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黒い夢と白い夢Ⅱ ――動乱の人心――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第9章 動揺の人心 ――ポート本部――
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第45話 パトフォーの正体

※パトラー視点です。

 それはコメットが私の手を取って立ち上がった時だった。部屋が急に暗くなる。真っ暗な部屋。私はぎゅっとコメットの手を握る。


「これは……?」

「わ、私にも……」


 コメットがそう言った時だった。いきなり強い風が吹き荒れ、私は吹き飛ばされる。だが、手は放さなかった。しっかりとコメットの手を握っていた。

 風はますます強くなり、私とコメットは空中に吹き上げられる。クッ、なに、これ……!?


「あぐっ!」


 コメットの声。その瞬間、私の身体は地面に落ちる。まだ、コメットの手は握っていた。でも、なんだか変な感じがする……。


「コメット、大丈夫か!?」


 私はそう言いながら、立ち上がる。そのとき、私はようやくコメットの異変に気付いた。彼女の手は握ったまま。だが、それは異様に重かった。――彼女は腕だけとなっていた。肩から先がなくなっていた。


「コメット!? コメット!?」

「痛い、痛いっ! 離しなさい! このクソ女!」


 クソ女? 私とコメット以外に女性はないハズだぞ!? そんなことを思っている内に、コメットの声は聞こえなくなり、風も止まる。

 やがて、部屋が明るくなった。広い女王の部屋。だが、その主はいなかった。部屋の至る所に赤い鮮血だけを残して消えていた。

 ……鋭い刃を持つ血まみれのブーメランが残っていた。そうか、“アイツ”の仕業だ。連合軍七将軍ケイレイト。風を巻き起こし、ブーメランを操る女。


「急げ! ポート本部を封鎖しろ!」

「イエッサー!」


 ホーガム将軍がすぐに兵士たちに指令を出す。……見つからないだろうな。まだ戦闘は続いている。この戦闘のどさくさに紛れて逃げ出す。私はなんとなくそう思った。

 ケイレイトは最初からここにいたんだ。ティワードの命令で、だろうか? それとも――。





 2時間後。ポート本部は完全に制圧された。まだ戦っていた将校たちは自分の部隊を率いて全員降伏。ビリオンの幹部たちもまた降伏した。

 だが、コメットとケイレイトは見つからなかった。2人はポート本部から消え去ってしまった。


「……パトフォーってなんだろうな?」


 バシメア将軍が言う。彼もさっきの私とコメットの会話を聞いていた。


「裏で連合政府を操っているヤツだったな」


 私の側にいたクリスト将軍が言う。そう、連合政府の真の支配者にして、国際政府総統マグフェルトと同一人物の可能性が高い男……。


「パトフォーはなぜ黒幕でいるのかワケが分かんねぇな。この調子だと国際政府が滅んだ時、トップとして市民に受け入れられるのはティワードだろうに」

「…………。……バシメア将軍、ちょっといいですか?」


 ジェルクス将軍は少し迷いつつ、辺りを見回してから小さな声で言った。


「この戦争で一番利益を得ているのは誰だと思います……?」

「……財閥連合社? 政府・連合にカネを貸してるからな。莫大な利子つきで」

「いいえ、違います」

「クリスト、誰だと思う?」

「……ビリオン? たった今、滅んだがな」

「違います」


 ジェルクス将軍がそう言っている間に、ホーガム将軍は最高司令室にいた兵士たちを部屋から立ち退かせる。


「簡単ですよ。我ら国際政府のマグフェルト総統です」

「…………!?」

「彼は戦争を利用して権力を高めました。恐らく、パトフォーとマグフェルトは同一人物です。連合政府と戦争は自身の権力を高めるだけの道具」


 バシメア将軍とクリスト将軍はジェルクス将軍の衝撃的なセリフに目を見張って驚く。そりゃ、そうだろうな……。


「な、なんて野郎だ! アイツの命令で俺やクリストは死ぬ思いで戦ってるのに、アイツの仕業だっていうのか! クソッ、許せん!」


 バシメア将軍は拳を握り締める。


「まだこれは予測です。本当に彼がパトフォーなら、わたしたちは全力を挙げて討たねばなりませんが。それと、これはわたしとホーガム将軍しか知りません。絶対に他の人に漏らさぬよう……」

「待ってください。私も以前、ピューリタン将軍から同じことを聞かされました」

「えっ?」


 私は政府特殊軍将軍のピューリタンから聞かされたことをみんなに話す(そういえば最近、ピューリタンと会ってないな……)。

 マグフェルトとパトフォーが同一人物という予測を立てているのは私とピューリタン、それに政府特殊軍のクォット将軍、スロイディア将軍、ディンター将軍だった。


「クォット将軍やスロイディア将軍も同じ意見とは……」

「しかし、彼の権力はもはや強大です。元老院議会ですら止めることは難しいでしょう。下手に動けば、国家反逆者として処刑されかねませんからな。難しい状況です」

「他の皆さんとよく話し合ってゆっくりと動くしかないですな」


 ホーガム将軍の言葉に私たちは頷く。マグフェルトの権力はもはやかなり強大なモノになっている。機能しない政府元老院の支配者はマグフェルト。民主国家であったハズの国際政府は、今や独裁化が進んでいた……。

 この時、1ヶ月前、コマンダー・アレイシアが言ったことが蘇る。独裁化の進んだ国際政府。人を幸せには出来ない――。

※クォット将軍やディンター将軍は前作(=「夢Ⅰ」)に登場しています。


※財閥連合=大企業の1つ。戦争では中立を表明し、連合政府・国際政府と取引を行っているが、実際には連合政府を構成するメイン組織。ビリオンもこの財閥連合の傘下組織。


※ピューリタン将軍は第1章で勝手にアヴァナプタとパトラーの人質交換を行った為、首都で3ヶ月の謹慎処分となりました。

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