紹介と夕飯
俺の毎日はやっと高校生活にも慣れてきて、
退屈な日常といえるようになっていた。
時々、退屈ではなくなるが、それでも学校が楽しいとは思えなかった。
ただ、将来の為。
みんな行っているから。
いい大学にいく。
いい職に就くためだとか。
…くだらない。
一応進学校に通っているが、
まぁ、そこそこ学力のある高校だ。
まぁ、それはおいといて。
俺の名前は 春夏秋冬 柊真。歳は16。身長172㎝。
体重56㎏。血液型O型。
成績は中。運動神経は、至って普通。
親父が 春夏秋冬 望。
母さんが 春夏秋冬 千春。
んで新しく、妹?が加わった。
春夏秋冬 サクラ。
まぁ、他にも姉とかがいるんだけどね。
親父はよく出張で家にはまったくいない。
なんでも世界をまわっているそうだ。
…仕事は上手く言えないが、本人曰く「ヒーローだ!!」とのこと。
まぁ、いいや。親父のことは。
大抵の家庭では父親は邪険に扱われるものさ。
母さんは専業主婦だ。自分で言うのもなんだが、若くて綺麗だ。
確か、高三のときに学生結婚だそうだ。
何考えてんだか。
まぁ、こんな感じが俺の家庭だ。
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意識が覚醒する。
…顔が痛い。
何だ?さっきまでのやり取りは夢か。
そうだよな、俺にいきなり妹なんて…
…リビングから母さんの笑い声が聞こえる。
仕方なく、気だるい体を起こし、リビングに向かう。
……頬をつねる。
…夢じゃない。
いる。存在する。
母さんと無愛想ながら話している。
「あら、起きてきたの?」
母さんが語りかけてくる。
その正面、あからさまに嫌そうな顔をする少女が一人。
「これが本当にあなたたちの息子なの?普通の―――じゃない」
…相変わらず、容赦ないな。後半は聞き取れなかった。
「そうよ。ね?柊?」
それは、いちいち確認することなのかな?
「そうだ。何か文句あるのかよ?
つか、なんでいきなりパンチなんだよ!」
「ある」
この野郎、即答しやがった。いや、野郎じゃないが、女の子だし
可愛いが…って、だまされるな俺。
「何だよ?言ってみろ」
「きしょい」
……まて、まて、まて。落ち着け、俺。可愛い声にだまされるな。
きっと、聞き間違いだ。会って数分しかたっていない女の子に
こんなこと言われるわけがない。
あれ、でも気を失ってたkら…って、今はどうでもいい。
現実逃避するな、俺。がんばれ、俺。
「…聞き間違えたみたいだ。すまんが、もう1度言ってください」
なぜか、下手に出てしまう。
「きしょい」
…会心の一撃。
俺は膝から崩れ落ちた。
急所にあたった。俺の精神に185のダメージ。
って、どん位のダメージやねん。
って、独りつっこみとか、しちまったぁぁ。
コホン。
「…どこが?」
なるべく、平静な声で聞く。
だが、体勢は床に手を着いている状態だ。
その間にも俺の脳内では顔か?顔なのか?と囁き合う。
ところが、このサクラとかいう妹はこう言ったのだ。
「存在」
…もう、俺生きていくのやめようかな。
「この子、ツンデレなのよ」
と母さんがクスクス笑いながら言った。
……母さん、なぜにツンデレを…知っているのだぁぁ。
てか、この子ツンデレ!?
いやいや、そんな漫画やゲームやアニメじゃないんだから
デレそうにないよ!この子。
っていうか、リアルにいてもむかつくだけなんですけど!
あれ?でもいつか友達が可愛ければ…許されるって言ってたな。
母さんは突然に、こう言ってきた。
「はじめは、ツンツン、後からでれでれ」
なぜーーーーーーーー、そ、そこまで知ってるんだぁぁぁぁ。
おかげで、床に手を着いてる状態が続くわ!
「なんで?誰だよ!母さんにそんなこと教えたやつは!」
と言って、サクラと名乗った少女の正面の椅子に座ろうとして
「もちろん、父さんよ」
と言われ、ずり落ちる。
あの、クソ親父~~~。みてろよ。いつかコテンパンにしてやる。
ってか、このサクラという子に嫌われていることには変わりねぇじゃん。
と思いながらも椅子に腰掛ける。
目の前の少女はツンデレの意味が分からないらしく、
?マークを頭に掲げている。
くそっ、可愛いな、ちくしょう!
「とりあえず、晩御飯にしましょう」
といって、母さんがキッチンから料理を運んでくる。
俺も席を立ち、準備を手伝う。
…今日はかなり豪勢だ。
「そういえば、親父は?」
と首をきょろきょろさせて聞く。
「また、緊急の仕事が入ったみたいで飛んでちゃった」
はぁ~、またかよ。親父は本当に神出鬼没だ。
ガタン、と大きな音がリビングから聞こえてきた。
顔を出して覗いてみると、
テレビを前にして固まっている少女が一人。
「何してんの?」
といって、近づくと
「…あんたには関係ない」
ばっさり、切られた。だけど、声が少しだけ悲しそうと感じた。
まぁ、気のせいだろうけどな。
ちらっと、テレビを見てみると
一週間前の外国での謎の爆発事件のニュースのようだった。
死者も結構出ている大きな事件だった。
どこで、いつ、見知らぬ誰が、死のうがまったく関係ない。
冷たいと思うか?違うね。
だって、人はみんな、
『ああ、かわいそうに』だとか『ひどいね』とか、つぶやいて終わり。
それどころか興味がないという人だっている。
大人なんて大抵がそうだ。
約束を守りましょう、なんて言うくせに自分たちは守らない。
それで、子供たちに約束は大切なものです。
守りましょうなんて、虫が良すぎる話だ。
…信用できる奴なんて、少ないもんだ。
まぁ、こんなくだらないことは考えずに、飯にしよう。
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この少女が意外にお箸の使い方が上手いことに驚いた。
「醤油とって」
「…」
…完全無視かよ。
「はい」
結局、母さんが取ってくれたが、
なんでこんなに嫌われているのか、まったく分からない。
当の本人は、母さんの手料理を無表情で食べている。
…ように見える。なんだ?この表情を変えるのを我慢している姿は…。
……ついに、我慢しきれてないし。表情ころころ変わってるし。
味噌汁をおいしそうに、
卵豆腐をおどろくように、
刺身を不味そうに、
しかし、本人はおいしそうにも、
まずそうにも、嫌そうにも、しないで―。
という、つもりなんだろうが…。
……可愛いな。なんていうっか、萌え?みたいな。
だけど、俺は表情に関して何も言わない。
ただ、そもそも、なんで俺のことが嫌いなのか考えてみる。
…………………まったく分からない。
会ったときから、なんか嫌われていたみたいだし。
どっかで会ったとか?いや、それは無いな。
これだけ印象的なら忘れるはずがない。
…もしかして、親父か母さんがなんか言ったのか?
いや、その可能性は…親父だけだな。
いや、むしろそう考えたら、犯人は親父しかないな。
俺がくだらない考えを巡らしている間にも、
母さんがこのサクラという子に話しかけている。
「おいしい?」
だとか、
「これは自信作なの」
とか、
「日本はどう?」
とか、
…?
「やっぱり外国からきたのか?」
……はい、無視。
「そうよ~。どこだったかしら?…忘れたわ。
だけど遠い遠い所から来たらしいわよ?」
代わりに母さんが答えてくれる。
「…何?それ?」
「別にそんなことはどうでもいいじゃないの」
「いや、…よくないん」
「どうでもいい」
俺が言い終わらないうちに、…言われた。
「それはそうとして、明日はサクラちゃんのお洋服を買いにいきましょう」
「……」
こいつ、何の反応もしないぞ。てか、照れてないか?
まぁ、俺には関係ないことで
「いってらっしゃ~い」
「なに?言ってるの?柊も付いてくるのよ?」
「…は?なんで?」
「だって、お兄ちゃんじゃないの」
………なに、これ?え?世の中のお兄様はみんな妹(まだ認めてねぇよ)の
買い物に付き合うのでしょうか?
「まずは下着から始めてぇ~、いろいろ買わないといけないわね」
え?っちょ?なんか、俺がついていくのは決定事項ですか!
…無理だ、こんな母さんは止められない。
「いらない」
ところが、このサクラという子は拒否!
さっきまで何も言わなかったのに。
「母さん、洋服いらないって。どうすんの?」
「ちがう」
…?
「いらないのは、あんた」
………………………さすがに、…………切れていいですか?
「…なんなのお前、さっきから?俺がいったい何した?いいかげんにしろよ!
いきなり死ねだとか、きしょいだとか!」
「…うるさい、あっちいけ」
何だ?…こいつ、何なんだ?理解できない。
…もう、……どうでもいい。
「もう、いい。…母さん、こいつとは仲良くやっていけねぇよ」
それだけを言うと、俺は席を立って歩いていく。
自分の部屋へ着くまで、…母さんの俺を止める声が聞こえていた。