第20話 戦闘準備
※パトラー視点です。
私が家の扉を開けようとした時、不意にその手が握られる。振り返ると、そこにはさっきの少年がそこにいた。
「お姉さん、行っちゃうんですか……?」
「…………」
私は扉を開け、雨が降り続ける外に出る。本当は私もこの村を助けたかった。でも、私一人じゃどうにもならない。一方、少年はまだ私の右手を握り、付いて来る。
「助けてっ……!」
「別におカネを払えば殺されることはない……ハズだ」
「一緒に、戦ってください! 明日おカネを払ったら、また来るかもしれない! その度におカネを出すのはイヤだッ!」
「…………」
「この村のおカネは大切なおカネなんです! 1年間、みんなで一生懸命作物を作って、それを売って生活してるんです! そのおカネがなくなったら、僕らは……!」
少年は涙声になりながら、後ろから私に抱き着いてくる。確かにこの地方の村々は農業で生計を立てているらしい。この少年も畑を耕すのを手伝っているのだろう。
「僕がお姉さんを雇っちゃダメですか? 僕がお姉さんを雇ってアイツらと戦っちゃダメですか!?」
「…………。……任せろ」
やっぱりこの村を見捨てるなんて出来なかった。私は特にプランもないまま、少年に返事をした。返事をしながら、この事態を打開する方法を考え出した。
「…………! ほ、本当ですかっ!?」
少年の顔が急に明るくなる。私は少年の頭に手を置きながら、笑みを返す。そのとき、私はあることを思いついた。
「そうだ、ちょっと手を貸してくれないかな?」
「手を?」
「ああ、そうだ。……さすがに私一人じゃキツイからさ、人を呼んで欲しいんだ」
*
翌日。前日とは変わって晴れ晴れとした青空が広がっていた。私とファイズ(昨日の少年)は村の若い人と共に防衛線を張っていた(ピエロと海賊の船長は朝日と共にやって来たが、即刻追い返した)。
「パトラー少将、村の出入り口はほとんど封鎖しましたーっ!」
「ご苦労っ!」
私は集まった村人を2手に分けた。1手は大工兼防衛部隊。まず、8つある村の出入り口を石や木で封鎖させる。その次に村を囲う石垣の内側に高い見張り台をいくつも立てさせた。ここに防衛部隊の一部を配置。主に石などを投げて攻撃させるつもりだ。
大工作業が終わった防衛部隊は木で作った即席の大きな盾を持って石垣の内側に配置。石や木を投げ、農作業に使う鍬などをも使って侵入を防がせる。
「戦闘部隊の訓練はどう?」
「まぁまぁ、ですかね」
私は広場で4列に並び、盾を持ち、木で作った槍を振り回す攻撃部隊の構成員を見る。彼らは石垣の外に配置し、近づいてくる海賊を倒す役目をさせる。
詳しい配置場所は石垣のすぐ外に森。木の上や草むらから攻撃させる。今はその為の訓練をさせていた。
この村にある武器はハンドガンが6丁にショットガンが16丁、ライフルが12丁。魔物を狩るときに使っているらしい。
私の武器はサブマシンガン2丁にハンドガン2丁、デュランダル1本、電磁ソード1本、魔法発生装置1本、ハンドボム6個だ。
これらの武器を戦闘員に持たせる一方で、槍や木刀でも戦えるように訓練していた。
「大丈夫ですかね……?」
「……戦うのは初めてか?」
「はい、わたしたちは今まで戦ったことがないので……」
「戦いは気持ちで負けたら勝てる戦いも勝てなくなる」
「正直、不安です」
「……数も勝っていれば、地理に詳しいのは圧倒的にお前たちの方だ。大丈夫だ」
戦闘員は52名。防衛員は68名。合計で120名の“警備軍”だ。海賊は40人ほどらしい。絶対に勝てる。気持ちで負けない限り。
それにしても意外だった。こんなに多くの村人が参加してくれるなんて思ってもいなかった。やはり、みんな守りたいモノがあるらしい。家族、作物、生活……。守りたいモノがあるならきっと強い。
「パトラー少将、見張りからの連絡で、海賊の1人がスピーダー・バイクに乗って飛空艇の方に戻ったと報告が!」
「そうか、そろそろ攻めて来るな。よし、みんなを急いでそれぞれの持ち場に向かわせろ!」
「了解!」
その若い男性は急いで走って行く。私は木で作った槍を握る。さて、いよいよだな。訓練時間は短い。たぶん、技術的には強くはなってないだろう。
素人を戦場に放り出したところですぐに劣勢になる。だから私は、魔法発生装置を使い、彼らに強力な物理シールドと(さすがに魔法は使わないだろうから、魔法シールドはかけてない)、物理攻撃力や速度を大幅に上昇させる強化魔法をかけておいた。これで戦いにはなるだろう。
「パトラー少将、行って参ります!」
「ああ、気をつけてね!」
「俺らの村を守ってみせますぜ!」
「頑張ってくれ」
技術的にはそんなに強くなれなくても、自信を付けさせることは出来たと思う。何事も、まずは気持ちが大事だ。
防御魔法と強化魔法がある以上、気持ちで負けなかったら、あの海賊程度、追い払うことは可能だろう。
やがて各小隊、配置に付いたとの報告が入った。攻撃部隊の偵察員によると、海賊たちも動き出しているらしい。いよいよだな。私は槍を握り締める。――その時だった。
「ふふふふっ。さすが、パトラー少将だね」
「…………!?」
後ろから、あのピエロの軽く不気味な声が聞こえてきた。




