオンは僅かに眉を顰めた。


(フレッドからは敬意を感じられたが、他の二人はどうなんだろう……。今のところ従者たちは俺の言うことに従ってくれている。裏切りはないと信じたいが――やっぱり不安だ。霞は俯いて顔を合わせようとしなかったし、もしかして嫌われてるのかな……)


 三人が玉座の間を出ると、急に霞が息を荒げて股を摺り合わせていた。


(レオン様が、レオン様が私を見てくれた。やばい、格好いい、どうしよう……。もう死んでもいい。あぁ……、レオン様、レオン様、レオン様……)


 股間に指を這わせる霞を見てフレッドとノワールがギョッとする。

 正確には外套に覆われ見えないのだが、二人とも何をしているのかは気配で感じ取っていた。

 その場で立ち止まり動こうとしない霞に、二人は言葉を発することもできずに唯々(ただただ)互いの顔を見合わせ行為が終わるのを静かに待つしかなかった。

 暫くすると、霞は「ふぅ」と息を吐いて、何事もなかったかのように移動を開始する。その表情は凛――すっきり――としていて、いつもの表情に戻っていた。

 急かすように先頭を駆ける霞に、フレッドとノワールは呆れ返るばかりである。

 霞は自分の行為が気付かれていないと思っているのか、それとも何も言うなと無言で訴えているのか、二人とは顔を合わせようともしない。

 そんな霞の態度に、フレッドとノワールは溜息を漏らさずにはいられなかった。


 レオンの心配は杞憂に終わる。

 霞は忠誠心や愛情が振り切っているだけ、少し恥ずかしがり屋の頭のおかしな子でしかなかった。

 当然、裏切りなど皆無であり、心配するだけ無駄であった。






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