歩けるように
私は、愛犬「ヴェル」と一緒に今まで幸せに暮らしてきた。そう、あの事故が起こるまでは・・・・。「ヴェル!ヴェルーー。」五月六日ヴェルは、散歩中に私の目の前で自転車に撥ねられたのである。私は病院の片隅でヴェルの無事を祈っていた。
「一命は取り留めましたが、後ろ足は動かないでしょう。」
私は頭の中が真っ白になった。「そんな、そんな・・・後ろ足が動かないなんて・・。」その日一日、私は悲しみにくれていた。一週間後、ヴェルが帰ってきた。私の悲しそうな顔を見て、心配してるのかどうかヴェルも暗い顔をしていた。なぜかヴェルは昔から私が暗い顔をしているとヴェルも暗い顔になるのだった。次の日獣医の先生に車椅子を勧められた。しかし私は断わった。私はヴェルに手作りの車椅子を作ってあげようと思ったのだ。翌日、ホームセンターでワゴン車輪と板を買ってきた。
「ヴェル、車椅子を作ってあげるね。」
私は早速ヴェルの車椅子作りを開始した。ヴェルもうれしそうに作っている様子を見たいのか、前足だけで進んでくる。半日かけて完成した。早速後ろ足を引っ掛けてみた。成功した。ヴェルは嬉しそうだった。しかし一週間後、車椅子を外すと、
「え?何これ?」
病院に連れて行くと、
「これは、床ずれだね。」
忘れていた。一日中車椅子を着けておくと車椅子に接している部分が腐ってきていたのだ。この車椅子は失敗に終わった。私は、くじけずもう一度作ってみた。足が接する部分にスポンジを貼り一時間おきに外すよう心がけた。これで床ずれという問題は解消された。久しぶりに散歩に出かけた。ヴェルも嬉しそうだった。公園に行き家に帰った。しかし、動くのが少し遅くなった。車輪が少し重いのだ。ホームセンターでもう少し軽い車輪がないか探した。今日はみつからなかった。私はヴェルを見つめ「ヴェルは大丈夫なのかなぁ。」そう思うとかなしくなった。翌日、隣町の大きなホームセンターに車で出かけた。お店の人に聞いてみるとちょうど在庫で一組あった。私は大喜びで買って急いでヴェルのいる家へ帰った。今度は完璧だったようだ。歩くスピードも元に戻った。そんな事から私もっとヴェル尽くしてあげたかった。私はついに、十数年貯めてきた貯金を下ろし、小さな庭付一戸建てに引っ越したのである。それから数ヶ月たったある日、私は庭の手入れをしていたらヴェルが異常な程後ろ足をバタつかせていたのである。私はいつかの獣医さんの言葉を思い出した。
「奇跡が起これば立てる可能性があるかもしれません。」
よく見てみると鼻で車椅子を取ろうとしているのだ。私は少しの可能性に懸けてみることにした。「もしかして、立てるかもしれない・・・。」私は車椅子を外してみた。すると・・力なかったが確かに立ったのだ。この作品を読んでいる方にとっては「あー、そーですか。」の様な事だろうけど、私にとって今まで生きてきた中、最高の喜びだった。それからという物私は毎日ヴェルを庭に出し、リハビリを続けていた。それから半年後、職場から帰り玄関の鍵を開けようとすると中からヴェルの力強い鳴き声が聞こえてきた。私は玄関の扉を開けた。「ただいま。」を言う前に驚きの光景が目に飛び込んできた。それは、ヴェルが歩いていた。というか、走っていた、と言ったほうが正しいのかもしれない。私は胸一杯嬉しさがこみ上げて来た。と、同時に一つの言葉が出た。
「ヴェル・・ありがとう・・ごめんね・・・。」
この言葉が口に出たとき、私は大粒の涙を流していた。それからと言うもの私とヴェルは、事故が起こる前と同じように暮らしてきた。その後ヴェルは寿命で他界したが悲しくはなかった。なぜなら、ヴェルが大事な事を教えてくれたからだ。それは、一口に“犬”と言ってもちゃんとした飼い主に育てられている者もいれば、飼い主に虐待をされ最後は捨てられていったり、このように犬といってもいろいろな者があるのだ。これから私は、いろいろな動物保護に協力していきたいと、思っている。
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