可能性
一通り食事を終えた4人はこれからのことについて話した。
「さて、明日からのことなんだけど、せっかく人数も4人になって、色々行動範囲を広げることが出来るようになったと思ってる。ただ、その前に皆の意思だけは確認しておきたいんだけ良いかな・・・」
和人は神妙な面持ちで、話しだした。
「皆は、生きたい?」
突然の問いに、一瞬の静寂が訪れる。
「私は・・・」
・・・美月が沈黙を破る。
「生きたい。こんな所に来てる人が、こんなことを言うのはおかしいって思うかもしれないけど、ここに来て思ったの、生きるって楽しいかもって・・・。だから、生きたい」
美月の言葉につられるように夏樹が話し出す。
「うちも・・・・、うちも生きたい。こんなところで死んで、はい、終わり、なんてのはやっぱり嫌だよ。生きたい」
・・・・。
「敦は?」
だんまりを続けていた敦に、和人が問いかける。
「正直僕は・・・。僕が分からない。ここに来た時は、このまま死のうかと思ったけど、いざ、空腹で死にかけたときには、やっぱり死にたくないって心の底から思った。けど、どっちが本当の自分の想いなのか、はっきりはまだ分からないんだ・・・。ただ、今言えるのは死ぬのは怖い・・・」
敦の言葉に夏樹と美月は地面を見つめた。
パンッ!
和人が手を叩いた。
「よし!全員一致で死にたくない・・・、生きたい!ってことで良いんだな。それを聞いて安心した。これから俺が言うことは無謀なことかもしれないけど、それでもこうして4人の想いに1つの共通点が見えた。それにここには最低でも10万人集まることを考えれば、これはより実現可能なものになっていくと思ってる。」
「・・・無謀なこと?」
美月が不思議そうに和人に問いかける。
「そう、無謀なこと。簡単に言うと、俺はこの島で・・・」
一同、和人の言葉を不安そうに聞いている。
「国を立ち上げる!!!」
「えーーー!!!」
3人揃った声が洞窟内に木霊する。
「まぁ落ち着いて、国を立ち上げると言ってもそこまで大掛かりなことは考えてないし、漠然と俺たちの現状を変えたい。権利も何も主張されない今の現状を・・・ヘリの中でディスプレイに出て来た野郎がこの島を姥捨て山とか言ってたけど、俺はまだじいさんにはなりたくないし、やりたいこと残して存在すら消されてるなんて嫌だ。」
「なるほどね!和人の言いたいことは分かる!うちもそう思ってる!」
「私も・・・。私も何も出来なくなるのは嫌!いろんなことを経験して、まだ人生を楽しんでみたい!」
「そうだね、僕には何が出来るのかわからないけど、今のこの状況を変えるためなら頑張れる気がする」
この時の4人は、僅かばかりの、いや、存在しないかもしれない可能性を信じた。
「まずは、現状の整理をしていこうと思う。水・食料は今のところ問題ない。雨風も凌げる場所は確保出来ている。ただ、食料に関しては、森の中にある食材の可能性を探し切れていないからその辺は少しずつ開拓していく必要があると思う。魚介類だけでの生活はきっと難しくなると思う。あの岩場のものだけを獲っていたらすぐに何も居なくなっちゃうからね。」
「うんうん、それもそうだよね。あと、私ずっと気になってたんだけど、やっぱり、人の数が少なすぎると思うの。皆が皆ヘリの爆発で自殺するとは限らないし、私達みたいに生きたいって思う人だって半分くらいは居ると思うんだけど・・・」
「うちも、それは感じてた。敦と森の中を少しだけ探索したんだけど、人に全く出会わなかったの。たしか10万人?は送られてきてるんだよね?だとしたら、もっといっぱい居るはずなのに、ここには4人しか居ないって不自然じゃない?」
「僕も飢え死にしそうになるまでは人と出会わなかったなぁ。和人君達がこの島に来て初めて会った人だったから」
「人の数が圧倒的に少ないのは俺も感じてた。だっておかしいと思わない?公開された人数に対してヘリ1台につき1人って・・・。しかもそれをいちいち爆破させるとか、政策費に何兆円かけてるのかって話になるよね。そんな余裕今の日本にあるとは思えない。普通は船とかに乗せて大量に送り込むもんだと思うんだけど。」
・・・・。4人は納得のいかない事実に困った表情を浮かべている。
「っでここからは、俺の推測というか、事実から得られる可能性を考えてみたんだけど。」
そういうと、おもむろに和人は、洞窟の地面に石で何かを書きだしていく。
1.10万人が島に送られているのはディスプレイ野郎の嘘の情報(意図は不明)。
2.輸送ルートはヘリと船があり、何らかの選定を行いある特定者だけヘリでの輸送が行われている。
3.ここの島に似たようなところが何箇所も存在している、または、俺達が考えている以上にここの島自体がものすごく大きく、ヘリポートの数も相当数存在する。
4.ヘリによる輸送のため、時間がかかっている。
「恐らく考えられる可能性ってこのくらいかなと思うんだけど、4.はそもそも姥捨て山にかける政策費としてはあり得ないと、俺は思ってるけど確証はない。それと、3.についてはまだ何とも言えないけど島が何箇所も存在する場合、国家機密として隠し通すには、数を増やしてしまうと海域の領有権というか漁業権とかあって国際間で共有している必要があり、干渉している国全てにメリットがない限りはこの仮説はほぼ0だと思ってる。ただ、この島自体の大きさは全く把握出来ていないけど、例えばカリブ海に存在するアルバ島とかだとそこまで大きい島じゃないけど、実際に10万人程度が暮らしているから、可能性はあると思ってる。」
説明を聞いていた、3人は拍子抜けした表情でうなずいている。
「和人君は、この短い期間でそこまで考えていたんだね。本当、なんていうか凄いよ。」
敦の言葉に、美月と夏樹が頷く。
「ちなみに、1番目の可能性だけど僕はないと思うけど・・・。そもそも、ここを姥捨て山と言っていた、あの人が嘘をつく理由が無いと思うんだよね。これから存在を消す人に嘘をついたところであの人は何も得をしないし」
「うちもそれは思った。あの人が嘘をついても誰得?だよねー」
「んー私もそう思うんだけど、あのディスプレイには何故か椅子が置いてあって、人の声だけで説明があったのが、不自然だなーと思ってて、なんか言ってることを信用していいのかどうかは分かないなぁ、って思った」
?!?!
「ちょっと待って、美月、ディスプレイの中には椅子だけが置いてあったの?テーブルじゃなくて?」
「え?!和人はテーブル?!うちのは何か、黒板的なのがあっただけだったけど?」
「ん?皆違う・・・って何でだ?」
「ちなみに僕は壁に大きな釘が刺さってる気味が悪い映像だったけど・・・」
「んーなるほど、どんな意図があるかは分からないけど、ヘリに乗せられた俺達には何かしらの意思が働いて選別されたという想定が一番しっくり来るな。そして、他多数の黒札所持者がどこに輸送されているのかも気になるな。最初思っていたよりも事は単純ではないってことかな・・・。とりあえず明日からは、島の状態を少しずつでも確認していこう。出来るだけ早く島1周分の地形とかの情報を収集したい。」
「じゃぁ、とりあえず、今日のところは皆休も!」
夏樹の提案に、和人たちはうなずいた。あたりはすっかり夜のとばりにつつまれ、薪の木が燃える音と、虫の鳴き声が聞こえる中、充実した今日1日を各々が思い出しながら深い眠りについた。
7月24日―――。
和人が目を覚ますと、洞穴の外に美月が一人遠くを見ながら座っている。
「おはよ、美月、もう起きてたんだね」
「おはよー、今日はなんか目が覚めちゃって」
美月は和人に微笑んだ。この時の美月の笑顔はどこかぎこちなく作り笑いに見えた。
「どうしたの?なんか怖い夢でも見た?」
「ううん、そういうわけじゃないんだけど、今の状態がいつまで続くのかなぁって考えたりしてたの」
「まぁね、俺もいつまでこの状態が続くのか分からないし、この先どうなるのかもわからないけど、せっかく皆とも出会えたから、笑って過ごせるようにどうにかしたいとは思ってる。」
「強いね、和人」
少しもの寂しげな表情で美月はつぶやいた。
「二人ともおはよー!」
夏樹と敦も起きたようだった。
「さて、みんな起きたことだし、今日はさっそく朝飯調達して、その後、島を散策してみよう」
「うん、和人、その前にうち、水浴びしてきたいんだけど」
「あ、私も一緒に行く!」
「あー、そりゃそうだよね。俺と敦はここで待ってるから行っておいで」
よからぬ妄想が頭をよぎり和人はにやけ顔になっている。
「ちょっと!!今変なこと考えてたでしょ!!」
「え?!いやいやそんなこと考えてm#$%&」
「和人さん・・・やっぱり変態だったんですね」
それを見て敦は笑っている。
「大丈夫だよ、僕がちゃんとここで見張ってるか心配ないよ」
「敦が言うなら大丈夫そうね」
夏樹も笑いながら答える。
「敦が!ってなんだよ、おれだってそんなことしねーよ!とりあえず、俺と敦で海行って朝飯調達してくるから、その間に二人は水浴び行って来いよ」
美月と夏樹は水浴びのため、近くの川へ、和人と敦は海の方角へと向かった。
「そういえば、この前夏樹ちゃんと森の中散策した時に、食べられそうな木の実見つけたんだよね、それもついでに撮っていかない?」
「敦!ナイス!さすがに毎日魚介じゃいくらなんでも飽きるだろうなーと思ってたところだったんだよ」
「あと、出来れば、刃物欲しいんだよなー、調理とかその他にもいろいろ使えるだろうしさー。黒曜石とかれば、割るだけで結構切れ味の良いものになるんだけどなー、さすがにないよな」
「うんー、黒曜石かー、さすがにそういう感じのは見なかったけどなー、貝殻とかでも代用できそうだけど、魚が切れるくらいだよねきっと。」
「まー貝殻もある程度は切れるけどなー、蔦とか切るには心もとないかな」
「蔦?紐かなんか作るの?」
「そうそう、紐が出来ると結構いろんなもの作れるからなー、ハンモックとかw」
「ハンモックですかw確かにあったら結構いいかも」
そうこうしているうちに、二人は海辺に到着する。和人が見つけた岩場へ進んでいると、
バババババッ
例のヘリが来る音がした。
「あ、和人君!あれ!」
敦がヘリの方向を指さす。
「来たな。様子を見に行ってみる?もしかしたら、俺らと同じ感じで仲間になってくれるかもしれないし」
和人の提案に敦はうなずく。
「もちろん」
二人はヘリポートが見える位置まで近寄り様子を伺っている。
ガタンッ、ガガガッ
ヘリが到着するなり、ドアが開いて人が降りてくる。
「敦!人が降りてきた!しかも、すぐ降りてきたってことは、さらさら死ぬつもりはないんだろう」
ヘリから降りた人は、走る様子もなく着実に島へと歩を進め、和人と敦のいる方へと歩いている。
「おーい!!」
和人がヘリから降りた人に手を振り呼びかける。
だが、特に反応を示さない。なおも、着実にゆっくりとこちらへ歩いてくる。
「黒髪の長い・・・女の人だよな?」
「うん、まだ遠いからはっきり見えないけど、多分そうだと思う。」
こちらの対応に全く反応を示さない女性は、波風に髪をなびかせながら、ぶれる様子もなくこちに向かっているが、二人のことが全く視界に入っていないような素振りである。
和人たちもどう対応した良いか分からず、女性がこちらへ向かってくるのただ、じっと待っていた。女性と和人達の距離が10m程度に入ったところで、再度和人が話かけてみる。
「あのー!こんにちは!」
この距離でもこちらのあいさつに全く反応を示さない。
黒髪は肩より少し長く、夏樹と同じくらいの身長である。遠目で見ていた時は気づかなかったが、スタイルが良く、きれいめな感じの、お嬢様のような出で立ちである。女性はさらに和人達の距離を縮めてくる。その距離2m。
「あ、あの、俺、和人って言います。こちらが敦です。ここで出会ったのも何かのご縁ですし良ければ少しお話しませんか?」
少しおどおどしながら、和人はとりあえず自己紹介をする。
「あんなに、大きな声をださなくても十分に聞こえています。わたくし東条美鈴と申します。見ての通り、黒札とやらを受け取り、意に反してこんなところに連れてこられました。ちなみに、あと1分32秒であのヘリコプターは爆発するようですので、もう少しここから離れたいのですが」
はきはきとした物言いでどこか棘がある。
時計は持っていない上に何かを見る素振りも見せなかった美鈴の言葉に、和人は疑問を持ったが、とりあえず同意し、砂浜の方へと向かった。
「あ、あの、ちなみに後何秒ほどで爆発しますか?」
「はい?あと12秒です」
和人は、声を出して数える。
「12、11、10・・・3、2、1」
ドーンッ!!!
「うわっ、まぢだ!ぴったり」
なんだ、これ、腹時計?いや、なんにせよ、変な人なのは間違いない。
「美鈴さんはどうして、爆破までの正確な時間が分かったのですか?」
敦はさらっと聞く。
「そんなのは、当然のことです。私は体内で正確に時間を刻んでいるので、時計が無くてもその程度のことは分かります」
「は、はぁ・・・人間時計・・・」
和人も敦も意味を理解出来ず、茫然としている。
体内で時間を刻む??とんでも変人なのは間違いないな人。見た目は綺麗なのにもったいない。
「ところで、美鈴さんこれからどうされるのですか?」
「どうするもこうするも、こんなとこ連れてこられて、私に何をしろと言うのでしょう。私に着替えも食事も何もない所で生活なんて出来るはずありません」
そこまできっぱり自分が何も出来ないことを肯定しなくとも・・・。
「あの、美鈴さんはお嬢様と言いますか、名家の方のように見えますが、何故このようなところに来たのでしょう?」
「ええ、私は世間一般に言うところのお嬢様です。ただし、あなた方に理由をお話する義務はありません」
美鈴の言葉は冷たく、相変わらず棘がある。和人はこういった女性にどう対応してよいか分からなかった。
「分かりました。では、ご自由に。ここには法も何も存在しません。もっと言えばあなたを守ってくれるものは何もないので、気をつけてください。では」
そうきっぱり和人が言うと、敦を促し、その場から離れた。
「あ、あの・・・」
和人達に美鈴が声をかけるが、和人は振り返ることもなくそのまま離れていく。
「和人君いいの?美鈴さん今呼びとめたみたいだけど・・・」
「知らん。俺はそこまでお人よしじゃないし、せっかく良い雰囲気になってきた俺達の雰囲気を壊しかねないだろうし」
「そ、それは確かにそうだけど・・・」
和人と敦は岩場まで行き、食材を獲り、ある程度集まった所で引上げようとした。帰り道砂浜の先で、ただじっと座って、膝に顔をうずめている美鈴が居た。
「和人君・・・、あれ美鈴さん、泣いてるんじゃないかな?」
「あーーーー、もうしょうがねー。」
そういうと、和人は美鈴の方へ駆け寄り、声を掛ける。
「おい、一人でそんなところ居るくらいなら、俺らのとこに来る?一応雨風くらいは凌げるし、食事も準備出来るけど。あと、他に二人女の子も居るし」
美鈴は顔を上げ、和人の方をじっと見つめる。目頭は少し濡れている。恐らく、一人でここで泣いていたのだろう。
「良いんです・・か?」
「どうせ一人で居ても何も出来ないだろうし、俺らは構わないけど」
「あ、ありがとうございます」
先ほどの態度とは打って変わり、やけに素直である。きっと、強がっては居たが、この状況で一人取り残され、不安になっていたんだろう。
「じゃ、とりあえず行くから、ついて来て」
「はい」
3人は洞穴へ向った。道中、敦の言っていた木の実も回収し、ある程度の量の食料が手に入った。その間、美鈴は一言も話さず、下を向き二人について行った。洞穴に到着すると、水浴びを終えた、美月たちが待っていた。
「あれー?和人!!誰?!その人・・・。あ、またナンパしてきたなー!美月に怒られるよー」
そういって夏樹が和人をからかうと、美月は頬を赤らめ下を向いた。
「そ、そんな、怒るとか、そんなことしないもん」
「いや、ナンパってwそんなことしてないわ。ただ、食料獲り行くとき、ヘリがまた来て、この人が降りてきて一人だったから、声かけたらついてきただけ」
「ついてきただけとか!かわいそうでしょ!そんな言い方!」
状況を知らない夏樹が和人を怒る。
「あ、あの、わたくし、東條美鈴と申します。その、和人さんには一人で居る所を助けていただいて、連れて来ていただきました。よろしくお願いいたします」
美鈴は一礼とともに、美月たちに挨拶をする。
「あ、えっと、うちは、夏樹って言います!こっちは美月ね!よろしくー」
「さ、飯にしようかー、腹減った」
「そうだね、僕も!」
和人と敦が獲ってきた食材を火にかけ、食事をしている。
「あれ?美鈴ちゃんは食べないの?」
夏樹が声をかけ、食べるように促す。
「その、良いんですか?」
和人は相変わらず仏頂面で、何も話さない。無言の圧力を受けてか、遠慮がちに美鈴が聞く。
「いいよ」
ぼそっと和人がつぶやく。
「あ、あの、やっぱり私、いいです・・・」
敦が和人の脇腹を肘でつく。
「良いんだよ!遠慮しないで食べて!僕達、食材の確保は結構出来てるからさ!」
「でも・・・」
「いいよ、食べろよ、」
また、ぶっきらぼうに和人が言う、美鈴が泣きだした。
「和人さん!!!いい加減にしてください!」
見かねた美月が、和人を叱る。
「あ、あの、美月さん、良いんです。私がこういう性格だから、悪いんです。何で私なんかが、ここに連れてこられたのか分からなくて、むしゃくしゃしてて、到着したときは、どうにでもなると思っていのですが、親が何でも私の言うことは聞いてくれて、身の回りのことは執事の方が全てやってくれてたので、自分が置かれている状況も把握出来ていなくて・・・。島に到着した時は誰かがどうにかしてくれるかなと思っていたのですが、和人さんに守ってくれる人は誰も居ないって言われて、やっと自分が置かれている状況に気づいたんです。」
・・・和人は無言で今朝獲れた魚を食べている。
「その、だから、冷たい態度を取ったりして、本当にごめんなさい」
少し潤んだ瞳で、和人を見ながら美鈴は謝った。和人は、今までツンツンしていた彼女にそんな表情を見せられて、もう、どうして良いか分からなくなり、黙りこんでいた。
「わかったわかった!俺の方こそごめん!とりあえず、食べて!それで、これから俺達は島の状況確認のために、色々回ってみるけど、美鈴さんはどうするの?」
この雰囲気をどうにかしようと、和人は沈黙を破り別な話題へと変える。
「あの、ありがとうございます。私は何も出来ませんけど・・・。そのお邪魔でなければご一緒してもよろしいでしょうか?」
「OK!わかった。じゃあとりあえず、これ食べれるなら食べて。途中で腹へって動けなくなるかもしれないから、どこかのイケメンみたいに」
「もお!和人君!今それ言わなくてもいいでしょ!」
この一言で、場の雰囲気が変わり、和やかな笑いに包まれた。
食事を終えた5人は、行動に出ることにした。
「とりあえずだけど、これからどこに行ったかチェックしながら探索範囲を広げたいんだ。だから、何かしら印をつけながら進んで行こうと思う。それで、この辺は木も多いから、初めは、石で木に大きく×印を書いて進もうと思う。あとは、この洞穴のここに探索してきた場所を簡易的に地図のような形で書き加えて行こうと思う」
和人がいつの間にか、洞穴の壁に地図らしきものを書いていた。
「和人、いつの間にこんなものw」
夏樹が地図らしきものを見て関心している。
「ほんと、和人さんはちゃっかりこうゆうことしちゃいますよね」
美月が微笑みながら、和人をちゃかす。
「そうだよね、そういう所僕は好きだなー。」
・・・。美月、夏樹、和人が固まる。
「いや、そういう意味ではないからね!男として!」
・・・。
「男として・・・もそういうことではなくて!!それよりも!!」
5人は笑っているが、敦はそれを遮るように話題を変えた。
「ただ、×印だけだと、見にくくて、分かり辛くなるかもしれないから、貝殻を蔦に通したものを木の周りに巻いておくとかっていうのはどうかな?」
確かにその通りである。これだけ生い茂った草木があるこの場所では、木に付けた×印だけでは判断するのが難しい。
「んーそのためには、蔦を簡単に切れるものが必要になってくるな・・・そうだな今日の所は、それも含めて切れそうな石とかもないか含めて探しながら行こう」
「了解しました隊長!さっそく行きましょう!」
美月の掛け声で、5人は洞穴から、森の中へ探索に出かけた。