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黒い夢と白い夢Ⅱ ――動乱の人心――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第6章 生命の平等 ――情報拠点コア・シップ――
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第27話 ラグナロク大戦

※コマンダー・アレイシア視点です。

 私はパトラーの手を引いて、高度を下げていくコア・シップ外装を走る。確か、こっちの方にガンシップ格納庫があったハズだ。

 ……あった! あの長方形をした穴はガンシップ格納庫の出入り口だ。私は彼女と共にその穴に飛び込む。格納庫内は何機ものガンシップが壁に叩き付けられ、壊れていた。


「ど、どれか使えるヤツはないか!?」


 私は山積みになったガンシップを見る。ほとんどが壊れている。炎を上げている機もあった。クソッ……!

 その時、パトラーが私の手を引いて走り出す。壊れたガンシップから飛び降り、二等辺三角形をした1人乗りの小型戦闘機に近づく。私の専用の戦闘機だ。


「使えそう……」

「でも、1人乗りだ」

「頑張れば2人は乗れる!」

「……そうだな!」


 私は少しだけ笑うとその小型戦闘機に乗り込む。素早くエンジンを稼動させ、出発準備する。愛用の機だから慣れたモノだ。


「行くぞ!」

「うん! 操縦は任せて!」


 パトラーは私の膝の上に乗ると、ガラスで出来たハッチを閉める。彼女は操作パネルに触れ、ジェット機を稼動させると、一気にコア・シップから飛び出した。

 後ろでコア・シップが山に墜落し、大きな爆音を立て粉々に砕け散る炎と煙に巻き込まれながらも、私とパトラーを乗せたスカイ・ファイターは空高く飛んでいく。脱出成功だ!

 沈みかけた黄金色の夕日が私たちを照らす。危なかった。これは本当に危なかった。私はほっと一息ついてぐったりと操縦席にもたれ掛る。


「……この近くにあるルクレスの郡都に行くね」

「ああ、そこなら連合の支配域だから政府軍に撃ち落されなさそうだな」

「連合政府の支配地でも、近くには政府軍の駐屯地がある。すぐに戻るからね」


 ……まぁ、そうなる、か。


「簡単に戻れるように手配しておくよ」


 私は小さな声で言った。

 パトラーを弟子にするにはまだ早い。いや、世界大戦が続く限りそんな時が来ることはないのかも知れない。


「戦争が終わったら、私たちは、クローンはどうなるんだろうな」

「…………?」


 私たちの命は1つの命として扱われない。戦争中は戦闘兵や軍用兵器・生物兵器の実験台としての価値がある。戦争が終わって、価値を失えば、どうなるのだろうか? 性奴隷にでもされるのだろうか……?


「連合政府が世界の勝者になったら、どうなるか分からない。でも、国際政府が勝者になったら、酷い目には合わせない。約束する」

「…………」


 ムリだな。国際政府には私やクローンを保護できない。連合政府と同じ扱いにされる。世界の奴隷にされる。

 それに、国際政府の支配者が連合政府真の支配者パトフォーなら、尚更だ。私たちは奴隷にされる。今よりも酷い扱いになるかも知れない。

 どちらが勝とうが希望はない。パトラーがいる国際政府が勝ったところで、私たちの暗く絶望の未来は変わらない。それが分かっていても……少しだけ希望が見えた気がした。


「……ありがとう」


 ラグナロク大戦。破滅の世界大戦。いつ頃からか、この世界大戦はそう呼ばれ出した。かつてないほどの死者を、すでに出している。それでも戦いは終わらない。激化の一途を辿る。

 人類史最後の大きな戦争は2000年前の『サキュバス大戦』だったという。その時は弓矢を使って争っていたらしい。今のような飛空艇もロボットもなかった。

 だが、2000年の間に発達を続けた科学技術。お互いがそれをフルに使って大規模な戦いを展開している。犠牲者も爆発的に増えている。


「クローンが生き残るには、クローンを認めてくれる人が世界の勝者になるか、クローン自身が勝者になるしかない」

「…………」

「もっといえば、この戦争を真に終わらせるには、両政府じゃ無理だ。両政府は市民に恨みを持たれ過ぎている。戦後世界、今度は市民が武器を取って大規模な反乱を起こす。再び世界大戦になる」


 終わりなき戦争。この世界大戦が終わっても戦争は終わらない。また、別の戦いがやってくる。……だから、ラグナロク大戦と呼ばれているのかも知れない。


「パトラー、お前が希望だと私は信じている」

「……私には、そんなこと無理だよ」

「…………」


 パトラーが無理ならこの世界に希望はない。私たちクローンにも。だから、何としてでも彼女には世界の覇者になって貰わねばならない。

 私はパトラーに酷なことを望んでいる。世界を救ってくれなんて無茶苦茶な注文を押し付けている。そんなことは分かっている。分かっているが……。


「世界を救う希望に……。揺れ動く人々の心を護ってやってくれ。その為なら、私はいくらでも力を貸す」

「……パトフォーを倒す手立ては?」

「まだ考えてない。でも、ゆっくり考えて、ゆっくりと動いて行こう。大きな、大きな問題だからな」


 パトフォーは強大な敵だ。簡単には倒せない。彼の計画はかなり進行している。それを止めるのは困難を極めるだろう。だから、慎重に、ゆっくりと動かなきゃならない。遅すぎず、早すぎずと言ったところか……。


「もうすぐ、ルクレスの郡都だな。また、会おう……」


 パトラーは少しの間、何も反応を示さなかった。だが、小さく頷いたのを、私は見逃さなかった。黄金色の太陽が沈み始めていた。ちょっと寂しいな。































 パトラーがラグナロク大戦を終わらせる時、恐らく私は生きてはいないだろう――。

 【サキュバス大戦】


 中央大陸全域を巻き込んだ大戦は、2000年前にも起きていた。2000年も昔、中央大陸はサキュバス帝国によって統治されていた。

 だが、あるとき帝国は暴政を始め、多くの人間とサキュバス族を苦しめた。やがて、人間とサキュバスは立ち上がり、帝国打倒を目指して反乱を起こした。

 反乱、帝国の崩壊、大陸の分割統治――。長き戦いの後、奴隷であった人間女性――スキピア=ファンタジア率いるファンタジア王国は、遂に中央大陸と統一を果たし、ファンタジア王国はファンタジア帝国として中央大陸の統治を始めた。

 ファンタジア帝国によって「国際政府」が創設され、ファンタジア帝政が終わりを告げるのは、それから200年後のことである。

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