さあ走り出そう
さて、みなさん。今から蒸気機関車を走らせましょう。大丈夫。ここはバーチャルな昭和三〇年代日本。本線上を走っていても何もおかしくありません。甲種蒸気車運転免許もボイラー技師も持ってなくて大丈夫です♪だってバーチャル昭和三〇年代♪現実ではないのですから♪
さあ、機関士席に着きましょう。あ、そうだ、あなたの服装は今、何ですか?ラフなTシャツに半ズボン?それとも花柄ワンピース?はたまた学生服?何でも構いません。どうせバーチャル昭和三〇年代ですから。でも、各種機械は油でテカってますので、軍手をしましょう♪はいっ♪
席に着きましたね。では、各種機械を解説しましょう。まず、真正面にあるハンドル。そう、真ん中が歯車みたくなっていて、左右に長く棒が出ている、つかみがついたこのハンドルが逆転機。車で言うとこのシフトバーですね。で、右手にあるのがブレーキ。真鍮のレバーが2つありますが、下しか今回は触らないで大丈夫です。上のは機関車にしか効かないブレーキで、単車ならともかく、他には貨物牽く際のテクニックとかにしか使いませんね。旅客なんで使いません。そしてその上、ボイラーの上から出ているレバー。こちらが加減弁。車で言うとこのアクセルですね。左の膝の辺りにあるのが砂のレバーで、空転のときに使います。で、奥の2つがドレーンとバイパスです。ドレーンとバイパスは必要な時に教えます。足元にあるペダルが汽笛です。
さて、走り出しましょう。その前に。逆転機の歯車状の部分はロックをするためにあるんですね。そのロックを解いてやりましょう。そう。ハンドルの上のそのラッチです。上に引き上れば逆転機ハンドルは自由に動きます。右に一杯回して、逆転機ハンドルの上の表示板にある矢印を一番下の80に持っていきましょう。これを「前進フルギア」と言います。車とは逆でトップギアから徐々にニュートラル、「ミッドギア」に持って行くのです。理由?蒸気機関車はエンジンそのものであるからだよ。こまけえことは気にするな。そういうものなんだと覚えておけばよいのです♪
さあ、信号が青になりました。出発です。汽笛を鳴らしましょう!ああ、いい音だぜ。いきり立つ俺の(自重)!さて、加減弁ハンドルを4分の1から3分の1まで引きましょう♪ほら、機関車が動き始めました。ドレーンを開けましょう。これでシリンダー内の水滴を蒸気の力で排出するのです!ほら、SLが蒸気を吐いて進発するアレですよ。蒸機はいいぞ!さて、ドレーンを閉塞に戻して。それでは本格的にいきましょ♪
さて、加減弁を7割8割くらいまで引きましょう。そうです。さて、ここからは計算のお時間。なんです?その嫌そうな顔は。大丈夫です小1でもできます。まず、左奥のメーター。あれが速度計ですので、その針が指す数字足すことの逆転機の表示板の針が指す数字が70になるようにしつつ、右上の方にあるシリンダ圧力計が10㎏/㎠を超えないようにしましょう。え?加速が鈍い?そりゃC11だけで69t、客車は一台30tの5両だから計150t。乗客二人で100㎏換算で一台当たり20人ほどだから1tづつ増加で224t。そんなものが自動車やバイクよろしくぎゅーんと加速することはないです。電車じゃないんだから。電車は1編成内にいくつもモーターがあるから違うけども。忌々しい電車どもめ…え?速度が上がってきて激しく左右に揺れているって?そんなもんです。窓がびりびり言って割れそう?大丈夫だ。割れても死ぬわけじゃないんですよ♪
思ったよりも運転は楽?そうですか。あ、勾配標識、現示!てなわけで、速度足すギアが80になるようにしましょう。上り坂です。こうしないと速度が落ちてしまいます。50キロは十分遅い?ならこれ以上速度を落としてはいけません♪遅延になってしまいます。…ふふ、ふふふふふ、運んでやってんだから文句なんか言わんでよろしいのだ。黙って国鉄に従え。ふふふふふ…いえ、何でもありませんよ?坂道はギヤが大きく開くので、割と大量に蒸気を食うのですよ。機関助士の人は大変ですね。後でお礼でも言っておきましょう。ん?排気量?蒸気機関にそんな概念はないですよ?
あ、新たな勾配標識。水平になったのでギアを70まで戻しましょう。急行ではないですよ?さてさて、機関車ってのはかわいいもんです。自動車やバイクよりは楽でしょう?前見えなくてもいいし、追い越しも車線変更も、カーブも気にしなくていいんですから。クラッチも無い。ギアチェンジとかも簡単。ねえ?
さて、そろそろ駅ですね。惰行運転をしましょう。加減弁を閉じて、逆転機をミッドに回しながらバイパスを開く。この時に助士さんに、「閉じる」って合図するんですよ?通風器を使わねばならないですから。これで惰行運転です。224tの慣性だけで走っています。さて、ブレーキハンドルに手を置いて。逆転機にはストッパーをかけてしまいましょう。鉄のレールに鉄の車輪。抵抗が小さく、しかも自動車に比べてはるかに重い。だから止めるのも大変です。現在時速45㎞。3㎞/h/sで制動として15秒。その間の平均速度22.5㎞/h。よって93.75mは走りますし。実際のところ空走が大きいので、120mで掛けていきましょう。私が指揮します。このブレーキは4ポジション。弛メ、重ナリ、掛リ、非常。掛リで強まり、重ナリで維持、弛メで解ける。これを駆使してください。非常は使わないでください。私キレます。男でも女でも容赦なく拳骨ですよ?さて、止めていきましょう。今です。
いやー、結局オーバーランですね。まあ、10mは誤差ですよ。さて、交代です。降りましょう。楽しかったですか?難しかった?まあ、そんなもんです。実際は空転、圧の急激低下など、もっと大変ですよ?あくまでここはバーチャル昭和三〇年代。本物とはわずかに違うんです。では。ここまでです。ごきげんよう!
私は自動車よりも蒸気機関車のが楽だと思う。