第15話 パトラーの基本方針
【アレイシア支部 廊下】
爆音が鳴り響く――。
[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]
私はハンドボムを取り出し、それを前方にいるバトル=アルファたちに投げつける。また爆発。私は素早く右の通路に飛び込むと、近くの操作パネルに触れ、隔壁を閉じた。
隔壁を閉じると、赤いランプが灯り、けたたましく警報が鳴り響く狭い廊下を走り抜ける。走りながらサブマシンガンを取り出す。
[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]
[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]
私はそろそろ“いつもの方法”と言われても仕方がないような気がする作戦を取っていた。1人でアレイシア支部に乗り込み、今回は敵のトップを降伏させるつもりだった。
戦争になる前に、本格的な戦いになる前に相手を戦えなくする。もしくは戦力を半減させる。戦いを長くさせない。それが私の基本方針だった。
今回は敵の指揮官コマンダー・アレイシアを降伏させれば一番いい。でも、それが失敗した時は――
[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]
4足歩行をした人間型ロボットのバトル=ベータが現れる。両手にはマシンガンを付けている軍用兵器だ。
私はスタンロッド型の魔法発生装置を使い、自分自身に物理シールドを張っていく。これで銃弾を受けてもある程度は平気だ。
「邪魔だ!」
サブマシンガンから放たれる銃弾は無数のバトル=ベータを簡単に撃ち壊していく。連合軍の軍用兵器は基本的にもろいから楽に壊せる。
バトル=ベータの集団を突破し、私は階段を駆け上がっていく。階段の上から4体のバトル=アルファがアサルトライフルを使い、射撃してくる。
「どけぇッ!」
私はサブマシンガンを両手に握り、発砲する。無数の銃弾がバトル=アルファを撃ち倒していく。撃ち抜かれたバトル=アルファが倒れる前に蹴倒すと、そのまま最上階の廊下に出る。最高司令室まであと少しだ!
私は誰もいない薄暗い廊下を一気に全速力で駆け抜けていく。ぐずぐずしていたら敵に追いつかれる。階段から無数の敵がやって来ている!
私は最高司令室に通じる扉の横にあるスイッチを押す。すでにセキュリティシステムは解除してある。ロックすることは出来ない!
「…………!」
最高司令室には1人の女性がいた。コマンダー・アレイシア。ここの連合軍の総指揮官だ。アヴァナプタを捕まえ、私が人質になったときにいたクローンの少将。
「もう来たか。クナとフィルストには出会わなかったのか?」
「出会わないルートで来た」
「……見事」
コマンダー・アレイシアは1本の短い銀色の棒を取り出し、ボタンを押す。その瞬間、紅蓮の炎を纏った刃が出てくる。アレ、魔法ソードの一種だったんだ……!
私も名剣と呼ばれるデュランダルを引き抜く。白色の刃が立体映像投影台から放たれる蒼い光を反射する。
「降伏する気は、――」
「――ないな」
「……そうか」
私は片手で小さなブロック状の物を取り出すと、その中心にある赤いボタンを強く押した。その瞬間、コマンダー・アレイシアの後ろにある窓から爆発が起こる様子が見えた。
アレイシア支部の至る所から爆発が起こり、多くのバトル=アルファやバトル=ベータといった軍用兵器が吹き飛ぶ。建物は何度も揺れる。
「自爆装置か」
「今日は失敗した時のことも考えて来たんだ。軍艦や運搬艦がある所を中心にセットしてきたから、もうレーフェンスを奪うことは出来ない。侵略作戦は失敗だね!」
私は役目を果たした装置を捨て、両手でデュランダルを握り締める。あとは、少しでも時間が稼げればそれでいい。
「……お前の愚かな点は自分自身の価値に気がついていないところだな」
「私に価値があったら、陰でバカラーなんて言われない」
「バカラーと口にする奴は視野の狭い凡人だ」
「へぇ、そう」
私は煙が上がるアレイシア支部を映し出す立体映像投影台に飛び乗り、そこから火炎ソードを握り締めるコマンダー・アレイシアに飛びかかる。
デュランダルの刃と火炎ソードの刃が触れ合う。熱気が私の顔に漂ってくる。素早く彼女の剣から自身の剣を離し、大きく飛んで彼女の後ろからその身体を斬りつけようとする。
だが、コマンダー・アレイシアはさっと後ろを振り返り、私の剣を燃え盛る火炎ソードで防ぐ。力じゃやっぱり彼女の方が上かな……!
「クッ……!」
「フフフ、この日を楽しみにしていた」
力で押し切られる……! 私は後ろに飛び、彼女と距離を取る。もうこれ以上は後ろにいけない。この壁一面に広がる分厚い窓ガラスを叩き割らない限りは。
コマンダー・アレイシアが飛びかかってくる。再び剣を交える。私は彼女の剣を右に逸らそうとする。火炎ソードがガラスに触れる。強い熱を帯びた火炎ソードはガラスを粉々に砕き散る。冷たい風が吹きこんでくる。彼女と私は強い風を体に受けながらも何度も激しく撃ち合う。
「これは凄い。やるじゃないか……!」
「…………」
私は無言でもう一度、コマンダー・アレイシアを横から斬りつけようとするが、彼女はそれを避け、一瞬の隙を突いて私を左から強く蹴る。
「あっ、わっ!」
私の体は割れた窓ガラスから落ちそうになる。手をばたつかせ、なんとかバランスを取ろうとするが、コマンダー・アレイシアはそんな私のお腹を蹴り、空中に放り出してしまう。
デュランダルを握り締めたまま、私の体は遥か下のコンクリートの地面へと向かって真っ逆さまに落ちていく。いくら物理シールドを張っていてもこれは防ぎきれない。よくて重症。最悪の場合、死だ!
私はなんとか体勢を整え、ダメージを最小限にしようとする。だが、空中での身動きは難しく、なかなか動くことが出来ない。
「…………!」
私はつい目を見張る。なんとコマンダー・アレイシアが飛び出してきた。空中で衝撃弾を爆発させ、勢いよく私に近づいてくる。アイツ、死ぬ気か!?
「な、なにを!?」
彼女は勢いよく私に近づき、私の体を強く抱き締める。その瞬間、全身に激しい痺れが走る。電撃だろう。強い電撃を受けた私の意識は一瞬にして飛ぶ。
意識が消える直前、コマンダー・アレイシアが私たちの周りに強力なキャンセル・シールドを張っているのが見えた。ああ、そっか。また私は捕えられるのか……。




