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WITHOUT  作者: やきいも
3/3

そうして西秋俊和は間違う

どうも、without3話です。


どうにも携帯が古くてネットにつなぐのも、文字を打つのもラグがあったりしてイラっとしてる今日この頃です。


今回は長くなってしまった…

11月1日 A.M.8:00 教室


2度目のwithoutが終わった。

朝インターネットを見て確認したが、一応学校でもヨーロッパのことを聞いてみた。


「なぁ深瀬、お前ヨーロッパって知ってるか?」


「…」


一瞬の空白の後、

「俊和、あんた馬鹿にしてんの?なに?私のことヨーロッパも知らないような馬鹿だと思ったわけ?私を俊和や木暮みたいなバカと一緒にしないでくれる?」


…ものっそいキレられた。


それもそのはず深瀬は意外にも昔から頭が良く、中学生になってからクラス内で5位以降になったことはなく、学年でも常に10位台、または1桁に入り込んだりするくらいには頭がいい。


「いや、聞いてみただけだからその握り込んで強烈なオーラを放ってる拳を収めてくださいお願いします。」

俺の必死の懇願により、深瀬は拳を収めてくれた。


「はぁ、まったくあんたはたまにおかしな事言うのよね…。

前なんか、深瀬はいつになったら結婚したい?、とか…。」

だんだんと声が小さくなりながらそんなことを言う。

あー、そういえばそんなこともあったなーとか考えながらその時のことを思い出してみる。


ー数年前ー


中学の教室で、不意に本当になんとなーく深瀬に聞いてみた。


『なあ、深瀬はいつになったら結婚したい?』


急な質問に戸惑う深瀬。


『え…な、なによ急に?私は、その、好きな人と幸せになれるならいつでも…。』


『へー。そっか』


そう言って立ち去ろうとする俺。


『え!?ちょっと待って、それだけ?』


と。それを引き止める深瀬。


『ん?それだけだけど?』


実際聞いてみただけなので特に理由もないしそこまで興味も

ない。


『そ、そう…。じゃ、じゃあ俊和は、どんな人と結婚したい?』


少し落ち込んでいるように見える深瀬がそんなことを聞く。

まぁ俺も聞いたんだし答えてやるか。


『俺は深瀬とは真逆の清楚でおしとやかな品のある女の子がいいかなー。』


ゴッ…。鈍い音、みぞおちに重い衝撃。


『うっ、はっ…。』


『もー、俊和ったら。それじゃあ私がまるで品のないがさつな女の子みたいじゃない?』


深瀬の透明な笑顔はどこまでも透き通っていた。

くっ、こんなことをしておきながらよくそんなことが言えるぜ…。


『お前のこういう態度の事言ってんだよ怪力女が…。そんなんだといつまでたっても誰氏の一つも…ぉふっ!!』


再度の衝撃。今までとは比べ物にならないレベルの威力。


ーとしかずは目の前が真っ暗になったー



「あの時からか、お前の拳が凶器に変わったのは…。」

俺がしみじみとそんなことを言うと、

「失礼ね、こんなか弱い女の子のことを凶器だなんて。」

いや、否定するのかよ…。あのレベルのパンチなら世界を狙えるわ、そう言おうとしたが、これをいうとまた保健室送りになるだろうことを予測し受け流すことにした。


「そうだよね、深瀬は女の子(仮)だもんね。」


そういうと深瀬は笑顔を浮かべた。


「その含みのある女の子の言い方は何なのかしらね?」


そう、あの時と同じ透明な笑顔…ってちょっと待って!それは

あかん!


「何にもないよ!深瀬はいつだって清楚で品のあるおしとやかなみんなの模範になるような女の子だよね!!」

「それでいいのよ、それで。」

あははははーと2人で乾いた笑顔で笑っていると、


「なあ、お前らもう授業始まってんだけど…。」

木暮にそう言われ、教卓の方を見ると、


「私の存在なんて、青春真っ盛りな高校生からしたら吹けば飛ぶゴミのような存在よね…。いつも早めに教室に来てもチャイムが鳴るまでは気づかれない。さらには授業が始まってるのに席にもつかないし…。」


ブツブツとやばいことをつぶやきながらゴリゴリチョークをすりおろしているのは現代国語の教師である細井梅、30歳独身である。髪は長くボサボサで、目元には常にクマがあり少し猫背なのが特徴だ。

*すりおろしたチョークは後で化学の先生が回収して新しいチョークにしています


てか授業始まってたのか…。これは誤謝っといたほうがいいな

「すみません、先生。全く気づきませんでした。」


グサッ。


…なにか聞こえた気がする。


隣の深瀬はというと

「ごめんなさい!すっかり忘れてました!!梅ちゃん影薄いから…。」


グサッ。


追撃を食らわしていた。


ちなみに細井先生は見た目の頼りなさからか生徒から梅ちゃんと呼ばれることがよくある。


「そんなストレートに…。」

細井先生のヒットポイントが0になったようだ。


「きょ、今日は自習にします…。先生は心の傷を癒してくるので…。」

先生はそう言いながらよろよろと教室を出ていった。


…1時間目から悪いことをしてしまったな。ごめんなさい、先生。

しかしヨーロッパの確認はできた。これでほんとに解決したんだなと、1人安堵のため息を付いて俺は自習に取り組んだ。


同日 P.M.6:00 自宅


俺は学校が終わり、細井先生にちょこっと謝罪してから家に帰った。特にすることもなかったので木暮から読め読めと押し付けられためぐパラの単行本を流し読みしながらあることを考えていた。


ーwithoutには本当に穴はないのかー


今まで起きた2回のwithoutについてわかっていることを頭の中て並べてみる。


・この現象は俺の知っている何かがなくなった時に起こる。(その範疇ならこの現象に制限はない)

・この現象は起きていることを自覚している人にしか気づくことは出来ない、つまり今は俺ということになる。(そしてそういう人のことをあの男は特殊能力者とか言っていた)

・能力者(俺)がほかの人間になくなったものを認識させることが出来なければそれは永遠にこの世界からなくなる。

・この現象は同じ日を3日分繰り返すことが出来る。

・この現象の第三者が受け継ぐwithout中の記憶はwithoutが始まった最初の日がつがれる。

・同じ日を繰り返すと言っても俺の行動によりその日の出来事は変わりうる。


ざっとこんなもところだろうか。

今までは起きてることに必死だったり、恐怖や不安などですっかり現象のことについて考えるということをしていなかったので、落ち着いている間にいろいろ考えてみよう。そう思い、持っていためぐパラを机にポイッと置き、思考を巡らせる。


一つ目はヨーロッパの件で嫌というほど分からせられた。

二つ目も周りの反応を見る限りは確定している。(ただしあの男は例外。何故かは謎だ)

四つ目五つ目もだいたい確定している。

問題は三つ目だ。


ー認識させられなければそれは永遠になくなるー


これは朝朝食で味噌汁がなくなったということでわかった。

しかし、それは『味噌汁を知らない人』だけのことではないのか?つまり、俺が作っちゃえばいいんじゃない?ということだ。作り方を知らない人なら作れないのは当然だが、知ってる人が作ればなくなった物をまた「生み出す」ことが出来る…のではないかと考えた訳だ。


思い立ったが吉日。という訳で始まりました!


西秋俊和の、お料理コーナ〜!!


さて、始まりました。わたくしこと西明俊和がみなさんに心なま温まるような料理を紹介するこのコーナー。いろんな説明は割愛して、早速料理を作っていきましょう!

さて今日作るのは皆さんご存知かと思ったけどwithoutでなくなってしまって誰1人分からない料理、味噌汁です!

なんだそれー?となった方しかいないと思いますが、味噌汁とは、味噌をだしに溶かし、刻んだ野菜や豆腐、ワカメなどを入れて煮た汁のことです!

では、みなさんが味噌汁についてよくわかったところで作っていっちゃいましょう!


具は材料がないので、具なし味噌汁にします!では行きましょう!


1、お湯を沸かす

用意した鍋に水を入れ、沸騰させる。

数分後、お湯ができたところで

2、だしを入れる

そこら辺にあっただしを投入。

3、だしが良く溶けたところで味噌を入れる

味噌投入

1、お湯を沸かす

用意した鍋に水を入れ、沸騰させる

数分後、お湯ができたところで

2、だしを入れる

そこら辺にあっただしを投入。

3、だしが良く溶けたところで味噌をいれる

味噌投入

1、お湯を沸かす

用意した鍋に水を入れ、沸騰させる。

数分後、お湯ができたところで

2、だしを入れる

そこら辺にあっただしを投入。

3、だしが良く溶けたところで味噌を入れる

味噌投入

1、お湯を沸かす

用意した鍋に水を入れ、沸騰させる

数分後、お湯ができたところで

2、だしを入れる

そこら辺にあっただしを投入。

3、だしが良く溶けたところで味噌をいれる

味噌投入

1、お湯を…


なぜだろう、なぜだか完成までたどり着けない。何回やっても何回やってもエアー〇ンがたおぉせえぇないよぉぉ…じゃなくて味噌汁が作れないよぉぉ!!!!!


…ふぅ。なるほど、そういうことか。つまりこれが永遠になくなるということなのだろう。もし誰かがこのレシピを発見して作ろうとしても強制的に作る前に戻されてしまう、そういうことだ。


しかしちょっと行けるんじゃないかと期待してた分、ショックもなかなか大きい。台所でorzしていると、横から声が聞こえた。


「俊和、あんたそんなところで何してんの?」


母親の帰宅時間でした…。



そんなこんなで一日が過ぎ、その後も何が起こるわけでもなく平和に過ぎていった。




11月29日 A.M.6:00


いつもより早めに目が覚めた。冬がかなり近くなり、最近の朝は布団から出るのが億劫になってしまう。布団から出られないけれど寒さで目が冴える。起きるべきかこのまま布団でギリギリまでくるまるべきか…。起きてもやることといえばめぐパラを読むことぐらいだし、布団にうずくまってればそれだけで幸せ。


自ずと答えは出た。


(よし、布団に入ろう。)


そう考えた俺はもぞもぞと布団を頭からかぶる。あー、寒い時の布団はやっぱり最高だぜ…。そうしているうちに少しだけ眠気が襲って来た。その眠気に身を任せ、少しまどろんでいるうちに意識は遠くへと飛んで行った。




…二度目の起床。頭はすっきりして目も冴えている。今日もいい

1日が始まることを予感させるような絶好の気分だ。そして時計を見る。


ーA.M.9:00ー


全く、時計もとんだお調子者だな。このタイミングでおかしくなるとは、俺をからかいたいのかい?

今は君のお遊びに付き合ってられないんだ。許してくれよ?

そして俺は充電してあったスマートフォンに手を伸ばし、電源をつける。


A.M.9:00


はぁ、そろそろ認めなくてはならないか…。


そう、遅刻をした…と。


この時間で急いでもしょうがないので急がずいつもどうりに着替えてリビングに降りる。テーブルには皿にアルミホイルがかぶせてあった。朝食を食べながこのあとのことを考えようと思い、皿を開ける。すると皿の中には、


500円 on the paper


まぁいろいろ言いたいことはあるがとりあえずお金と一緒に置いてある紙を手に取り開いてみた。


☆俊和へ☆


お母さん急に仕事入っちゃった!というわけで朝早く出てくので、遅刻しないようにしてね!


P.S.お母さんも遅刻しかけたので、朝ごはん作れませんでした!朝ごはんとお昼ご飯はは適当に買って食べてね☆


母より


どうりで起こしにこないはずだ…。今日はついてないな。



A.M.9:50 教室前


さて、なんて言い訳をしようか。この前も遅刻をしたし…と思ったがあれはでwithoutでなくなったんだっけか、けど結局その後学校サボっちまったな…。そして今度は遅刻。これはもう詰みゲーじゃないか?

こうなってしまったらからには腹をくくるしかない。


取っ手にに手をかけ、ドアを開ける。


ガララッ

「すみませーん、寝坊しちゃいました☆」


ノートを取る手を止めて集まる視線

そして黒板に何か書いていた先生もこちらを向く。


「寝坊ですか。目覚ましでも壊れてたんですか?」


「いや、二度寝したら時間が経ちすぎちゃいました。」


クラスの端々でくすくすという声や、あいつも不良の仲間入りだなーとか、大して珍しくないだろ?という声も聞こえる。おい、最後のヤツ失礼だなと思いながら聞こえた方を向くと小暮がニヤニヤしながらこっちを見ていた。小暮め…。


「二度寝で起きられなかったのですか。それは災難でしたね。今後は気をつけてくださいね。」


あれ?そこそこ注意されると思ったのに怒られるどころか災難ですねなんていわれてしまった。寝坊してついてないなんて思ったがこれならまあ結果オーライだな。

すみませーんと一応謝罪しながら自分の席へつこうとした。すると小暮が茶化しに来る。


「へいへい俊和。二度寝なんてするもんじゃないぞー?お前の夢でもっといい夢を見続けたいっていうイヤラシイ考えもわからなくはないが、この季節布団に捕まったら抜け出すのは指南の技だからな。自重した方が…イテッ!」


イラついたのでカバンを小暮の頭に落としてやった。小暮は頭をイテテと言いながらもニヤニヤしながら頭をさすっている。何コイツ…もしかしてMなのか?そしたらちょっと気持ち悪いな。


何事も無かったかのように授業を始める先生。生徒達もこころなしかいつもよりも真面目に受けている気がする。いつもよりも静かな教室の中、ペンを走らせる音がよくきこえた。



一時間目が終わり、休み時間になった。教室はさっきの授業中とは打って変わって騒がしかった。


「一時間目の授業は楽ちんだったな!」

「な!俺ハーバードでも目指そうかな?」

「流石に言い過ぎだろ〜ww」

「おい!やばいって!前回のめぐパラ涙もんだぞ!」

「俺だってやれば出来る子なんだぞ!」

「はいはい頭いい頭いい(笑)」

「めぐりん可愛すぎて死ねるんだけどどうしよう!?」

「なんだよその含みのある言い方はーw」

「めぐりんさいこおぉぉぉぉぉぉぉお!!!!」ダダダダッ


他愛もない会話であそこまで盛り上がれるなんて今日はテンションが高い日なのだろうか。

予鈴が鳴り、キチガイを締め出すためにドアを閉じ、鍵を占める。ちなみに二時間目はいつも早めに教室に来ているらしい細井先生だ。教卓を見ると、あ、本当にいた。細井先生は座っていた。今日は随分元気そうで、ニコニコしながら本鈴がなるのを待っている。


本鈴が鳴り、授業が始まる。そうするとすぐにドアがなった。


「ガチャガチャッ。ちょ、開かないんだけど!誰か!誰か開けてええええ!!」


小暮が叫んでいた。もうあいつ入ってこなくてまいんじゃね?などと思っていると、先生がドアを開けた。


「小暮くん、大丈夫ですか?授業が始まっているので席について用意をしてくださいね。」


「はーい。」


チッ、小暮の野郎お咎めなしか。まぁいい。授業に集中しよう。

そうしてまた一時間目と同じように始まるかと思ったらどこからか質問が飛んだ。


「先生、今日はいつ入ってきたんですか?今日も気配を感じなかったんですけど。」


あ、やっちまったな。また先生のヒットポイントが…


「今日は予鈴の3分前くらいにはいましたよ。やっぱり私の影の薄さって世界一じゃないですか?そんな才能を持ってる私は実はすごい人間なんじゃないでしょうか… 。」


一人で喜んでいた…。

え?なんで?いつものネガティブな先生はどこ?元気だとは思っていたけどポジティブシンキングが出来るくらいに元気なのか?


「それでは教科書の…」

この授業も全員が真面目に授業を受けていた。

その後の授業も同じように、真面目に始まり真面目に終わった。


放課後、俺は小暮と一緒に帰っていた。


「小暮、お前なんか今日真面目じゃなかったか?クラスのやつもなんか授業は真面目だし休み時間ははしゃぎまくってるし」

俺の言葉に小暮は不思議そうに言った。


「別にいつもどうりじゃないか?それともお前のテンション低いだけなんじゃないのかー?」


「まぁそういうこともあるか。」


そういう会話をしているうちに二人の家の分岐点についた。じゃあなー、と挨拶を交わし、それぞれの帰路についた。


P.M.4:00


家に帰ると母さんがちょうど帰ったところだったようで、買い物袋が置いてある。そしてその中にはたくさんの肉。


「母さん、そんなにたくさんの肉どうしたの?今日ってなにかめでたい日だったっけ?」

そう聞くと、

「俊和。今日はいい日よ。素晴らしい日よ。なぜなら今日は11月29日、そう!いい肉の日よ!おかげでたくさんお肉買えちゃった!」


そういうことか。それにしてもそれだけであんなにはしゃぐもんか?そんなに肉が好きだったとは…。母さんは肉食系だったらしい。

まぁ夕食まで時間があるだろうと思い、部屋で課題をやることにした。


テーブルの上見ると、大量のトンカツがあった。これは美味しそうだ。夕食を食べている間も母さんは楽しそうに今日あった出来事を話していた。食べ終わり、後片付けをしまする時も鼻歌を歌いながら食器を片付けていた。


俺は食後に風呂に入り、歯磨きをした後、ベッドに横になった。するとすぐに眠気が襲ってきたので今日は疲れていたのかもしれないと、そのまま流れに身を任せて眠りについた。



A.M.6:20



寒い…。布団から出たくない。しかしこのまま二度寝してしまうと昨日の二の舞になってしまう。布団の中から芋虫のように抜け出し、制服に着替えてリビングに降りる。すると、テーブルの上に見覚えのあるものが置いてあった。


そう、アルミホイルの被さった皿である。


もしかしてと思いながらアルミホイルをとり、中身を確認する。まぁ案の定あれだった。


500円on the paper


多少予想はしていたもののまたかとショックを受ける。書いてある内容も全く同じだった。そう、withoutである。


(まぁなくなったものはあれだろうな…)


そう思いながら学校へと向かった。



A.M.7:30 教室


コンビニでサンドウィッチを買っていたので、いつもより遅くなってしまった。まぁ別に問題は無いので買ったサンドウィッチをのんびりと食べていた。


この日も機能と全く変わらない授業、会話(俺が遅刻してないことによりその話題は抜きだが)で放課後を迎えた。今日は一時間目に頼まれた。


「あ、あの!」

どっかの女の子が誰かに話しかけているようだ。俺はそのまま校門を出ようと歩き続ける。

「ま、待ってください!!そのま帰ろうとしないで!」


さすがにここまで言われると自分のことだとわかったので振り向くと、そこには身長160cm歩かないかくらいの女の子が立っていた。髪は茶髪がかったセミロングで軽くウェーブしている。そして顔が可愛い。なかなか可愛い。とても可愛い。

と、そんなことを考えてる場合ではなかった。


「俺に何か用かな?」

そう聞くと、顔を紅潮させながら、


「せ、先輩のことが好きです!つつつ付き合ってください!!」

こう言った。


人生で初めてされる告白に戸惑いを隠せない俺。しかしこんなに真剣に言ってくれてる子を待たせるわけにもいかない。そして俺は答えた。


「君は誰?」


「…マジですか?」


「申し訳ないながらマジです。」


「入学式の時に道に迷った私を案内してくれましたよね?」


「覚えてないかな。」


「…」

「…」


お互い無言になる。まぁ確かに自分が想いを寄せてた相手に忘れれられてるなんてのはなかなか辛いよな…。


「そ、それなら初めまして!私、1年の綾野桜っていいます!入学式で会ってちょっと意識してたらだんだんと好きになっちゃいました。なのでよければ私と付き合ってください!」

少し顔を紅潮させながら、真面目な目でしっかりとこちらを見てくる。これは真面目に考え答えないとな。


「じゃあ、はじめまして。俺は2年の西秋俊和。君の気持ちはすごく嬉しいんだけど、流石にあったばかりでっていうのはあんまり良くないと思うんだ。だから、これからは後輩先輩、そして友達としてよろしくってことでいいかな?」


なんという神対応我ながら自分の高性能さに驚かされる。まぁ意外と心の底から出た気持ちってのはそういうもんなのかもしれないな。


「じゃあ、メアド交換してください!!」


そして今日の今日はメアドを交換して解散となった。これがまた明日もあるとなると少し気まずいな…。そんなことを考えながら帰っていると、見知った背中を発見した。


「よう、深瀬。今日は何かあったのか?」

そう聞くと深瀬は、


「今日は授業でわからないところがあったから聞きに行ってたの。そうしたら少し帰るの遅くなっちゃった。」

と答えた。なるほど、頭のいい深瀬らしい理由だな。その後もいつもと違う怒りの様子の見えない深瀬と一緒に、お互いの家への分かれ道まで話して帰った。


家に着くと鍵がかかっていた。誰もないのかと鍵を開け、家の中に入り自分の部屋へと向かう。荷物を置き、着替え終わると同時に携帯に電話がかかってきた。


「もしもし。」


「わかっているとは思うが、また現象が起きている。前回は上手くいったらしいな。今回もその調子で…」


「あー、今回この現象放置することにしたんで。」

男の話が終わる前に今回の現象を解決するつもりがないことを告げた。


「…なぜだ?」

男はなにか納得がいかないようだ。

「聞くが、お前は今回の現象で何が消えているか分かっているか?」


「あぁ。今回消えているのは負の感情。怒りだとか悲しみだとか、つまりネガティブな感情が消えた。周りが怒ったり悲しんだりしないのは負の感情が芽生えることがないから。異様にテンション高いのはその分の感情の起伏がポジティブな感情の方に回っているから。こんなとこだろ。」

俺が説明すると、男はなおさら納得がいかないようだ。


「分かっているならなぜ止めようとしない?」

少し声を低くしながら言ってくる。


「いや、だってみんな毎日が幸せそうなんだもん。こんなに周り全部が楽しそうなの初めて見たし、それならこのままの方がいいんじゃないかと思ってさ。」

これが今回俺が冷静でいられている理由の一つだ。いつもネガティブな先生があんなに幸せそうだったし(喜んでる内容はどうかと思うけど 、)深瀬が殴らなくなったのが何よりも大きい。


「…。言いたいことは分かったが、私からいうことは変わらない。なくなったものを周りに認識させること、それだけだ。あまり軽率なことは考えない方がいい。試しにテレビでも見ることだな。」


プツッ、プー、プー、プー…


言いたいことだけ言ってきりやがって…。何故かはよく分からないが、あいつは何でもかんでも止めろというのか。それがいいことにつながるとしても。

自分の考えが伝わらなかったことが少しいらだちに変わる。しかしあんなのにイラついてても何も始まらない。それよりも考えていたことを試すべきだろう。


そう考え、一階に降り、靴を履き替えてコンビニへ向かった。


コンビニから帰ってきたら母さんが帰ってきていた。昨日と同じ大量の肉。聞くとまた同じことを聞かされると思い、そそくさと自分の部屋に向かった。


夕食の時間になり、トンカツの山があった。二日続けてトンカツはなかなか辛いな…。

そんなことを考えながらふとある一言が頭をよぎる。


『試しにテレビでも見てみることだな。』


これはどういうことなのだろうか。ちょっとだけ気になったので、テレビをつけてみる。するとグルメリポート番組がやっていた。商店街のようなところで食べ歩きをしているようだ。


『見てくだい!このおいしそうな肉まん!なんでも安く美味しく作るために様々な工夫が…』


レポートをしながら食べている姿を見ると、ちょっと肉まんを食べたくなった。しかし俺にはこのトンカツの山を消費するという使命がある。少し残念に思いながらトンカツの山に手をつけようとした。その時、テレビから若者がやって来たのか少し騒がしくなっていたのでそちらを見る。


『おー、たしかにこれうまそうだな。』


と言いながらヒョイっと1つ肉まんをとった。そしてそのまま金を払わずにどこかえ去っていった。

…は?なんだあれ?公衆の面前で食い逃げかよ。しかもテレビまでいるってのに。よほど馬鹿なんだろうと思いながら続きを見ていると、店の人が


『全く困った子ねー。しょうがないなー。』

そう言った。


…驚愕した。いくら何でも優しすぎだろ。などと思っていると、ほかの通行人たちも次々と肉まんを金を払わずとっていく。周りもよく見ると、ほかの店でも同じようにいろんなものが取られ、店の人は怒らない。そんな光景が繰り返されていた。


なんじゃこりゃ…と固まっていると、母さんが言った。


「あら、この商店会は大繁盛してるわね〜。」


大破産の間違いだろ…。なんでこんなことになってるんだ?と思いながら思考を巡らせる。まさか…withoutのせいでこんなことに?取られることに対して怒らない、ということは負の感情がないということ。それが1件だけなら頭のおかしい店主だと思う程度だが、それが全体で起きている。考えれば考えるほどwithout以外に考えられない。男の言いたかったことはこういうことだったのか…。くそ、そりゃあこんなことになるなら止めるしかねぇな。

そう思いながら改めてトンカツを流し込むように食べた…。


夕食を食べ終わり、必要なことをすべて終わらせた後、俺はコンビニで買ったアイテムを取り出していた。アイテムとは、

・ブラックコーヒー

・眠〇打破

・モンスターのような効き目の栄養ドリンク

このラインナップである。なぜこんなものを用意しているかというと、日付が変わるはずの12時は一体どうなっているのか、というのを確認するためだ。withoutが起こると、毎回ひどい眠気に襲われるので、それをこらえるためのアイテムなのだ。これで準備は完璧。あとはひたすら待つだけだ。俺は携帯や本、アイテムたちを机の上に置き、眠気との戦いに備えた。



P.M.11:50 キッチン


し、死ぬかと思った…。今までで最強の睡魔が襲ってきた。ここまで必死にこらえたのは初めてだ。もういつ倒れてもおかしくないような状態だが、まだ倒れるわけにはいかない。目の前にはラップのされたトンカツ。これが消える瞬間をこの目に収めるためだ。そりゃあ確認しなくても朝起きたらないんだから消えるのはわかる。しかしそれでも俺はやるのだ。なぜなら気になるから。


時間が近づいている。あと一分…三十秒…十秒…三、二、一、

とその瞬間にひどいめまいが走った。ぐらりと歪む視界。しかしそれも一瞬のことですぐに元の状態に戻った。そして、目の前にあったトンカツは消えた。見ることも許されないのか…。がっかりしながら部屋へ行き、倒れるように眠りについた。



A.M.6:30


はあ、眠い。しかし俺にはやらなければいけないことがある。だるい体を起こして昨日と同じように登校した。


A.M7:30 教室


昨日と全く同じ後継を横目に見ながら今日の作戦を考える。

いつもと違って物理的に何かがあるということを教えることは出来ない。相手にその感情を抱かせて、なおかつその感情が負の感情だというとこを伝える必要がある。

(そしたら、やるしかないよな…)

教室に生徒がそこそこ集まったところで事を起こす。


黒板消しを二つ手に取り、走り出す。教室の入口の方からだ!!

狙いを定め、廊下側にいる生徒から順に黒板消しを叩くことによって発生する粉を振りまく。つまり嫌がらせだ。

ひたすら粉を降り続け、黒板消しが綺麗になって粉が出なくなるまでひたすら走った。俺が通り過ぎた後にはゴホゴホと咳き込む音が聞こえた。

黒板消しが限界を迎えたところで、教卓の前に堂々と立つ。


「お前ら!何か言いたいことあんなら行ってみやがれ!!!!」

これが普通の高校なら、生徒全員に罵倒をあひせられた後、ボッコボコにされること間違いないだろうが、

「ゴホゴホッ。まったく、どうしたの?西秋君。朝からとっても楽しそうだけどいいことでもあったの?」


「まったく、西秋もお調子もんだなー。何も言わずにこんなこと始めるなんてよー。」


などと俺が変なやつになったと思うやつはいるが、怒るやつは1人すらもいない。これじゃあダメか…。もっと何かやらなければ…。そう考えているとチャイムが鳴り、一時間目が始まった。



「えー、ではこの問題を西秋君。解いてみてください。」

これを聞き、俺はよし来たとばかりに叫ぶ。


「はぁ!?てめぇなんかのために問題やる義理なんてあんのかよ!!こんなクソ退屈な授業やる意味ねぇだろ!!」

よし決まった。先生の反応は…


「そうですか。ならほかの人…」

問題ないようにほかの人を指す。これでもダメか…。なら、


「いやーーーーーーふぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!!!!」

叫びながら教室を走り回った。通りかかる生徒の頭をわしゃわしゃしながらひたすら叫び、走る。恥ずかしさが半端じゃないが、迷ってる暇なんぞない。

こんなことをやっているのに、先生が怒らないどころか、クラスメイトも笑ったりするくらいだ。ひとしきり笑うと、俺なんていないかのように授業は再開された…。


その後の授業でもひたすら暴れ周り、叫びまくりもしたが、何たる成果も得ることはなく、放課後を迎えてしまった。一時間目の手伝いも、手ひどく断ってやったのだが、ほかの生徒に頼むだけで流されてしまった。


教室で突っ伏している俺に、小暮が帰ろうぜと言われたが、疲れたので先に帰っててくれと言っておいた。誰もいない教室で10分程度突っ伏していたが、これじゃあ何も始まらないと思い、教室を出た。校門近くに来ると、声が聞こえた。


「あ、あの!」

わ、忘れてたぁぁぁ…。不意を疲れてどぎまぎしながら振り向くと、あの子がいた。


「私と、付き合ってください!!」


やばい、とっさに言葉が出てこない。どうしようかとあたふたしていると、横から声が聞こえた。


「敏和?」

深瀬の登場である。


「よ、よう深瀬。」

ふらふらする頭でそれだけ返す。いろんなことが重なりすぎて容量オーバーだ。


「告白、されてるの?」

そう聞いてくる。表情は髪に隠れて伺えない。


「そ、そうなるかなー?」

と、ぎこちなく答えると、今度は後輩ちゃんが口を開いた。


「あ、も、もしかして、彼女さんがいたんですか?そんな…。で、でも私諦めませんから!!絶対に先輩を私に夢中にさせますからー!!!!」

そう叫びながら走り去ってしまった。ふう、なんだか気まずい雰囲気は終わったようだ。そう安心していると、なにか視線を感じる。


「俊和、あの子可愛かったね。」

深瀬が何故か唐突にそう言った。


「ああ、たしかに可愛かったな。」

わけがわからずとりあえず素直に答える。


「ところでさ、今あたしの心の中になにかよくわからない感情が渦巻いてるんだけど何なんだろ?」

俺に聞かれても困るんだが…。いや、待てよ?この状況でこの質問、そしてこいつの性格から考える。


ここだ!!


「もっとその感情をふくらませるんだ!!もっとこみ上げさせろ!!」

そう叫ぶと、深瀬はえ?と戸惑いながらも集中し出した。


「なんだか…変な感じ。」

はぁ、はぁ、という息遣い。どんどん高調していく頬。


「もっとだ!!お前ならやれるだろ!!!!」

もっとだ。まだたりない!


「うっ、は、はあぁぁぁぁあ!!!!!!」

ゴスッ…俺のお腹に深瀬の拳がクリーンヒット


「おふっ…。」

膝をつく俺。しかしまだ倒れられない。


「深瀬…今お前に溢れている感情は怒りだ。こういうふうに他人を殴りたいだとかボコボコにしたいだとかいう感情のことだ…。」

必死に意識を保ちながら語りかける。


「い、いかり?この感情がいかりっていうものなのね?なぜかしら。殴ると解消されるこの気持ち。悪くないわね…。」

よ、よし。これでこいつに負の感情を認識させることが出来たはずだ。これで、おわ…り…。


バタリッ


ーそして俺は眠りについたー



不意に目が覚めた。見慣れた天井、。俺の部屋だ。

俺は何をしてたんだっけか?たしかwithoutを止めるためにいろんなことをして…そうだ!!深瀬に殴られて気絶したんだった!!

今は明るい。つまり朝。時計を見る。



A.M.6:00


拳で一晩寝かせられてたと思うと鳥肌がやばいな…これは次はないな…。しかし俺の犠牲で世界が救われたと思えば1晩くらい大したことないな。

無理やりにそんなことを考えながら制服に着替え、リビングに降りる。すると、母さんは寝てるようで、置き手紙で「冷凍してあるご飯と昨日作ったトンカツがあるからそれ食べてね!母は寝てます!!」と書いてあった。それでも母親かよ…などと思いながらご飯とトンカツをチンして食べる。

(俺の犠牲で世界が救われたと思っていたが、まだ確認してないんだよな…)

自信たっぷりだった寝起きとは違い、きちんと目が覚めてくると不安になってくる。もし失敗したらこの世は負の感情のない頭のおかしい世界から戻ることは無い。それにしてもどうやって確認すればいいんだろう。昨日みたいなキチガイじみたことしたくはないし…うーん。あ、そうだ!手っ取り早い方法があるじゃないか!そう思い、自分の部屋の机においてあったものを取り、学校に向かった。



A.M.7:20 教室


さて、あいつが来るまで確認がてら周りの観察でもするか。

そう考え、周りを見渡す。まだいる人数は少ないがとりあえずなのでまぁ問題ない。

「機能のテレビ面白かったよなー。」

「だよなー、まさかあんなふうになるとは思わなかったよー。」

「あの女優さんが出る映画来月やるんだって!」

「ほんとに!?一緒に見に行こうね!」


まぁいつもと変わらない。昨日とも大した差はない。やはりあいつが来るのを待つしかないか…。そう考えていると、やつが来た。俺は走ってそいつの元へ向かう。


「お、おい。どうしたんだよ敏和?そんな急いできて。ちなみに俺にはそっちの趣味はないからな?」

なにかわけのわからないことを言ってるが無視だ。


「小暮。ここにお前から借りためぐパラの単行本があります。」

そう言い、小暮にめぐパラを見せる。


「お、おう。なんだ?読み終わったのか?なら返してくれよ。ちょうどめぐパラ217周目しようと思ってたんだ。」

言っていることがかなり恐ろしいが、それをまたまた無視して言う。


「これを…焼きます。」

そういい、ライターを手にし、めぐパラに近づける。そして火をつけた…が、そこにめぐパラの姿はなかった。そう思っていたら背後から声が聞こえた。


「俊和。お前は一体何をしたいんだ?俺の神聖なるめぐパラを焼くだと?お前は死にたいのか?ん?死にたいんだな?」

ある感情をビシビシ感じる。これは…殺気!!


「ははっ!悪いな小暮!今のは冗談だ!!だからこっちに来んな殺人鬼がぁぁぁあ!!!」

小暮が鬼の形相で追いかけてくる。やばい、今までで一番の危機を感じる。よし、これで今回のwithoutは回避できたことは確認できた。


「どの部位を残して欲しい?三つまでなら叶えてやろう…」

くそが、体の部位三つだけで成り立つわけねぇだろうか!!


あとは生き残れはばいいだけだ。


そうして俺らふたりは一時間目を半分以上サボって二人仲良く怒られました。

題名に間違うと書きましたが、まぁ解決しちゃいました。ゴメンね☆


新キャラ登場ですが、今後も出番はあるのだろうか?何せリレーなので新キャラバンバン出てきて収拾がつかなくなったら大変な事になりそうです。


違和感なくなんてものはあまり気にせずに書いてしまったのでそれは大目にみていただけたら嬉しいです。


作:すみすみ

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