第7話 ヌサカン
流れ星を連想させる通知音が八幡を現実へ連れ戻す。現在2時5分、Eメールは1件、メッセージは4件。
Eメールは5分前、はなこからであった。
(今度はなに?)
『昨日はやってくれたわね。でも、今日こそみかんには帰ってきてもらう。私達か、新しい仲間の誰かが迎えに行くわ』
(……新しい仲間?)
その正体を知りたがっているのは八幡だけではなかったようだ。4件あるメッセージの送り主達――花壇と玲華、芋沢、楽司が予想し合っている。
『祖志継さんからメール来ただろ? 犯人探しっぽくなるけど、新しい仲間って誰だと思う?』
『地元かも! そっしー姉妹と仲いいの何人か居たし』
『玲華さんの話通りなら、祀陵以外?』
『俺予想では、祀陵生入ってる! 去年祖志継ちゃんと仲良くしてた子居たもん』
山手からの新着だ。
『それ聞いてくる!』
気が変わった振りをして熊ケ根、はなこにメールを送るそうだ。
数分後、山手がグループチャットに再浮上した。
『正体分かったよ! それと、熊ケ根さんから今日の予定』
熊ケ根との交信内容が添えられている。
『やるじゃん! これ使っちゃお!!』
玲華が次の一手を考えた。
「宇美さん、手伝い休ませちゃってごめんね」
「いいよ〜。昼までには終わる話でしょ?」
ヌカボシの開店時間であるにも関わらず、八幡は熊ケ根、青年と中年女――久希としのぶを自室でもてなしていた。
インターホンの音が響いてくる。
「ほら来た! 連れてくるね〜」
階段を駆け下り、玄関の扉を押し開けた。
「……おはようございます」
「おはよう。この上に居るんだね?」
「はい。こちらです」
来客は肩幅が広く、厳格そうな男性刑事だった。彼を自室に案内すると、熊ケ根達は血の気が失せた顔でこちらを凝視した。
「いっ、嫌あっ!!」
「2人だけでも逃げて!」
「母さん! 分かった。輝帆、行こう!」
久希が熊ケ根を抱きかかえて突破した。
「私が行きます!」
八幡は自宅から裏道側で久希と熊ケ根を追い掛けたが、中島丁通で見失ってしまった。
「はぁっ、はぁっ……うちの、クソノロマっ」
自分をなじり、自宅へ踵を返した。ちょうど、男性刑事がしのぶを拘引していくところだった。
「すみません、あの2人……」
「いいんだ。あの子達がやろうとしている事は、みんな分かってるからね」
「そ、そう……でしたね」
山手が得た情報は既に捜査機関へ通達してあった。八幡もまた、祖志継家のスケジュールに従い、みかんに会わせると装って熊ケ根らを部屋へ招き入れていたのだ。
(レイの言った通りやったよ……あのリア充達は、ごめん、任せる)
男性刑事としのぶを見送り、最初からなにもなかったかのように両親を手伝った。裏で一悶着あった店を思っての事である。
(……どうなったかな?)
八幡は店内が落ち着いた頃を見計らって、グループチャットを覗いた。
これまでに女子宅周辺で祖志継家らしき不審者が出没したものの、捜査関係者、地区によっては人目が多い事からなにもせずに去るケースがほとんどだった。
『うちん家来た奴シメたわ』
玲華のところには男連れの女子――祖志継家の新しい仲間であり、彼女と敵対している祀陵高校生が押し入ったものの、弟と応戦、確保したそうだ。玲華達は幸い無傷らしい。
『それと、そっしー達女子ん家回ったら集まるらしいよー』
女子祀陵生が落としていったスマートフォンにはなこのメッセージが入っていたようだ。
『集合場所近いから見てくる』
『うちも行くよ!』
相手は女子祀陵生の悪友や、彼女と繋がりのある男達、そしてはなこ達と未だ大人数だ。八幡は両親に一言断り、陸に電話を掛けながら自宅から出発した。
「陸君、グルチャ見たでしょ?」
「うん! 宇美ちゃん行くなら、俺も行くよ。葛岡も」
「葛岡君も!?」
陸の話通り、彼の自宅前では葛岡も八幡を待っていた。
「はぁ……お待たせぇ、葛岡君珍しいねぇ」
「塩柄の彼女絡んでるからさぁ……」
「そういやそうだね、あの子」
「宇美ちゃーん!! みんなー!! 待ってー!!」
奏が混ざった。4人は仙台駅行きのバスを捕まえ、市街地へ乗り込んだ。
祖志継家 祖志継しのぶ
祖志継家 祖志継久希




