第48話 嘆きの殺戮騎
※フィルド視点です。
【レーフェンス州 アレイシア支部周辺】
私は闇夜の森を駆け抜ける。進む方向に巨大な魔物がいる。マンドラゴラだろう。邪魔な魔物だ。
パトラーの元に行かないワケ、か。あのクローンのいうことも分かる。アイツと、パトラーと、私が手を組めば、パトフォーを倒せるかも知れない。
私は大きくジャンプすると、口を開けるマンドラゴラの頭部に手をかざす。もう、何千回もこうやってきた。
マンドラゴラの頭部は横にスッパリと斬れる。切り口を踏み台にし、更に空高く飛ぶ。こうやって、大勢の連合政府の軍人・幹部や傭兵、賞金稼ぎを殺してきた。
私はもう、殺した人間の数を数えられない。何千という人々を殺している。コメットやティワードに劣らぬ残虐な殺人鬼だ。
*
私は森の中の崖っぷちで座り込む。大きな月が出ていた。私はそれをぼんやりと眺める。パトラーは光とすれば、私は闇だろうか。
パトラーとは2年前、共に戦った。今の連合政府を構成するメイン組織「財閥連合」。その組織を追い詰め、あと一歩で倒せそうだった。
EF2010年の12月。アレイシア支部からはるか遠くの大陸北西部に位置するオーロラ支部。そこで強大な組織の息の根を止めるハズだった。なのに、――。
私は唇を強く噛み締める。なぜ、こうなった――。そう問わずにはいられない。ラグナロク大戦と呼ばれる狂気に満ちた世界大戦が始まった。世界中でほぼ毎日、狂乱の戦争が繰り広げられている。
すでに何百万人もの人間が死んでいった。それでも、戦争は終わらない。激化の一途を辿る。このままでは、いずれ世界は滅ぶ。
私はそっと目を閉じる。
落ち着いて寝ることもままならない。何度も寝ているときに襲われた。その度に襲った人間は皆殺しにしたが……。
傭兵や賞金稼ぎが無数に暗躍している。この中には戦争前は平和に暮らしていた人もいただろう。仕方なしに他人を襲っている人もいる。
国際政府の腐敗はますます進んでいる。腐敗した元老院は難民への救済をできずにいる。それが、戦争の被害拡大を推し進めている。
なぜ助けないのか? 簡単だ。助けても、利益にならないからだ。助けて利益のあるヤツは助ける。ないヤツは捨てられる。命は、平等ではない――。
パトラーは昔ほどではなくなったが、それでも優しい女だ。私とは真逆だな。私は感情的で、次々と人の命を奪ってしまう。
私だってパトラーに会いたい。だが、彼女と私は違う。もはや、相反する存在。彼女は、殺戮騎となった私を、どう見るだろう? 拒絶するだろうか?
私がパトラーに合わない理由は簡単だ。人殺しの私は、優しい彼女に拒絶されるのが、怖いんだ。
もし、拒絶されたら、私の心はどう動くのだろうか? やはり、乱れ狂って壊れるのだろうか――……?
【フィルド=ネスト】
クローンのベースとなった女性。元々は国際政府の軍人だった。EF2010年12月、オーロラ支部の戦いで連合軍に捕らえられ、実験台にされてしまう。その後、EF2011年10月、連合政府の施設から脱出し、傭兵となる。
※各章の冒頭は、いずれもフィルドの視点です。




