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黒い夢と白い夢Ⅱ ――動乱の人心――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第9章 動揺の人心 ――ポート本部――
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第37話 オメガ級プラズマ=キャノンの脅威

※前半はパトラー視点です。

※中盤はコメット視点です。

※後半はパトラー視点です。

 歪んだ世界は悲劇をもたらす。


 悲劇は人の心を乱し、時には破壊する。


 壊れた心は歪みをもたらす。


 そして、歪みは悲劇を……。



 コメット。


 お前が“そうなって”しまったのは、


 やはりお前の過去になにかあったのだろうな――。




































 【商業都市ポートシティ 上空】


 私は中型飛空艇最高司令室の大窓から外を眺めていた。集まった政府軍の大艦隊。45隻もの中型飛空艇は夜の空を飛んでいく。

 今度こそビリオン・ポート本部へ侵攻するつもりだった。噂の新兵器。それを確かめる為にも。それが本当なら、量産技術を確立する前に止めないと大変なことになる。


「パトラー少将、部隊は集結しました。本艦もこれよりポート本部に侵攻します」

「うん。九騎・七将軍は各地に散らばってる。今が攻撃のチャンスだ!」

「イエッサー!」


 クロノスが元気よく返事をする。クリスト将軍、バシメア将軍、ジェルクス将軍、ホーガム将軍の4人の将軍と一緒に巨大なビリオン本部へと進軍する。

 飛空艇の大艦隊はポートシティから西進し、ポート山脈にあるポート本部を目指して飛んでいく。私たちを迎え撃つのは能無しの連合政府リーダーの1人にしてビリオンの総帥・コメットだろう。なんとしてでも彼女を捕まえるんだ!


[クリスト軍、準備オケー]

[バシメア軍、準備完了だ]

[ジェルクス軍も準備完了です]

「パトラー隊、準備完了」

[ホーガム軍、準備完了。全軍、目標地点へと進め!]


 総指揮官であるホーガム将軍は力強く言った。さぁ、いよいよだ。連合政府リーダーの1人を捕まえるんだ!



◆◇◆



 【ポート本部 最高司令室】


 私の元に何百体というバトル=アレス、バトル=アテナ、バトル=ニーケが集まってくる。全て戦闘指揮用の戦術ロボットだ。


「今、入ってきた情報によると政府軍は中型飛空艇45隻に140万の兵を率いてここを襲撃するつもり。あなたたちは早急に各配属場所に付きなさい」


 機械の戦術ロボット達は、何も言わずに私の話を聞く。部屋は彼らで埋め尽くされているのに、本当に静かだった。この前は8人の人間が入って来ただけでうるさかったのにね。


「敵の先鋒隊はコマンダー・アレイシアが1基だけ完成させた“メテオ級プラズマ=キャノン”で1人残らず皆殺しにするわ」


 コマンダー・アレイシアに造らせたオメガ級プラズマ=キャノン。その威力と効果は彼女と同じクローンを使って実験済みだった。あれが量産できるようになれば、私たちビリオンの敵はいなくなる。


「人間を皆殺しにする。それが私たちの使命。……行きなさい」


 ロボットの指揮官たちは私に敬礼すると、何も言わずに部屋から出て行く。その動きもキッチリした美しい動きだった。

 さて、バカラー少将と彼女に付き従う愚かな将軍どもを皆殺しにして上げる。楽しい、楽しい殺戮の時間……!



◆◇◆



 【ポート山 上空】


 暗闇に包まれたポート山脈。そこに45隻もの大艦隊が現れる。この山々の下には広大なビリオン・ポート本部が……


[クルトミー准将、かかれ!]

[イエッサー!]


 バシメア将軍の命令と共にクルトミー准将率いる6隻の中型飛空艇は一番大きな山、ポート山に近づく。……なんか変だ。これだけ近づいているのに、ポート本部からは何の攻撃もない。無数の砲台があったハズなのに。


「……軍艦やコア・シップは?」

「見当たりません」


 仮にもここにいるのはビリオンの総帥と連合政府リーダーの1人を兼任するコメット。防備が手薄すぎる。いくら九騎・七将軍がいないからといってこれはおかしい。――罠?

 私がそう思った時だった。ポート山の中腹の一点が光り始める。その光は一気に大きくなると、1発の光弾となり、山に近づいていた6隻の中型飛空艇艦隊を目がけて放たれた!


「おおっ!?」

「なんだアレは!?」


 光弾はスローペースで艦隊のほぼ真ん中まで到達すると、着弾せずにいきなり大きくなり、あっという間に6隻を激しく光り輝く球体の中に引きこんでしまった。僅かな間を置いて、その光球は勝手に消滅する。な、なにをしたんだ……?


「クルトミー准将! 異常はないか!?」

[パトラー少将、それがっ、シールドが完全に消されました! メイン・システムに異常発生! エネルギー低下! 本艦は近くに不時着します!!]


 たった1発の光弾でエネルギーのほとんどを失ったのか!? なんて効果だ。あんなものが量産されたら大変な――


「パトラー少将ッ!!」

「――えっ?」


 私は最高司令室の窓から“その光景”に戦慄する。ビリオンの本部要塞から突き出た無数のキャノン砲は一斉にシールドの消えた6隻の中型飛空艇に集中砲火を浴びせていた。

 ほとんどのエネルギーを失った6隻の飛空艇は何も抵抗できなかった。次々と集中砲火の餌食になり、バラバラに打ち砕かれていった。


[パ、パトラーしょ、助け、う、うわっ、わあぁ、ぁッ――!]


 クルトミー准将を乗せた中型飛空艇も例外ではなかった。彼の悲鳴が最高司令室に響き渡り、やがてそれも途絶えた。彼の飛空艇は炎に包まれ、墜落した。

 私は何も出来ずにただただぼんやりとその様子を眺めているしかなかった。僅か3分ほどで中型飛空艇6隻。クルトミー准将と1万人もの兵士が殺された。


[ぜ、全艦一時退避せよ!]


 ホーガム将軍の声にやっと我に返った私たちは慌てて中型飛空艇の向きを180度変え、慌ててプラズマ=キャノン砲から距離を取る。だが、後ろを向いた時、そこには想像だにしない光景が広がっていた。


「そんな――!」


 闇夜に浮かぶのは連合軍の軍艦の艦隊だった。何十隻もの軍艦は、私たちの退路を完全に立っていた――!

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