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黒い夢と白い夢Ⅱ ――動乱の人心――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第8章 混沌の政府 ――小さな島――
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第34話 腐敗した元老院議員

※パトラー視点です。

 夜。私たちは再びメインテントに集まった。


「明日の10時に町長のホライディさんがお見えになるそうです」


 ジェルクス将軍が話し始める。プレイザはいかにも眠そうな顔で聞いていた。彼を護衛する親衛兵の方が話を聞いていそうだ。

 結局、明日の10時にここで話し合いを行うことになったらしい。町長のホライディさんとプレイザ議員の会合だ。おかしなことにならないように、私とお父さんとジェルクス将軍も参加する予定だ。


「ふん、このサフェルト第12選挙区選出の元老院議員としてなぜ地域活性化を妨害されなくてはならんのだ。全く、いまいましいヤツらめ」


 サフェルト海岸もこの島もサフェルト第12選挙区に区分される。彼はこの選挙区から選出された議員だった。今、2期務めたらしい。


「じゃ、わたしは寝るぞ。お前たちも下がれ!」

「はっ」


 私たちは彼に一礼してメインテントから去って行く。

 国際政府が世界の勝者になっても確かに市民の幸せは訪れないのかも知れない。国際政府の政治腐敗と賄賂・汚職の横行はもはや日常茶飯事。それらを排除することが出来ないでいる。政府元老院はもはや機能していないのかも知れない。


「パトラー、アレが政府元老院の縮図だ」


 私たちのテントに戻るとお父さんが不意に呟くように言った。お父さんも元老院議員だ。選出はグリード第79選挙区。名前ばかりの政府代表代行。実権はマグフェルト総統が握っている。


「オイジュス政府代表代行はマグフェルト総統のことはどう思いますかな?」


 ジェルクス将軍が急にマグフェルトについてお父さんに聞く。


「独裁者という言葉が似合ってますな」

「やはり……。わたしも軍人ですが、ある程度元老院議会の事は把握しています」


 市民でも賄賂と汚職が頻発している事を知っている。1980年代辺りから酷くなったらしい。2000年代になってからはもはや元老院は権力闘争の場とさえ、いわれるようになった。


「今は亡きホープ=オイジュス将軍も――」

「…………?」


 ホープ=オイジュス? 私のお母さんのことだよね?


「ジェルクス!」

「えっ、あっ、これは失礼」


 ジェルクス将軍は慌てたような素振りを見せる。え、えっ、なんで? お父さんも急にどうしたんだろう?

 私のお母さんは私が2歳の時に死んじゃった。もうすぐ18年前になるかな。交通事故だったらしい。子供を守ろうとして……。


「パトラー、ジェルクス将軍、明日も早いですからそろそろ寝ましょうか」

「そうだね」

「はい、政府代表代行」


 私たちはそれぞれの布団に入る。明日も早いからあまりのんびりしていられないな。プレイザが島民とこれ以上イザコザを起こさないといいけど……。

 それにしても、さっきのお父さんの態度は何か変だったな……。


「…………」





 翌日。駐屯基地のメインテントで町長ホライディとプレイザの間で話し合いが行われた。しかし、それは予想通りというか、なんというか……。


「ビリオンは連合政府の一角を担う組織。その組織の工場で造られるのはバトル=アルファ。殺戮のロボット製造に加担したくはありません」

「ビリオンの作るロボット全てがバトル=アルファではないぞ。お前はビリオンがバトル=アルファしか作らないとでも思っているのか?」

「例えバトル=アルファを作らなくても、ビリオンは連合政府の組織。その利益は連合政府の利益となります。そんなのに協力は出来ません」

「待て。ビリオンが得た利益はお前たちにも多少なり入ってくるのだ。悪い話ではなかろう」

「そうなっても、島外の人々は怨まれるでしょうね。ビリオンへ協力者として!」


 こんな調子で押し問答が続く。プレイザは何が何でもこの島にビリオンの工場を立てたいらしい。成功したらコメットから莫大な礼金でも入るのだろうか。

 話し合いも1時間ほどたった時、急にその流れは大きく変わる。ホライディは急に私の方を向いて言った。


「パトラー少将はどう思いますか?」

「えっ、私ですか?」


 いきなり話を振られた……。


「ホープ=オイジュス将軍の娘さんでしたね。あなたのお母さんは素晴らしいお方でした。かつては政治腐敗を終わらせる希望といわれたものです」


 へぇ、そうなんだ。いや、全然知らないんですけど……。お父さんはあまりお母さんのこと、話してくれないからな。


「我々島民の主張とこの政治家の主張、どっちが正しいと思いますか!?」

「え、えーっと……。私個人としては島民の方々の主張が正しいと思います……」


 そう言った時だった。プレイザは血相を変えて急に立ち上がり、私の胸倉を掴んで怒鳴った。


「あんたは軍人だろぉが! 勝手に口出すんじゃない!」


 自分の意見と真逆の意見を出され、相当気に障ったらしい。凄まじい剣幕で私を怒鳴りつける。こいつ、これでも元老院議員か。

 事態の展開に驚いたジェルクス将軍とお父さん、その他の兵士たちが私とプレイザを無理やり引き離し、なんとか彼をなだめようとする。


「ジェルクス、ライト! お前たちはどっちが正しいと思う!」


 なかなか怒りの収まらないプレイザはとうとうジェルクス将軍とお父さんに話を振る。しばらく2人は何も言わなかったが、覚悟を決めたかのように言いだした。


「我々も島民の主張が正しいかと……」

「ここにビリオンの工場を立てても、得するのはビリオンと連合政府だけです」

「な、なにっ!?」


 プレイザはますます怒りに顔を赤らめ、ワナワナと震える。だが、ここに賛同者はいない。兵士たちでさえ、彼の意見に反対だった。皆が彼に冷たい視線を向ける。


「覚えてろ!」


 彼は一言怒鳴るとメインテントから出て行った。これで交渉は決裂だな。ここに工場を立てるには住民の同意がいるが、それを得ることは不可能。彼の黒い夢もここまでだ。


「ありがとうございます、パトラー少将」

「あ、いえ、そんな私は……」

「あなた様に話を振って本当によかった。まだ国際政府にも希望はあるものですな」

「…………」


 希望、か……。国際政府がそこまで市民の支持を失っていることが、少しだけ寂しかった。……でも、“あれ”を見れば、そう思われても仕方がないのかも知れない。

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