第5話 イプシロン・カメレオーティス
「陸君!?」
八幡と奏が声を揃えた。
「宇美ちゃん! 奏ちゃんと、2軍3軍お揃いで……探したんだぞぉ」
陸は八幡との電話後、玲華と海恵達になりすましの正体を知らせてからヌカボシを訪れていたという。八幡達とは入れ違いになったが店では待たず、近所を探し回ってここへたどり着いたそうだ。
「ちょうど輝帆ちゃんが出てったから……輝帆ちゃん、マジで」
「そうなの! 熊ケ根さんが――」
山手が陸にこちらの、ここまでの経緯を話してくれた。
「――そっかぁ。最低だよ……クロになんて言うか」
陸は手にしていたスマートフォンを強く握り締めた。
彼いわく、県外でインターハイを控えている黒松にもはなこや玲華からの連絡があり、危機感を抱かれているようだった。
「クロ……そりゃあ心配するっしょ」
夏椰が黒松に同調した。
「メッセージに書かれた事以外分からなそう……祖志継さんの親来た事とか、向こうじゃまだニュースになってなそうだしな。玲華さんがどこまで言ってくれたかにもよるけど」
立町が夏椰をフォローした。
「そうだな……ん? 待って」
陸が電話に出る。
「お兄ちゃんっ!!」
陸の妹の声が八幡達の耳にまで届いた。
「今どこ!? 菊田先輩達待ってるよ!?」
「マジ!? あ〜……今、宇美ちゃん達と公園居た」
「公園!? 宇美先輩んちじゃなかったの……はい! 花壇先輩が、みんなで戻ってこいだって」
「りょ、了解〜……みんな、俺ん家来て」
陸が八幡達を先導する。
陸が住んでいるマンションの下で彼の妹と菊田、天馬、花壇と落ち合った。
「陸だけ連絡来ねぇんだもん……で、どうだった?」
「それがさぁ――」
陸がなりすまし、もとい熊ケ根について花壇らに報告した。
「――まずいな」
「だな」
「まぁ、でも、陸達は無事でよかった。玲華さん達にあれ来てから、ずっとこっちやってたんだな」
花壇と菊田、天馬は陸からの連絡が途絶えたので直接彼宅を尋ねたそうだ。
「クロに、陸に会えたってメッセージ送っとこ……って、ここじゃあれか?」
花壇がどこかを遠見した。八幡が視線を追うと、顔見知りの他校生が目を逸した。
「……ダン、あれは気にしなくていいよ」
「そう? けど、ここでずっとたむろってるのも悪いしさ」
花壇が玲華と笹ノ上、陸が葛岡を集めつつ、市街地へ移動した。
「ダーン!!」
定禅寺通に差し掛かったところで、反対側から玲華が駆けてくる。
「熊ケ根が先来てて、そっしーにチクってた! 一旦バラけて……後でまた!」
「おう! 一旦、解散!」
八幡ら21人は各自、熊ケ根を撒きだした。
八幡は来た道を引き返し、北一番丁通を左に曲がる。3つ目の交差点で玲華からのメッセージを受け取った。
『熊ケ根、車でどっか行ったよ! みんなは勾当台公園に来て』
了解、と送り返すと同時に、はなこからのメールを受信した。
『熊ケ根共々グループを追い出されたからメールするわ。ご存知の通り、彼女から貴方達の事と、みかんの住んでいるところを聞いたわ。そこで提案、23時までにみかんが私達の所へ来なかったら、無理矢理で悪いけど親戚みんなで迎えに行く。貴方達も、私と熊ケ根をいじめた連中としてSNSに晒すわ。祀陵がどうなっているか気になる地元の子達、驚くでしょうね』
(そう来たか。本当、なんでも使うなぁ……さてと)
八幡は西公園通、定禅寺通を経て級友達と再び待ち合わせた。




