第31話 クリストとバシメア
※前半はクリスト視点です。
無人の飛空艇はゴリアテ中将を乗せた旗艦の戦闘にやや突き出た最高司令室に激突し、それを粉々にする。それだけでなく、大きな司令艦を砕いていく。司令艦はあっけなく、炎に包まれ、地面へと落ちていった。
「よし、もういいゼ」
俺は二等辺三角形の小型戦闘機で空中を飛びながら、無線機でそう言った。それと共に、11隻の中型飛空艇が一気に飛んでくる。
そして、連合軍の艦隊が状況を理解しない内に俺は攻撃命令を下す。軍艦の艦隊は何がどうなっているのか全く理解していなかった。まぁ、機械の頭じゃ無理だな。
彼らがようやく反撃に出た時には6隻の軍艦が落とされ、残った艦隊もボロボロになっていた。だが、すでに時遅し。連合軍の艦隊は我が軍になす術なく、次々と破壊されていった。
「クリスト将軍、やりましたな!」
「ふん、朝飯前だゼ」
旗艦の最高司令室に戻った俺は正面の窓から戦場を眺めながら言った。ゴリアテはなかなか優秀な指揮官だったが、自分のことが分かっていなかった。連合軍は信頼がないことを知らなかった。それが幸いだった。もし、それさえ分かっていたら、こっちは打つ手がなかったなかもな。
「敵の封鎖艦隊は壊滅!」
「よし、グランドシティに全軍進撃しろ! ガンシップや戦闘機の準備に取り掛かれ!」
「イエッサー!」
俺の号令の下、艦隊は一斉にグランドシティへと進んでいく。グランドシティ上空では軍艦やコア・シップが何隻も浮かんでいた。彼らも状況が理解できていないらしい。我々が近づいてもさっぱり攻撃してこない。こりゃ、ゴリアテのヤツ、勝利報告を入れていたな。残念なヤツだ。
「かかれ!」
市内上空の奥深くに入った時、俺の軍は一斉に攻撃を始める。軍艦は次々とやられていく。連合軍は混乱を起こし、バラバラに戦い始める。
[こちら地上救援部隊。大半の敵を撃破。今頃になってようやく反撃を始めました]
「そうか、そうか。そりゃ楽しいな」
[さっきまで面白いように倒せてましたよ]
「その勢いでバシメアの野郎を助けてやれ」
[イエッサー!]
その将校は元気に返事をすると、通信を切る。救援部隊も上手くいってるようだな。これでバシメアは大丈夫だろう。これで貸し一。今度、奢ってもらおう。
◆◇◆
【グランドシティ 中央市内】
クッ……。ゴリアテは敵の策略にハマって殺されたようだな。さっき勝利報告を聞いたから油断していた。これでほとんどの戦力がやられた。
「フリゲート、ここは撤収するぞ」
プロヴィテンスが俺に近づいて来て言う。既に空中部隊を指揮していたアクセラはいち早くコア・シップで逃げ出したらしい。
「待てよ、せめてバシメアだけでも討ち取らねば戦果が何もないぞ!」
「もはや敗北。ここは逃げるべきだ」
「いいや、俺はバシメアを討たねば気がすまん。ゴリアテの敵討ちだ!」
俺はスピーダー・バイクに跨り、急発進させる。バシメアの居場所は既に特定済みだ。アイツだけでも討ち取らねば……!
しばらく戦火で燃え盛る市内を進んでいくと、大きな広場に出た。いたいた。バトル=アルファやバトル=ベータの残骸で出来た丘にいる男だ。あれがバシメアだ。
「おっ、ようやくフリゲートのご登場か。たった今、この辺りの“掃除”を終えたところだ」
「黙れ!」
俺は槍とよく似た武器である方天戟を握り、スピーダー・バイクを発信させると、赤い炎をバックにボロボロのマントを風になびかせるバシメアに突っ込んでいく。
彼の胸を一突きにしようと、鋭い先端で何度も攻撃する。だが、彼はそれを素早く何度も薙ぎ刀で受け止める。
「ははは、まだまだ甘いな」
「何をォ!」
俺は更に激しく攻撃するが、彼はどのように攻撃されてもことごとく防ぐ。そして、バシメアは薙ぎ刀を素早く振り上げ、目にも止まらぬ速さで振り落とす。
俺はそれを辛うじて受け止めるが、その途端、凄まじいほどに腕が痺れる。なんて怪力だ……! そう思っている内に彼の次の攻撃は始まっていた。俺の方天戟は弾き飛ばされる。その力もかなり強く、危うくスピーダー・バイクから落とされそうになる。
「クッ……!」
俺はたまらずに逃げ出す。確かにアレは鬼神だ。アレに匹敵する男があと3人もいるとは……!
バシメアは薙ぎ刀を握り、俺を追って来る。もはや生きた心地はしなかった。何度も背中のマントに彼の薙ぎ刀がかする。
その時、前方からバトル=アルファやバトル=ベータの大軍が現れた。彼らは一斉にバシメアに突っ込んでいく。彼もそこで止まって何度も群がる軍用兵器を斬りつけていく。
「急げ、フリゲート! もう限界だ!」
「す、すまん……!」
プロヴィテンスはまだ去っていなかった。彼の判断は正しかった。バシメアがあれほどの強さを誇るなんてな……!
俺とプロヴィテンスは彼が用意してくれた小型飛空艇にスピーダー・バイクを捨てて飛び乗る。俺たちが乗り込むと、小型飛空艇は素早い動きで市内を飛んでいく。俺はやっと落ち着いた。
「はぁはぁ、す、すまない……。プロヴィテンス」
「気にするな。俺は友を助けるという当然のことをしただけ……。それよりもバシメアとクリスト。恐ろしい敵になりそうだな」
プロヴィテンスはしみじみと呟く。俺も完全に同意するしかなかった。まさか、あんなに強い人間がいるとは……。




