第36話 偽りの崩壊
※前半パトラー視点です。
※後半はライト視点です。
私はあまりのことで、サブマシンガンを落としそうになる。だが、その瞬間、私を遠巻きに囲んでいたバトル=アルファの軍勢が大きな爆撃音と共に吹き飛ばされる。
はっと空を見上げると、数機の白いガンシップが素早い動きで私の周りのバトル=アルファ軍団を駆逐していく。私もサブマシンガンを持ち直して、近づいてくる敵を撃っていく。
「ひ、ひぃ、もうやられたのか!」
プレイザは慌てて運搬艦に乗り込もうとする。だが、ガンシップはあっという間に降りてくると、残りの敵を倒し、プレイザに迫る。
彼は運搬艦に乗り込む直前で兵士たちに取り押さえられる。彼を護衛していた6体のバトル=パラディンもあっという間にやられていく。
プレイザを捕えた時、スピーダー・バイクに乗ったジェルクス将軍がやって来た。彼は私の前に素早く飛び降りる。
「パトラー少将、ホーガム将軍率いる援軍が到着。連合軍は敗走しました」
私は空を見上げる。新たに2隻の中型飛空艇が現れていた。そこから無数のガンシップや軍用兵器が飛んでくる。形勢逆転だ!
「ジェルクス将軍、プレイザを逮捕しました」
「うむ、さすがです、パトラー少将」
ジェルクス将軍は笑顔でそう言った。援軍の到着により、逆転しかけていた形勢は一気に私たちの方に傾いた。プレイザは逮捕され、連合軍の軍勢は壊滅した。小さな島で起きた戦いは私たちの勝利に終わった。
*
夜。戦闘の片づけを追え、駐屯基地の撤去も完了した。あとは中型飛空艇に乗り込めば出発できる。すでに乗り込むガンシップは用意済みだった。
ジェルクス将軍、お父さん、私、ホーガム将軍で乗り込む飛空艇は別々だった。行く場所も違う。だから、出発前に確かめておきたいことがあった。いや、これは確かめなきゃならないことだ。
4機のガンシップが用意された砂浜。そこで、ガンシップに乗り込む直前、私はその話を切り出した。
「ねぇ、お父さん……」
「どうした? パトラー」
「お母さんはなんで死んだの?」
「…………!」
プレイザの言ったことが頭に鮮明に残っていた。――“お前の母親は、殺されたんだよ”。あの言葉は真実なんだろうか……。
「こ、交通事故だが……? 急にどうしたんだ?」
「……本当?」
「もちろん……」
そう言うお父さんの声はどこか震えていた。今までずっと聞いてきた声と、少しだけ違った。私はそれを聞き落さなかった。
「ホーガム将軍、ジェルクス将軍、本当ですか?」
「…………」
2人は俯いたまま、答えなかった。冷たい風が吹き始める。本当は冷たくなかったのかも知れない。だってもう7月だからね。
「そっか……。ごめん、変なこと聞いて」
「…………」
「じゃ、私はもう行くから」
私はガンシップに乗る。機体の左右に取りつけられたプロペラが回り出し、機体が浮かぶ。
「――信じてるから」
私は最後、お父さんやジェルクス将軍の方を向いて言った。その言葉もまた震えていた。そして、そこに心はなかった。
ガンシップが中型飛空艇に近づいた時、急に視界がぼやける。熱い涙が、頬を伝って床に落ちていく。それはどうしても止めることが出来なかった。
お母さんは、殺されたんだ! なんで、誰が、何の為に!? なんで、みんなそれを隠している!? みんな私に17年半、ウソついてきたんだ! 私は、騙されてきたんだッ……!!
◆◇◆
わたしはがっくりとその場に座り込む。いつか、こんな日が来るとは思っていた。いつの日か、娘にバレる日が来るとは思っていたが……。
「あの、オイジュス政府代表代行……。今は、その、真実を言う時ではありません……」
ホーガム将軍が力ない声で言う。今は言う時じゃない。そう思って、とうとう17年もの歳月が過ぎてしまった。あの子は、17年間、わたしの言うウソ偽りを信じて過ごしてきた。そのツケがやってきたのだ。
「わたしは、ずっと娘をだまし続けてきた……」
「政府代表代行……」
俗にいう腐敗した元老院議員となんら変わりはない。ウソ偽りを並べ、妄言を吐きながら、実の娘に実の母親の死に関して、虚偽の事柄を言い続けてきた。
父親としての資格はない。最低の父親だ。でも、真実はあまりに酷すぎる。酷な真実だ。言わない方がよかった、と思うのだが……。
「ホープ=オイジュス将軍は、立派な方でした。まさに市民の希望でした……」
ホーガム将軍がポツリと言う。希望であったが為に殺された。愛した妻は、もういない。
「意思を継げなかった我らをお許しください、ホープ将軍……」
ジェルクス将軍は申し訳なさそうに言うと、ガンシップに乗り込んで去って行った。ホーガム将軍も同じように去って行く。わたしも重い足を引きずるようにして、ガンシップに乗った。
ホープは、わたしの妻はプレイザのような腐敗した元老院議員を厳しく取り締まっていた。元老院議員や官僚の不正や違反を見つけては関係者をことごとく逮捕していた。
だが、国際政府の腐敗は予想以上だった。彼女は自身が殺されるのを恐れ、常に気を配っていた。――にも関わらず……。
何度も刺され血まみれになった妻。“あの夜”のことは永遠に忘れないだろう――。




