そして時間が動き出す
~第4章(そして時間が動き出す)~
ダダダッダンッ!
ヘリが島へ着陸し視界を封止していた黒いシャッターが上がると、島から一本延びる海の上にあるヘリポートに着陸したのを確認出来る。
ガタッ、ガラガラガラ
和人はヘリのドアを開け外に出て見る。ヘリポート上には血痕らしきものが無数にあるが、骨などは全く見当たらない。もう、何かどうでもいいや・・・。ここで死のう
・・・「おにい!待ってるからね!」
ふと妹の真紀の声が頭をよぎる。こんな俺でも待っててくれる妹が居ると思うと涙が止まらなくなった。よし!とりあえずまだ時間はある!どうにか出来ないか、最後の悪あがきしてみるか。どうせ、今まで何もしてなかったんだ、例え帰れなくても最後くらい何かしねーとな・・・。
ヘリポートから一直線の道を島に向って和人は走った。そこには砂浜が一面に広がっている。時刻は5時くらいか?日が出始めて、海のさざなみに光が反射し、砂浜を風が通るたびに心地よい音がなる。
こんな状況じゃなきゃ最高にロマンチックだろうなこれ。しかもお一人様ですか。なんつーか人生無駄なことだらけでやってらんねーな。これからどうするか・・・。朝日を見ながら一人そんなことを考えていた。
ドンッ!!!!バンッ!!
いきなり大きな爆発音がなり、思わず和人はよろけて砂浜に足を取られて転んだ。
そうか、ちょうど10分経ってヘリが爆発したのか。というか、本当に爆破するんだな・・・。こりゃ今まで聞いた説明は全部本当らしいな。政府とか日本とか国とか、こんなエグイことも簡単にやっちまうのかよ。もうどうにもなんないかな。
「クスクスッ」
ふと気付くと砂浜の近くの茂みから誰かが笑ってこちらを見ている。
「誰だ!!」
和人はびくびくしながら、茂みの方を見つめる。
「あ、あの、すいません、まさかマンガみたいに砂浜で転んでいる人が居たので・・・。」
透き通ったか細い声の女性らしき人が茂みの方から砂浜へ歩いてくる。和人は完全な挙動不審人物と化す。なぜなら、美人・可愛い女性耐性0の和人は、女性を目の前にしただけで、言葉を発することが出来なくなり、目が泳ぎただの変なやつとなるからだ。
「えっと、私、相模美月と言います。さっきは笑ってしまってごめんなさい。」
彼女は身長が和人よりも少し小さく華奢な体型だった。目がくりっとつぶらな瞳で、鼻も口も強調しない整った顔で、髪は完全な黒とも言えないのダークブラウンで長くさらさらである。さらに出るとこが出てるって・・・・
これは、あれか、美少女タイプかつ、童貞種が望む最も理想形に近い3Dか。なんで、こんな子がこんなところに居るんだ?俺に仕掛けられた政府の罠か?色々とこの状況とは相反する出会いに戸惑いを隠せない。
「あ、え、俺、和人って言います。その、あれですね、ここの海ってウミウシがいっぱい居そうですね。」
「え、、、と、ウミウシ?」
「あ、腹足綱後鰓類の無楯類に属する軟体動物で、よくアメフラシと同じだと思う人が居るんですけど、あ れは別物でー、アメフラシは海藻とか食べるベジタリアンですけど、ウミウシはコケムシとかを食べるんで肉食なんですよ、それと・・・#$%#%。」
「あ!ごめんなさい、俺・・・。」
・・・・。完全にやってしまった。ウミウシの説明を求められたのではない、何故この状況でウミウシが出てくるのか、それが問題なんだ。他人とのコミュニケーションを取っていなかった弊害がこんな形で出るとは思わなかった。完全に失態だ・・・。まぁ、でもこの状況、どんな失敗しようが無いような命だからな、気にすることないか。
「ぷっ クスクス」
美月は頬を少し赤らめながら笑いを堪えているが、僅かに笑いがもれている。
「和人さん、変な人?ですね。面白いです。まさかこんなところでウミウシ」
「あ、いや、その、あまりに久しぶりに人と話したので、何を話して良いのか分からなくなくて」
「それで、ウミウシですか?? ふふふっ」
法も何も存在しないこんな場所でも彼女の嘘のない笑顔に見とれていた和人は、こんな状況でも綺麗な女性に見とれている自分は男なんだと再認識した。
「えと、こんなことを聞くのはどうかと思うんですが・・・」
「何でしょうか?」
「美月さん?も黒札を受け取ってここに連れてこられたんですか?」
「私は黒札を受け取る前から体調を崩してしまってて・・・。病院にも行かなかったので、そのまま家でずっと休養していたんです。それが、政府の方の判定では強制施行対象と見なされたみたいで す・・・。」
「え?!だってそういう場合は特別監査状態とかなんとかになるとかじゃないんですか?」
和人はここに来る前、一度黒札の内容を確認していたが、健康状態に関する項目も書いてあったはずだった。
「それは、例えば三大疾病のような大きな病気でしかも通院履歴がないと適用されないようです。精神的な病気の場合も通院履歴または、医師による診断がくだされないと適用外となるようで・・・ 私の場合はタイミング悪くその期間に少し気持ちがめいちゃっててそれで、外にも出られなかったんです。」
「そ、そんな、馬鹿な話あるかよ・・・。政府がやってることはめちゃくちゃじゃないか・・・。」
「私も初めは何かの冗談かと思ったんです、ちゃんと説明すればきっと分かってくれるって・・・。でも執行日になると黒いスーツの男の人が二人来て、何も聞いてもらえずここに連れてこられました。和人さんがここに来る1日前に着いたんですが、どうして良いか分からなくて、ずっとあの茂みに隠れて座っていたんです。」
美月は下を向き、少し涙声になっていた。
きっと訳も分からずこんな所に連れて来られて一人で不安だったんだろう。和人はこれまでに感じたことのない、怒りにも似た感情に掻き立てられた。
「美月さん!大丈夫ですよ!どうにかこの島から出て普通の生活を送れるようになろう!」
何も根拠もない、ただ、和人は本気でそう思った。これまで何に対しても無頓着でオンゲー以外に熱を出したことのない和人が、2D美少女のために熱を出すことがあっても3Dに全く興味のなかった和人が、今目の前にいる3D(限りなく2Dに近いのは間違いないが・・・)の女性のために自ら行動しようと心を固く決めた。
「ふふふ、そうですね。こんなところなんか早く出て普通の生活出来たら良いですね。」
「よし!そうと決まればまずは、どうにか食事の確保を出来るようにしないと!」
・・・ん?ちょっと待てよ、冷静になった和人は現状に違和感を覚えた。確か、10万人ここに送られてくる・または送られているって話だったけど、ここに居るのが彼女だけ?ってあまりにも不自然だよな・・・
「一応確認しておきたいんですけど、美月さんがここに来たのは1日前くらいですよね?」
「??はい。そうですよ?」
きょとんとした表情で美月が和人を見ている。
「俺以外に、この島に来た人を見ましたか?」
「えっと、確か私がここにきてから和人さん以外に5回ヘリが来ましたので、多ければ5人ほどかと思います。最初に来た方はそのままヘリから降りて来なかったので、恐らく・・・」
美月は下を向く。
「あ!ごめんね変なこと聞いて。嫌なこと思い出させちゃったよね。」
「いえ、ずっと茂みに隠れていたので、何かを見たわけではないので大丈夫です。他の4人の方は、みなさん到着してから砂浜を抜けて森の中に入って行かれましたよ。」
「となると、最低でも4人はこの島に居るんだね。どんな人か分からないうちは気を付けておかないと・・・。」
それにしても、来ている人が少なすぎないか?他にも島があるか、ヘリポートが他にもたくさんあるのか?少し調べないとよくわからないな・・・。
「どうしてですか?」
「いや、ここは、ほら、法とかないから、何しても大丈夫って言ってたから、美月さんみたいな女性とかは特に気をつけないと・・・。」
「そうですよね・・。わかりました。和人さんは・・・変なウミウシの人ですけど、悪い人ではないですよね?」
「ウミウシの人・・・wまぁ、俺はそんなここでどうこう出来るようなあれもないし、まして女性に指一本触れられないから!いや、触れたことないから大丈夫!」
「え?!もしかして、ドウ、」
その先は絶対に言わせないとばかりに、かぶり気味に和人が少し声を大きく遮った。
「さーて!!!そんなことより、森の中で食べれるものないか探しに行ってみよう!もしかしたら俺らみたいな人も居るかもしれないし!」
「ふふふ、分かりました。行きましょう」
そんな他愛もない会話をしている時だった、上空からこちらに向って大きな音とともに1台のヘリが向ってくる。
ババババババッ
ヘリポートに着陸したが、扉が開く様子がない。和人は着陸したヘリを凝視していた。美月は俯いた表情で、少し和人に隠れるようにヘリを見つめている。
「誰も降りてこないですね・・・」
美月が不安そうに和人に問いかける。
「う、うん・・・やっぱり諦めたくなるよね・・・あの到着した瞬間の喪失感は俺も危なかったってか、諦めそうになってたもん。」
・・・。
・・・・。
・・・・・。
バタンッ!ガラガラッ
「お!?扉開いた!!」
きっと諦めてそのまま・・・というパターンを想像していた和人はなんだか少し嬉しくなった。
「あ!本当ですね!諦めなかったんだ・・・、本当に良かった!」
美月もホッとした顔で小さなガッツポーズをした。
「あれ、でも時間やばくない?多分だけど・・・着陸して5分以上は経過してるよね?!」
美月は小さくうなずいた。
「あ!こちらに走ってきてますよ!」
「おーい!!こっちだ!!急げ―!!」
思わず和人は声を張り上げた。ヘリから降りた人は全力でこちらに向ってくると思いきや、なんと真逆の海に一直線
ザバーン!!
!?!?!?和人と美月は目を見合わせた次の瞬間、
ドーン!!バンッ!!
ヘリは木端微塵に爆発した。思わず、和人は美月に覆いかぶさるように庇う。
「あ・・・。ご、ごめんなさい!」
とっさの行動に思わず和人は美月から離れる。美月は少し顔を赤らめて
「だ、大丈夫です。あ、あの、ありがとうございます、庇ってくれて」
「い、いや、その、つい、いきなり抱きついたりしたみたいになっちゃって、本当ごめん」
自分が取った行動に和人自身もびっくりしている。
「いえ!気にしないでください!本当に大丈夫ですよ。ふふふ、和人さん顔真っ赤ですね」
「いや、え?!そ、そんなことはないと思いま#$%」
あまりのラブコメ的展開にどう対応していいか分からなく和人。まさか自分がこんな状況になるとは思っても居なかった。こんなことならギャルゲーを極めてこういった事態に備えておくべきだった・・・。と猛烈に後悔している。が、現実世界の3Dにはそんなもの通用する訳がない。
「あ!それより、海に落ちた人無事か?!」
「おーい!!!大丈夫かー!!!」
・・・。
海に声を掛けても返ってくるのは波の音だけである。
「もしかして、さっきの爆風で落ちた物で怪我してるかもしれませんね・・・近くまで行きましょう!和人さん!」
「うん!そうしよう!」
和人達はヘリポートの近くまで一直線の道を走って行った。まだ爆破されたヘリの破片等が燃えてヘリポート上に残っている。
「美月さんは、ここに居てあの近くまだ燃えてて危ないから、俺行って見てくる」
「あ、はい分かりました!何かあったらすぐ呼んでください!」
和人はまだ燃え上っているヘリポートに近づき海の方を見る。
ブク。ブクッ。ブクブクブク。
気泡が海面上に出てくると同時に人が海面から顔を出した。
「ぷはーっ!死ぬかと思った!まぢで!」
「あ!生きてる!大丈夫ですか!!手掴まってください!」
和人がすかさずヘリポートがある岸壁から海に居る人に手を差し出す。
「じゃあ、引上げますよ!せーの!」
ザバーン!!
見事に和人は頭から海へダイブ。和人は、海から人を引き上げるのがこんなに大変だと思わなかった。何しろずっと家に引きこもっていたせいで、筋力0の状態に等しい。いくら男とはいえ、服を来た状態の人を海から引き揚げるのは思っていたより力が必要で、油断したため逆に海に引きずり込まれたのであった。
「おにーさん!大丈夫?!」
「ぷふーっ・・・死ぬかと思った。」
「あはははっ!おにーさんたっぱある割に力ないのね」
「いやー、、、めんぼくない。」
この様子を見ていた美月が心配して和人達のところに駆け寄る。
「だ、大丈夫ですか??」
「まぁ、俺は大丈夫なんだけど、どうしよっか」
「和人さん泳げますか?もし泳げるならここから砂浜まで泳いで行くのはどうでしょうか?少し距離がありますが、私には二人を引き揚げるような力はありませんし・・・」
「うん!そうしよう、えっと、君も泳げる?」
「うち?なんも問題ないよ!泳いでいこ!」
和人達はヘリポートがある位置から砂浜まで泳いだ。
バサッ
砂浜に着いた和人達はしんどそうにその場に横たわる。
「ふーっ!しんど!服着て泳ぐのかなり疲れるなー」
「確かにー、うちは小さい頃から水泳習ってたから、どうてことはないけど、久しぶりに泳いだから疲れたー」
「あ、そういえば自己紹介もしてなかったね、うちは菅谷夏樹。例の黒札来ちゃってここに飛ばされました!」
夏樹はショートカットで、活発な感じのイメージの子だ。和人とは真逆のイメージで何故黒札の対象になるようなことになったのか不思議なほどだ。
「あ、俺は檜山和人で、こっちの子が相模美月さん。二人とも今日会ったばかりで、少し話してたら、菅谷さんがヘリから降りるのが見えて、とりあえず助けに行ってみました」
「なるほど、この美少女をナンパしてたら、たまたま私が登場してお邪魔してしまったと・・・」
「ち、違いますよ!!そんなんじゃないですよ!たまたま、同じ境遇の人が居たので、話していただけで・・・。」
必死に否定している和人を見て、美月も夏樹も笑っている。久しく人と話していなかった和人は、学校のクラスメートと話している時の感覚ってこんな感じだったかなぁと少し懐かしく思っていた。
「それで夏樹さんはどうされますか?俺と美月さんはとりあえず、これから森に入って食料調達をしてみようかと思っていますけど」
「うちはねー、そもそもここに来たばっかだし、何も考えてなかった。すぐに飢え死にするか、虐殺されるのか、みたいなことしか考えてなかったから。ここって法も何もない所でしょ?だから、女一人の私なんか慰みもにされて、それでそのまま死ぬのかなーって考えながらここに来たの・・・」
あんなにはつらつとした感じの夏樹であったが、話しているうちに次第に声が震えて今にも泣きそうである。
「なっちゃん!大丈夫だよ!私も初めは怖くて一人でずっと泣いてたけど、和人さんと出会って、なっちゃんと出会って、何か今は一人じゃないから何でも出来そうな気がしてるの。だから、その、一緒に生きよ!」
「美月・・・、ありがとう・・・。よし!こんなのうちらしくない!まずは、とりあえず水分補給出来るようになれば、すぐには死なないよね?」
「そうだね、水の確保か・・・雲がほとんどないから、雨が降る感じはなさそうだから、海と繋がっている川を探そう!それを目印に上流の方まで行けば飲める水があると思う」
「和人さん・・・。ただのウミウシ変態さんではなかったんですね」
美月がおどけて、和人をからかう。
「え??ウミウシ?!」
夏樹が不思議そうに和人を見ている。
「まぁまぁ、そのそれは追々w」
「めっちゃ気になる―、けど今は早く水の確保をして食料を探さないとだね」
「とりあえず砂浜沿いにこの島を回って川と繋がってそうなところがないか探してみよう!」
和人達は水を求めて砂浜沿いを歩いて回った。日はだんだんと沈み始めた頃だった。
「きゃぁ!!」
美月が悲鳴を上げる。
「どうしたの!!」
慌てて和人は美月に駆け寄った。そこで、美月は何かを指指している・・・。そこにあったのは人だった。いや、正確には人の形を辛うじて留めている亡骸である。うつぶせになり砂浜の上にあったそれは、和人達を現実の世界へと一気に引き戻した。
「うっ・・・、とりあえず、進もう。俺らはこうならないようになんとかしよう!」
「和人!!!あっちにそれらしいものがあったよ!!」
少し遠くの方から夏樹が駆け寄ってくる。
「今そっち行くからそこで待ってて!!」
和人は夏樹に見せない方が良いと思ったのか、思わず夏樹がこちらに向うことを拒んだ。
「何かあったの?さっき美月の悲鳴が聞こえたような気がしたけど」
「ん・・・あそこに人の亡骸があったんだけど、見て気持ちの良いものではないから夏樹さんは見せない方が良いかなと思って・・・」
「そうゆうことね。気使ってくれてありがと!あ、ほらそこ、水が少しだけどちょろちょろっと海に流れてない??」
「おー!!!本当だ!これを辿って上流に行けば水が飲めるかもしれない!あー、でも今日はもう日が沈むから今から森に入るのは危険かな。俺が二人を守ってあげられるほど強ければ良かったんだけど」
「そうだねー、うちを海から引き揚げるどころか、引きずり込まれちゃうもんね」
美月はそんな二人の会話を聞いて笑っていた。
「とりあえず、今日はこの辺の砂浜で夜が明けるのを待とう。火を起こせるものが無いか、ちょっと近くで探してくるから、二人はここから離れないで待ってて!」
「和人さんって火起こし出来るの??ウミウシなのにすごい!!」
美月に言われると嫌味に聞こえないところが、何とも不思議である。前の和人であれば、ふざけんなクソ、ブス、と平気で言っていたであろう。
「あ、まぁ昔だけどおやじとサバイバル的なこと少しだけやったことあって、火おこしくらいならなんとかなると思う、あと、おれは和人wウミウシじゃないわw」
「へー!やるやん!ぢゃぁうちらはここで待ってるから任せた!」
和人は一人森の中へ入って行った。
・・・日は暮れ辺り一面が暗くなる。月明かりが海面に反射している光だけが辺りを照らす。
「和人さん、遅いですね・・・。」
美月は心配そうに夏樹に語りかける。
「そうだね、周りはもう暗いし何かあったのかな?」
・・・。美月たちは、辺りが暗くなることで不安が募っていった。現代技術が何もないこの島では普段は何気なく見ていた時間というものが存在しない。いや、正確には確認出来ない。こうした閉鎖的空間では時間感覚は狂い、一層不安を煽りたてる。
「おーい!!」
「あ!和人さん来た!」
美月も夏樹もやっと現れた和人を見てホッと胸を撫で下ろした。和人の手には松明らしきものもある。
「いやー。遅くなってごめん!火おこすための道具は見つけて、火も起こしてきた」
手に持っている松明を差しだす和人。
「あー本当戻ってこないから何かあったのかと思った!」
夏樹は和人の肩を叩きながら、少しはしゃいでいる。
「てっきりウミウシさんに食べられたのかと思ってました」
美月は少し下を向いて、何故か照れくさそうに和人をいじった。
「え?!共食い?じゃなくて、行ってたのは、森ん中だから。まぁついでに雨とか凌げるちょっとした洞穴みたいなところないか探してたら遅くなっちゃって。ごめんね」
「とりあえず、夜が明けたら水を確保しに行こう!もうそろそろ体力的にもきついからね。今日はここで夜を過ごそうか」
「そうだね、明日に備えて寝ておこうか」
「今日はそんなに寒くなさそうだから、火は消して、火種だけ残すようにするけど大丈夫?あまり目立つような状態で寝ると危険かもしれないから」
「全然大丈夫です!」
「うん」
そうして3人は夜明けを待った―――。
・・・・バンっ!!!ド、ド、ドン!!
明け方近くになること、例の爆発音に目が覚める和人。隣には、美月と夏樹が爆睡している。ヘリポートからは離れた場所であるため、確かに音の大きさは和らいでいるが、この二人の神経のず太さには驚いた。確かにこの1日で色々あり過ぎて疲れているんだろうとは思うが・・・。まぁとりあえず俺も、もう少し寝るか・・・。