第38話 勇将ジェルクス
※前半はバシメア視点です。
※後半はジェルクス視点です。
クソッ、やたら手薄だと思ったら“こういうこと”、か。俺たちはコメットの野郎に上手いこと嵌められたんだ。
「バシメア将軍。軍艦の艦隊に退路を封鎖されています!」
「指揮官は? 数は?」
全く、忌々しいヤツらめ。俺は最高司令室の大窓から闇夜に浮かぶ軍艦の艦隊を睨みつけていた。オメガ級プラズマ=キャノンに巻き込まれるのが怖いらしく、攻め込んでこない。
その代わりに小型の戦闘機バトル=スカイばかりが飛んでくる。バトル=スカイは球状の機体をしていた。攻撃は機体左右に取り付けられたマシンガンで行う。
「バシメア将軍、敵指揮官はアヴァナプタとプロパネの七将軍2名です! 副将にコマンダー・アレイシア、コマンダー・フィルスト、コマンダー・クナの3名!」
ふむ、七将軍のアヴァナプタとプロパネ。クローンのキャプテン・フィルドとフィルストとクナか。実力的には九騎とさほど変わりないのだが……。そういえば、5人とも空戦は得意じゃないな。
「おい、クリスト。聞こえてるか? つか、生きてるか?」
[もちろん、生きてるゼ。お前の方こそ死んだのかと思ってたわ]
「艦隊に突っ込むぞ」
[あの5人は空戦は不得意分野だからな]
「言わなくても分かったか。んじゃ」
[レッツゴー]
俺は部下に命令を下す。軍艦の艦隊に突っ込めばコメットはプラズマ=キャノンを撃てない。まさか、都合よく我々だけに効くキャノンじゃなさそうだからな。
[バシメア将軍!]
「おお、ホーガム将軍どうなさった?」
[作戦を一部変える。先にわたしの軍とジェルクス将軍の軍がポート本部の着陸地点に向かう。2将軍は我々の飛空艦隊が兵を降ろしたらポート本部向かってくれ]
「つまり、軍を2つに分けるってことですかい?」
[そういうことだ]
そう言うとホーガムの姿は消える。なるほど、まずはジェルクスとホーガムが上陸。兵を降ろした2将軍の飛空艦隊は俺らと交代して、軍艦の相手をする。その間に今度は俺らが上陸する。
最初の作戦だと、上陸後は1隻の飛空艇をも逃がさないように山全域を監視だったが、そういう状況ではないから作戦を変えたようだ。
「バシメア将軍、敵の方が圧倒的に数が多いです。敵は軍艦60隻に司令艦3隻」
「エネルギーをシールドに注ぎ込め。我々はあくまで軍艦の艦隊に入り込めばよいのだ」
「イエッサー」
俺はチラリと外を見る。四方八方に軍艦が浮かんでいた。本艦を含め、ほとんどの中型飛空艇が軍艦の艦隊に割り込んでいた。
オメガ級プラズマ=キャノンはそろそろ充電完了だろうが撃てはしないな。撃った瞬間、味方の多数の軍艦を巻き込みかねない。連合軍の軍艦は脆い。プラズマ=キャノンだけで墜落するだろう。コメットめ、今頃悔しがっているだろうな。
俺は少しだけニヤリと笑う。その瞬間、機体は大きく揺れる。軍艦の艦隊が一斉に攻撃を始めたのだろう。
「出来る限り全てのエネルギーをシールドに回せ! 時間稼ぎだ! じっくりいけば勝機はある!」
「イエッサー!」
◆◇◆
【ポート本部 中層エリア】
何十隻もの白いガンシップが山の崖に開いた無数の“穴”に向かって飛んでいく。ポート本部は山の内部に造られている。小さな侵入口はたくさんあった。
ガンシップはわたしや兵士を降ろすと、再び中型飛空艇に戻っていく。何往復もして兵士を降ろすのだ。
「ジェルクス将軍、敵は圧倒的に数が多いです」
「作戦通り、AからEまでの大隊は工場へ向かい、工場を破壊しろ。これ以上、敵の数を増やしてはならん」
「イエッサー!」
厳しい戦いだった。ビリオンはロボット製造組織。連合軍の主戦力もロボットだった。敵の数は何百万と存在する。
だが、ここの戦いに勝利してビリオン・ポート本部を陥落させれば、それだけ大きい勝利を得る。この巨大工場を破壊すれば、彼らの戦力も大きく落ちる。
[攻撃セヨ!]
「ぐぇッ!」
「ぐぁぁッ!」
[破壊セヨ!]
施設内は無数のバトル=アルファやバトル=ベータで埋め尽くされていた。おびただしい数の銃弾が飛び交う。
私は天井の一部が崩れて降ってきたと思われる瓦礫に身を潜めながらアサルトライフルで敵の軍用兵器を撃っていく。
「凄い数です」
「うむ。だが、勝てばそれだけ大きな戦果となる!」
「あ、将軍!」
わたしは岩陰から飛び出す。6本脚をし、傘状の胴体から四方に砲身を伸ばすバトル=ガンマに素早く飛び乗ると、ハンドボムをその頭に転がす。それと同時に大きくジャンプし、ハンドガンでそのハンドボムを撃った。ハンドボムは爆発。内部にあったグレネードランチャーの弾にも爆発がお呼び、誘爆する。轟音と共に周りにいたバトル=アルファが数十体吹き飛ぶ。
[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]
わたしが着地したところは四方八方に敵がいる場所だった。素早く剣を引き抜くと、素早い動きでバトル=アルファやバトル=ベータを斬り倒す。
だが、彼らは次々と近づいてくる。わたしは激しい動きで斬り続ける。敵は数が多い。立ち止まっていたら撃ち殺される。狙いを定められないほどの速度で動かねばならない。
「撃て撃て撃て!」
「ジェルクス将軍を見殺すな!」
「急げ、急げ!」
わたしの動きに掻き立てられた部下たちは勇み、一気に攻め込んでくる。遠くで戦っていた部下たちも一斉に反撃する。
「将軍、無茶はなさらないでください!」
「なに、大丈夫だ。他の将軍に手柄を取られるなよ!」
「イエッサーっ!」
元気よく返事した部下はアサルトライフルでバトル=アルファを撃ち倒しながら進んでいく。これでいい。弱気になったらそこでおしまいだからな。もし、ここで先に攻め込んだ我が軍が逃げ腰だったら、後に続くバシメア軍やクリスト軍の兵士たちも逃げ腰になる。そうなったら敗北だ。
「一気に行くぞ! 敵はポンコツのロボットだ!」
わたしは部下を鼓舞し、士気を盛り立てながら、自分自身も突っ込んでいく。何度も銃弾がかすめる。危険なことは分かっているが、それでもやらねばならない。逃げてはいけない!




