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その掌には

作者: 瀬川潮

 爆弾があるんです、私の掌に。

 可愛い可愛いクマさん人形の。

 でも、いつもいつもぽよん、と掌に載っているわけではないの。

 ご飯を食べるとき、ケータイでメールするとき、よっちゃんの肩をばしばしたたくとき。そんな時はちゃんと消えてる。体育でソフトボールをしたときはどきどきしたけど、爆発はしなかったみたい。

 もちろん、見えるのは私だけ。

 みんなには見えないけど、こんな可愛いクマの人形を掌にのせてる私ってば、なんって可愛いのかしら。

 みんなにも見えればいいのに。

 あ。

 クラスメイトの佐原田君には見えてるのかな? たまに私のほう振り向いて何かいいたそうにしてるものね。まるで監視しているみたいに。

 今度、勇気を出して話しかけてみようかな。

 ね、クマさんはどう思う?


「爆弾処理班です」

 ある日、自宅に大人の人がいっぱい来ました。私の掌からクマさん人形を取り上げると「爆弾確保。機能停止不可能なのでこのまま当方で永遠に保管します」とか言って帰っていったけど。

 こうしてクマさん人形は無くなりました。いつもいつも、悩みを相談したり嬉しかったことを聞いてもらってたクマさん人形。もう、私の掌にはないのね。

 ぽっかり空いてしまった心の隙間。

 私は泣き寝入りながら何度もクマさん人形を思い出して、心の中で「ごめんねごめんね、守ってあげられなくて」と話しかけました。

 そしたら。

「大丈夫。ボクはここにいるから」

 心の中で想像したクマさん人形がしゃべった。

 そうか。今度から私の心の中にいれば、守ってあげられるよね。もう、誰にも連れ去られないよね。


 そして私はよっちゃんの肩をばしばし叩くときやソフトボールをする時も、クマさん人形が爆発するかもしれないってどきどきすることはなくなりました。だってもう、人形型爆弾は掌の上ではなく、私の中にあるのだから。

 そうそう。

 クラスメイトの佐原田君とも仲良しになりました。

「だって俺は爆弾処理班だからね。機能停止不可能なら、ずっと側に置いて保管しないと」

 屋上で一緒におべんと食べながら、たまにそんな話をします。



   おしまい

ふらっと、瀬川です。


主人公ちゃんはダイナマイトバディというわけではありません。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 非常に想像力をかきたてられます。独特の世界の中でもどこかあまやかさがあって、それが読み手の想像と現実を一体化させます。 [気になる点] 抽象的なことをぼやかしてしまうと、訳がわからなくなる…
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