ツンデレと厨二と10月最後のイベント
こんにちは!Without2話です。
小説のまえがきで何を書こうか考えて同性の友達と歩いていたら、前を歩くカップルより距離が近かった私です。
深瀬可愛すぎてやばい。
ではどうぞ
「母さんこの味噌汁だしとってないでしょ」
「味噌汁?味噌入りスープの間違えでしょ。もう俊和ったら〜」
どういうことだ…どうなっている⁉︎夢じゃなかったのか…そうだ!着信履歴を確認すれば、俊和は急いで携帯を取り出し確認した。
着信履歴
A.M.11:00 公衆電話
10月10日 A.M.8:12 学校始業3分前
味噌汁がなくなったことを未だ信じられないまま学校への道を急ぐ。味噌汁がただ味噌を溶いた汁にかわってしまった一件から、俺は心ここに在らずといった状況で15分も食卓で時間を無駄にした。その結果が今の遅刻しそうなこの状況。あれこれと考えを巡らせながら足を運ぶ。
同日 A.M. 8:14 学校始業1分前
足が止まる。
「もし…学校に行って何か別のものがなくなっていたら…それが物だけとは限らない、人かもしれない!それが俺の友達じゃないとも限らない!」
図らずも声に出てた俺の心情。
俺は、溢れ出る感情を抑えきれなかった。
涙が溢れそうになるが必死で抑える。
8時15分。学校始業のチャイムは、学校のシンボルの時計塔を眺めながら聞くこととなった。
気づいたらもう1時間目が始まっていた。
みんなには気取られないよう、努めて平静に教室に入る。様々な感情を抑えた俺の視界の先にいるのは深瀬だった。
「遅かったじゃない?遅刻?」
いつもの表情。いつもの深瀬。
この様子を見るに、恐らく深瀬達はWithoutが起きた最初の日の次の日を過ごしている。つまり、俺が学校を早退したり、再認識に失敗して自棄になってベッドに潜り込んだ昨日とは違う昨日………春のパン祭りとか言いながらふざけてた昨日の記憶を引き継いでいるのだろう。
だんだんと状況がつかめてきた。
つか、遅かったんだから遅刻に決まってんだろ。どんな質問だよ。
脳内のくだらないツッコミも勘を取り戻してきた。俺もそろそろ頭を切り替えないとな。いつまでも考えてたら仕方ねえ。
「早起きしようと設定変えて目覚ましをセットしたらAMとPM間違えてた、俺じゃなかったら学校来なかったね」
俺の言葉にクラスで呆れと嘲笑が起こる。
「馬鹿じゃないの!?」
「阿保か貴様!いや、貴様が真性の阿保であることは周知の事実であったな」
「だが最近アイツの阿保さ加減は緩やかに酷くなってないか?」
「む?確かにそれは一理ある。喜べ俊和、貴様の阿保さ加減はまだ上昇の余地があったぞ」
こ、ここまでボロクソに言われるようなことをしただろうか?
だがようやく俺は元の生活に戻れたみたいだ。きっと昨日のは夢、味噌汁はなくなったが、今考えれば大したことない。
「お前ら授業受ける気あんのか!おい西秋、この問題とけ!」
あ、授業中だったんだっけ。すんまそーん。反省をしながら黒板を見る。
えーっと…わかんねえ。二次関数Withoutしてくんないかな。
「ちょっと何言ってるかよくわかんないっす」
「ったく。この問題は、最大値最小値を・・・」
と、先生が説明モードに入ったのをいいことに朝ごはんを食べ始めた。朝のショックで折角食べた朝食をトイレで戻してしまったのだ、腹が減ってしょうがない。
飯を食った後は勉強なのだ、何人たりとも邪魔をしてはなら・・・スゥ。
キーンコーンカーンコーン
チャイムの音で目が覚めてしまったが、授業中の睡眠は精神の安定に繋がったようだ。
ようやくいつもの調子に戻った俺は、久しぶりに授業を聞くことにした。
「その日まであと少しになったハロウィンだが、このイベントはもともと、ヨーロッパの端に追いやられたケルト民族の文化が発祥といわれ………」
…やっぱいいや
そんなこんなで日常を取り戻し、日付を重ねていくうちに、俺はWithoutのことを意識しなくなっていった。
ピピピッピピピッピピピッピピピッ カチッ
10月31日 A.M.6:25 Without発生から3週間
「としかず〜ごはんよ〜」
いつも変わらない母親の呼びかけに、はいよーと適当に応じる。
食卓に並ぶのはご飯、目玉焼き、納豆、そして味噌スープ。
すっかり味噌汁のない生活に適応した俺の表情からは戸惑いすら、微塵も感じられなかった。
「いってきまーす」
独り言のようにつぶやいた一言とともに、10月最後の日を迎えた。
A.M. 7:20
10月の気持ちいい風に当てられながら学校に到着。そこに待ち構えているのは深瀬。 …ではなかった。
「おう、西秋、今日もアホみたいな顔引っさげているな。」
うるせえよ。黒板消しの粉飛ばすぞ。
「ところでお前今週のメグパラみたか!?神回だぞ神回!」
「見てねえし、お前の神回は当てにならないから見る気もない。」
木暮賢子。例えるなら高校生サラリーマンのような真面目な印象を受ける風貌の彼は、見た目とは相反する性格の持ち主。
メグパラというアニメのヒロインのめぐりんを愛してやまない変態紳士である。
「おま、今週のめぐりん見ないと人生の3割は損するぞ!」
はいはい。めぐりんめぐりん。
というわけで、僭越ながら一言。
「きめえ」
「」
はい論破。
なんだかんだで木暮との戦闘を圧勝で終了させ、授業準備に入る。
今日もいつも通りの1日が始まる。
3時間目。英語のスピーチ発表のペアを決めるくじ引きをしている最中、深瀬が珍しく静かに椅子に座っていた。
「どした深瀬、こういうくじ引きとか一番はしゃぐタイプだろ、お前。」
「うるさい! …まだ心の準備ができてないのよ」
なんかキレられたんだが。しかも最後の方何言ってっかわかんねえし。まあ、女子にはいろいろあるのだろう。そう納得させて深瀬の元から離れる。
「西秋君、早くひいてくださーい」
英語科教諭に呼ばれ、くじを引こうとするが、背後からとてつもない視線を感じる。
恐る恐る振り向くと深瀬がおれを睨みつけている。何か怒らせることでもしたのだろうか、思い当たる節といえば春のパン祭りくらいなのだが…それにしたら今更感が強い。とにかく気にせずに引こうと決め、くじの箱に向かい合う。
友達に話しかけるような気軽さで特に何も考えずくじを引く。出た番号は「4」誰とペアかなーと4番の人を探す。
「4番の人〜」
そう声をかけると深瀬がものすごいスピードで駆け寄ってきた。
「私、4番。だから私とペアよ!」
うへぇ。
「よ、よろしく」
「まずはテーマ決めね!何か題材にしたいものとかある?」
急に元気になったかと思えば、今度は授業に意欲を見せはじめた。忙しい奴だ。
そして俊和は、周囲から嫉妬と羨望の眼差しを向けられていることに気づくことはなかった。
俊和はその日の夜、急に眠気を催し、歯磨きもしないままベッドで寝落ちしてしまった。
A.M. 6:30
「としかず〜ごはんよ〜」
昨日と全く同じ呼びかけをしてきた母親に返事ともつかない声で応じ、リビングに向かう。
食卓に並ぶのは、ごはん、目玉焼き、納豆…、味噌スープ…。
俺は、激しいデジャブを感じるとともに、ある1つに可能性を意識し始めた。
without
慌ててスマートフォンで日付を確認する。
10月31日 午前6時34分
強いめまいを振り切り、朝食を食べきる。ろくに挨拶もしないまま学校への道を急ぐ。
学校で待ち受けるのは小暮、今は構っている暇はない。
「今週のめぐp…」
「すまん急いでる!」
うしろからめぐりんの必殺技の掛け声が聞こえる。
無視無視、あいつがwithoutしたら再認識は不可能だからやめてほしいな。
学校生活最速で教室にたどり着く。パッと見たときの違和感も欠員もない。だが、もしかしたら自分の知らないものがなくなっているのかもしれない。
その考えは、俺にとって、安堵感をもたらすものであったが、同時にそこはかとない恐怖も押し寄せてくる。
「あら、俊和じゃない、おはよう」
さまざまな感情の渦中にいる俺に深瀬が話しかけてきた
「あ、ああ…おはよう」
「今日は、英語のスピーチのペア決めね、あんたとだけはなりたくないわ」
ごめんなさい。僕がペアです。
「俺は深瀬となりたいけどなっ」
意地悪のつもりで言ってみたのだが、予想外の反応が返ってきた。
「なっ、いや、私は…まあ、なりたくなくはないわ」
よくわかんないなこいつ。つかそんなことやってる場合じゃねえ、昨日を繰り返しているということは今日はWithout二日目、もう時間はない。しかし、昨日も違和感は感じなかった。つまり、よく使うものが消えたわけじゃない。
いやまて、なにかわすれてる。10月31日、10月最大のイベント、
『ハロウィン』
「そういうことか!迂闊だった、行事が消えるなんてことがあるのか、」
消えたものがわかれば話は早い。
「深瀬!悠木!ちょっと来てくれ!」
俺は急いで彼らを呼び出し、ハロウィンの説明を始める。
10月31日に行われること、トリック・オア・トリートという掛け声でお菓子をねだること。仮装をすること。
ハロウィンの説明としてはこの上ない完璧な説明だ。一応、復唱させて完全に「認識」させた。
…はずだった
同日PM 5:00
俊和の電話が鳴った。公衆電話からだ。相手に確信をもちつつ電話に出る
「俺の要件はわかるな?」
開口一番男はそう言った。
「ああ、昨日、Withoutが起こったな?」
「そうだ、今回は味噌汁の時のようなミスは許されないぞ」
ふっ、俺を誰だと思っている。
「心配には及ばないぜ、今日、消えたハロウィンの再認識を二人にさせた。これで条件はパスできただろ」
自信満々に、少しかっこつけて言ってみたが、男の反応は予想したものではなかった。
「ふむ、ハロウィンか、なるほど、そういうことも起こっているのか。」
「どういうことだ?」
思わず聞き返すが男は答えない。
「そもそもお前は誰なんだ、お前も俺の『同類』なのか?」
「それは今は知る時ではない。ただこれだけ言っておく。」
と、そう男は言い、一呼吸おいてこう告げる。
「君はまだ、Withoutの本質を理解していない。私を知りたければまずそこから始めることだな。それと、もう一つヒントを与えよう。Withoutは、世界共通のものではない。Withoutを感知できる、いうなれば特殊能力者個人個人に現れる現象。君が普通に過ごしてきた日は、ほかのWithout能力者がループしている日だったかもしれないということだ。」
信じがたい事実だった。さらに男は俺の知らないものが消えることはないとか言っていたが、頭に入ってはこなかった。かろうじて聞き返す。
「つまり、俺の知らない間に今まで当たり前にあったものがなくなった世界になってきているということなのか?」
「そうだ、かつては、生体移動システムなんてものがあったな、あれが消えたのは実に惜しかった。」
あいつは何を言っている?これは本当に現実か?考える暇もなく、男は話を締めくくる。
「まあ、君は目の前のWithoutを止めることに集中したまえ、では。」
「おい待て!ハロウィンならもうすでに…」
言い切る前に電話が切れた。煮え切らない気持ちを抱えながらおれは睡魔に負けて、ベッドで寝落ちした。
次の日、あわてて起きた俺は、すぐさま日付を確認する。
10月31日
表示された画面を見て、絶望的な気分になる。
「Withoutを止めることはできなかった…?」
思わず声に出す。しかし、俺は何度も経験してきた挫折に耐性がついたのだろうか、すぐさま脳内を回転させ、やるべきことを整理していく。
まず学校に違和感はなかった。そしてハロウィンが消えていたことから、直接物が消えたわけではないだろう。つまり、学校に行ったところで意味はない
俊和は、今日一日学校を欠席し、Without解決に力を注ぐことを決意し、頭を巡らせる。そしてたどり着いた一つの仮説。
「もしかしたら、ハロウィンが消えたのは、もっと大きなものが消えたことの弊害、副産物なんじゃないのか?」
仮説がたったらあとは立証だ、そう考えたその時、味噌汁が消えた次の日の授業で、偶然きいてた話を思い出す
『その日まであと少しになったハロウィンだが、このイベントはもともと、ヨーロッパの端に追いやられたケルト民族の文化が発祥といわれ………』
俺に新たなる考えが頭に浮かんだ。それが思いがけず声に出る。
「発祥の地が消えたら、生まれたものも消えるんじゃないか!?となると消えたのはヨーロッパ?」
そう考えて、何気なくあたりを見回す。
その時、自分がいつも使っていたバッグがなくなっていることに気が付いた。バッグは、母親のお古で革製の高級品。たしか、こう記されていた。
『MADE IN ITALY』
確信に変わった俺の仮説。あわてて【ヨーロッパ】と検索をかける。すると、
検索結果、37件
少し笑っていただろうか、Withoutで消えた本当の物を見つけ出した喜びか、はたまた信じられないものを見つけた驚愕か、俊和には自分の気持ちを推し量ることはできなかった。
だが、消えたものがわかっても問題は残る。再認識の方法だ、ハロウィンのようにわかりやすい説明があるわけではない、面積や総人口など、データ無しではわかるはずもない。そして俺の出した結論は一つ。
『ヨーロッパ』の定義の再構築。
俺が、現実のヨーロッパに限りなく近いヨーロッパを作り出し、それを認識させる。再認識の基準はわからないが、とにかくやってみるしかない。俺は転びそうになりながら母親のもとへ向かう。
母親は、俺が学校に行っていないことに心底驚いていたようだが、今はそんなこと言っていられない。早口でこう告げる。
「母さん、今日は学校内万博の準備期間で休みなんだ、それで、俺たちのグループの発表を聞いてほしいんだけどおねがいしていい?」
母は怪訝そうな顔をしたが気合で押し切る。
「成績がかかってるからおねがい!」
「まあいいけど、学校内万博なんて聞いてないよ。急にどうしたのさ」
痛いところを突かれたが無視する。俺は拙い記憶を頼りにヨーロッパの説明をしていく。ちなみに、建前は大西洋にあるはずだった国々。というあまりにもストレートなタイトルである。
「えっとね、大西洋って結構スペースがあるでしょ?それで、えーっとそう、ユーラシア大陸に地続きになっている土地があるはずだったんだよ!名前はヨーロッパ、その地域はピザとかパスタとかっていう料理とか、堅いフランスパンっていうパンとかもあって楽しい地域なんだ。」
母親は驚いているようだったが構わない。
「その中にはイギリスっていう国もあって、そこは日本と同じ島国なの!たくさんの名所や、名物があるんだ」
母親が反応を示す。
「面白いファンタジーだね、ひとりでかんがえたのかい?」
まずい、ファンタジーだと思われるのは、おそらく再認識の定義外だろう。おれはすぐさま訂正する。
「いや、これはデータに基づく検証結果なんだ。こんなのなにもなしで考えられたら作家に成れちゃうよ。」
少し冗談めかして言ってみる。すると、母親はますます驚いた表情でこちらを見る。まずっただろうか。
「へぇーすごいね俊和、あんたにそんな分析力があったなんて母さん知らなかったよ。」
なんとかなりそうだという希望を見出しつつ俊和はだめ押しとばかりに言葉を紡ぐ。
「これはいろいろな研究者が似たような発表をしているけど、ところどころは俺のオリジナルなんだよ!」
母親は、子の成長がうれしいのだろうか、優しい微笑みを見せている。
「ヨーロッパね。うん。覚えたわ。」
俊和は心の中で盛大にガッツポーズをした。できるだけのことはやったという達成感と安堵感が押し寄せてきた。
その後、俺はその日をどういう風に過ごしたのかは覚えていない。おそらくWithoutをとめた手ごたえに感動し、心躍っていたことだろう。気づいたら夜になっていた。
期待と、しかしながらわずかな不安を胸に寝床につく。なかなか寝付けないが、古人に倣い、ひつじかぞえうたで眠りにつく。
11月1日 A.M. 6:30
頭は覚醒している。しかし、目が開けられない。怖い。もしWithout阻止に失敗していたらと思うとなかなか目を開けることができない。
しかし、母親の呼び声をきっかけに目を開ける。
目を開けたらすぐさまお古のバッグを探す。
「あった!」
たしかにバッグは元あった場所に存在した。続いてインターネットでヨーロッパをキーワード検索をしてみる。
検索結果 43,000,000
「やった!やった!おれはWithoutを止めることができた!」
歓喜の渦に巻かれながら、俺は母親の作る朝食を食べに、リビングへ急行する。
一方同じ10月31日に、自分の周りで起きたWithout現象を止めたものがいる。
「ほう、西秋俊和か…。あいつも俺と同類か…」
深瀬が堀北真希に見えてる私です。
今回Withoutの説明を多く入れてしまってわかりづらかったかもしれません(ー ー;)
前話の作者の話と比べてあまり作風が変わらないように努力しましたが違和感があるかもです…ご了承ください。
今回と同じく次話の投稿も一週間後を目指しています!
作:タキタキ