表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
助け家  作者: BCC
5/11

妹(仮)を助ける為に

――ガシャン。


扉を開けると、唖然としている妹(仮)の姿があった。


…はは、俺何してんだろ?わかんねぇ。勝手に熱くなって…。


「な、…んで」


地下駐車場で誰もいないから、そんなつぶやきまで聞こえちまう。

なんで?だと、こっちが聞きたいね。


――お前の事情も知らない。

――お前自身のことも、ほとんど知らない。

――仲良くやっていけるとは思っていない。


けど、


「なんで、来たのよ!」


…なんで?


――家族、だからに決まってんだろ?


そんなことも分かんないんだな。…当時は俺も分からなかったし。


「答えなさいよ!」


答える?何を?


…俺が昔、親父に言われたことをそのまま言えばいいのか?

それで、…解決するのか?救われるのか?

…違うだろ?彼女は俺じゃない。なら、俺の言葉で伝えるべきだ。


だって、俺は、…俺だ。他の何者にもなれない。

なら、言いたいことは決まっている。


俺は立ち止まり、息を深く吸って、叫んだ。


「世界中の妹萌えの皆さんに泣いて謝れ!」


…場が凍る。


 俺はしゃべるのをやめない。あいつはキョットンとしてるし、周りのやつらも理解不能みたいな顔してやがる。いい気味だ!


「お前は妹の風上にも置けないやつだ!

兄である俺に対しての態度の悪さ!口の悪さ!

ああ、もう全てが気に入らないね!

仲良くできるとも思えない!」


「だったら、」


「だからこそ、お前を調教する!

きちんと、妹らしく!

朝のおはようから、夜のおやすみまでな!」


「あ、んた、な、に言って、…んの」


 彼女の真っ赤になった顔が見える。そりゃ、そうだ。そんなこと言われるとは思わないだろう。


 なんだかんだ言って、つまり言いたいことは…


「俺たちは、家族だ」


 彼女が息をのむのが分かる。


「春夏秋冬はな、いったん気に入るとひどいぞ。覚悟しろ!そして、諦めろ!」


 俺がそうだったんだからな!絶対に、逃げられない!

そして、独りになんかなれない!不幸になんかなれない!


 彼女は驚きに瞳を見開いて、そのあと顔を伏せた。小さな声で「バカ、ばか、ばかぁ」と言っているのが聞こえる。




「なら、まずは僕達からこの囚われた姫様を助けないとね?」


やつらの中のリーダーと思しき白タキシードの人物が鋭い視線をこっちに向けてきた。

と、同時に黒スーツの男三人が散開しながら俺の方にゆっくりと取り囲む形で近づいてきた。


「その前に、名と種族を聞いとこうかな。春夏秋冬」


白タキシードの男が真剣な声で聞いてきた。


「柊真だ。春夏秋冬 柊真。人だ」


俺は堂々とそう告げた。

奴らはそれを聞いて驚き、バカにした顔をしていた。


当然だろう。人といえば人類では最弱の種族だからだ。

そして、なによりも春夏秋冬に人はいなかったはずだ、と思われている。


「人?ははっ、春夏秋冬、なのに?

その名も聞いたことがないよ?僕としては(なつ)()さんにきて欲しかったんだけどね」


 なんで、こいつ夏姉を知ってる?

 いや、いまはそんなことはどうでもいい。


「あたりまえだ。春夏秋冬の一員としてこんなことするのは初めてだからな。

でも、これは仕事じゃない!俺がやりたいからやっているだけだ!」


「やめて!こいつらが倒せるわけがない!」


彼女が俺のために叫んでいる。


「死ぬわよ!あんた!」


そのたびに、俺の身体は、心は、熱くなる。

それと同時に頭は冷静になっていく。


「そんな事を心配してんのか。安心しろ、

生憎と俺はこの程度のことで命を賭けるほど、弱かない」


はっきりと俺はそう告げた。

彼女は口をぽかんとあけている。


「おもしろいね」


ただ一言の呟きとほぼ同時に黒スーツ三人が一斉に動いた。

全員素手だ。つまり、完全に人である俺を舐めている。


――唯一、ここにチャンスがある。

――そして、このチャンスは一撃のみ有効だ。

一撃で仕留めなければ、…俺がやられる。


―――スイッチを入れるか?


いや、なんのために俺は春夏秋冬になった。


――あんな自分が嫌だから。――あんな力に頼る自分が嫌だから。


俺は俺自身の力で彼女を救ってみせる。


また、あんなことになるのは嫌だ。



近づいてくる。

右、左、前。


狙うは、顎。

一撃で気絶させる。


やつらより、はやく。

だれよりも、はやく。


右の奴のふところにもぐりこみ、驚いている顔を

えぐるように全身のバネを使い、下から左の掌底を顎めがけてたたき込む!


そいつが浮かび上がり始めた瞬間に、左に飛ぶ!

その勢いのまま、残りの二人が反応しきる前に、

一人に斜めに打ち抜く右の掌底!

そいつが倒れるより早く、

掌底を打ち抜いた後の力を遠心力に変え、

身体を一回転させながら、残りの一人の顎にハイキックをかます!


「おみごと」


白のタキシードの男からの拍手と同時に、ドサッという音。


身体が燃えるように熱い。

心臓はバクバク言って、いまにも破裂しそうだ。


俺は彼女は驚いてるだろうな、と思い、

ちらりと彼女の顔を見ようとした瞬間。


――俺は吹っ飛ばされていた。


「人としてはよくやったよ」


――その呟きだけが俺の耳に届いた。


背中に激痛を感じ、ああ、壁まで吹き飛ばされたんだなと理解する。


「げほっ、がはっ」


息ができない。むせる。肺が空気を求める。苦しい。


目がチカチカする。


かろうじて見えたものは、黒スーツが三人とも立ちあがっている姿。


――くそ、甘かった。

マンガとかと違って、タダの雑魚なわけがない。

やっぱり、ただの人間なわけがない。

――近づいてくる。


「…人と思って甘く見たよ。少年。腐っても、春夏秋冬、だな」


「だが、お終いだ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ