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五話

 (ウチダヒャッケン…?)

 どこかで聞いたことがあるような…。

 「君、すまないが私は取り込み中でね、先を急がせてもらうよ。」

 「ち、ちょっと待ってください!まだ話が…!」

 呼び止めようとしたが、もうすでに戸口が閉まりかけていた。慌てて駆け寄ったが、鐘がリーーンとなって、戸口は閉まってしまった。


 (あれ……)

 気が付くと、僕はまだ「芥川龍之介」コーナーで、整理整頓していた。手には、売れたはずの原稿用紙を握っている。

 (どういう事だ、一体…)

 ぼんやりと佇んでいると、坂田店長が

 「おう、仕事のはかどり具合はどうだー?」

 と言いながら帰ってきた。腰の具合がよくなったらしい。ニコニコしていたが、僕の顔を見て、何か察したらしい。

 「いったい何があった。」

 聞かれた僕は、全てを店長に話した。

 「いったい僕は、何でこんな事に…。」

 混乱している僕に、坂田店長が話し始めた。


 お前には、あと一週間ぐらいしたら話すつもりでいたが、この店はただの文房具屋じゃない。骨董品まがいのものを取り扱っているせいか、過去からもお客さんがくる。

 「え?そんな馬鹿な事が―」

 いいから聞け。

 お前の所に来た客は、おそらくあの夏目漱石に従事していた、内田百閒だろう。随筆家で、完成度が高い作品を数多く発表している。禿げ頭だったはずだ。あれはうちの常連さんでなあ、たまに原稿用紙を買いにくる。

 「でも、渡されたのが―」

 現代のお金だった。そのはずだ。どうやらあの戸口はお金を両替してくれるみたいでなー。こっちとしてもかなり助かっているんだ。

 ありえない話だろうが、お前はうちで働く、一介のアルバイターに過ぎないんだ。こういう事情をすぐに呑み込んでもらわないと、こっちとしても困る。とにかく、もしもうちに過去系のお客さんが来ても、未来を変えてしまうような発言をするなよ。

 「例えば、何ですか。」

 さっきの内田百閒はな、あの芥川龍之介の自殺を止められる立場にいるんだ。勿論その時点では分かりっこ無かったんだがな。

 とにかく、いいな――。


 「未来を変えるような発言をするなよ。」


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