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助け家  作者: BCC
3/11

買い物

「なんで?…サクラちゃんは柊に厳しいの?」


と、目の前の千春が話しかけてきた。


「……」

答える義理は無いかのように、…黙る。


すると、ため息をはき、こう言ってきた。


「怖いのね?」


「…」


「人を信じることが、ね?」


「…そんなことない」


つよがりだ。…つよがりだ。わたしは、わたしは…


「…あの子は、なんというか。不思議でしょう?

なぜか心をゆるしてしまいそうになるでしょう?

頼りなさげなのに、頼ってしまいそうになる。ふふっ、おかしいわよね?」


 …その通りだった。なぜ?と聞かれても分からない。…理解できない。


「サクラちゃんが、いきなりパンチしたのだって、あの子の目を見たからでしょう?」


……そう、何よりも、瞳。あの瞳は―――。


「あなたが、見てきた人間(ひと)とは違うでしょ?

あの子はね。私たちの自慢の息子だからね♪」


「…ただの親ばか、じゃない。」


と言いつつ、…きっと今の自分は微かにだろうけど笑っているんだろうな

、と思った。




--------------------------------------------------------------



 ――――やっちまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああーーーーーー。


俺、もうだめにゃ。ああ、親父の声が聞こえる。


『よくも、かあさんを無視したな…。さらには、(サクラ)ちゃんにまで…

あんな口のきき方をしやがって、…覚悟はできてるだろうな』


ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。


ああ、親父にされることがありありと思い浮かぶ。

きっと、また親父にボコボコにされるんだろうなぁ。

と、遠い顔になる、俺。


でも、あの子のあの態度は…誰だってカチン、とくるだろ?

…いくら可愛いからって、許されるものじゃない。


てか、それ以前に親父、…あんまり家になんでもかんでも連れてくるなよ。

この前は、なんか犬っぽいやつだった。その前は、鳥だとか、言ってたけど、

どう見てもただの鳥じゃありませんでしたから!

さらに、その前には妙に懐かない猫だとか、とにかく、よくもまぁ、いろいろと持って帰ってくるわ。


…なんか、腹たってきた。もういい、寝よ。


トントン。


「柊。明日、十一時には買い物に行くからね~」


……なんか、ものすごく勝手なこと言ってるし。


「ちゃんと、起きるのよ~」


…いかねぇよ。


「サクラちゃん、…可愛いから何があるか分からないなぁ~」


……………。


「お兄ちゃんでしょ?守ってあげないと、ね?」


「それじゃあ、よろしくね~」


………、何も言ってないぞ。俺は。

…べ、別にあいつのことなんか気にならねぇよ。



---------------------------------------------------------



翌日。

十一時三十八分。

とあるデパート。


買い物にきた、俺。


…もちろん、一人ですとも。


あいつのことなんか、気にならないし。

いきなり、妹とか言われてもわけわかんないし。

……なんか、周りの人に不審な目で見られてるし。


え?そんなに変ですか?おかしいですか?そうですよね。


だって、男が一人、いわゆるランジェリーショップの方を向いているんですからね。


いやいや、べつに一緒に買い物に来てるわけじゃないし。

あれ?それだと俺なんか変態じゃない?男一人で女性の下着店を凝視って…。

あ、やべ俺、なんか泣きそ。素直についていけばよかった。



~~回想~~


午前十一時。俺、ベッドの中。

トントン。

「じゃあ、行ってくるわよ~」

…勝手に行けばいいさ。

「ちゃんと後から来なさいよ~」……行かないっての。

…行かないよ。


―――十分後。

バタバタ、がちゃん。

「ふぅ~、いい天気だな。さて、本を買いに行くかぁ。…言っとくけど、別に尾行するわけじゃねぇし。心配でもないし。…たまたま、だし?」



――で、今に至る。


つか、あの子は…あんな顔もするんだなぁ。

少し申し訳なさそうな顔。ほんの少しだけどぎこちない笑顔。困っている顔。


……やっぱり、しゃべりさえしなければ可愛いな。服装は昨日と同じだな。

外見だけは、確かに、…可愛いな。

とか思ったりしたが、俺への態度が最悪だから…ね?



 俺が怪しい動きをしている間に、母さんとあの女の子(いまだに妹とは認めていない)は昼ごはんを食べるためにファーストフード店が立ち並ぶ所に来た。

 よかったぁ。朝も俺は食ってないからな。早く飯にしよう~。

 二人は某ハンバーガー店に入って行った。


…同じ店はまずいな。よし、向かいの店の方にしよう、と思ったが

こっちの店は高ぇぇぇ!なんだ、この値段は…。

え?オムライスが2500円って、たかすぎだろ!

カレー3000円って、どんだけ、おいしんだよ!


 …無理だ。しかし、他の店も…無理だ。だって、あきらかに並んでるもん(涙)。

し、仕方ない。ここは、危険を承知で同じ店に行くしかない。

お、男にはやらねばならないときがあるのだよ!いざ!



 

「いっぱい、買ったわねぇ~。ねぇ、サクラちゃん?」

と、…千春が満面の笑顔で話しかけてくる。


 わたしは、ためいきをつきながら、一言もらした。

「…疲れた」


「それにしても、…柊は何してるのかしら?」


「?…家にいるんじゃないの」

と言うと、千春が驚いた顔をして


「え?サクラちゃん気づいてなかったの?」


「?」


「…ずっ~と、ついてきてたわよ♪」


「………変態」


全然、気付かなかった。…きっと、わたしは…鈍っているんだ…。

そんな考えを打ち消すように、千春がこう言った。


「あの子、素直じゃないからねぇ~」

と言って、にこにこ笑いながら、わたしの後ろの方に視線を向けている。


 それよりもずっと聞きたいことがわたしにはあった。


「……どうして、…どうして…わ、わたしに優しくするの?」


すると、千春はきょとんとした顔でこう言った。


「家族だからよ」


それは…とても暖かい笑顔だった。


「で、でもこないだのニュースであってたように、

…あ、あいつらはもう他人を巻き込むことになんとも思ってない…。だ…から」


「関係ないわ」


――わたしの前から力強い声が聞こえた。

――その声はその瞳は、…有無を言わさないものだった。


もしかしたら、

わたしは、この人たちに

――――を求めてもいいのかもしれない。

そう思った。



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