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黒い夢と白い夢Ⅱ ――動乱の人心――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第4章 叛意の思考 ――アレイシア支部――
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第14話 コマンダー・アレイシアの予測

※コマンダー・アレイシア視点です。

 支配者は願う。


 支配に沈黙し、常に従えと。


 マグフェルトにとって、大戦より前の時代――架空の楽園は至福だっただろう。


 市民は思考せず、ただ彼の統治を賛美し続けた。


 そして、世界は崩壊し、終わりの見えない戦いの時代を迎えた。



 なぁ、マグフェルト。


 お前は人間にどうあって欲しいんだ?


 バトル=アルファと同じく何も考えず、ただ従い続ける存在であってほしいか?


 だとしたら、お前最高だよ。


 今も、人間は何も考えず、ただ「国際政府」と「連合政府」に分かれて一生懸命だ。



 マグフェルト、“お前の計画”は順調だな。


 でも、羊のように大人しい人間だけじゃない。


 中には、心に叛意を抱く人間だっている。


 私のように、な――































 【レーフェンス州 アレイシア支部要塞】


 レーフェンス州にあるアレイシア郡の軍用施設。私はそこに30万の軍勢を駐屯させ、北にあるレーフェンスシティを窺っていた。

 レーフェンス長官のガートナーも私が軍を集結させていることに気がつき、防衛ラインを張っている。何万という警備軍兵士がレーフェンスシティに集まっているらしい。


[コマンダー・アレイシア少将、各エリア異常はありません]

「よし、引き続き警戒を怠るな」


 やや大きめな人間型ロボット“バトル=アレス”は一礼して下がっていく。私は身体の痛みを堪えながら椅子から立ち上がる。

 暗い司令室。目の前にある机のような立体映像投影機からは不気味な蒼い光が放たれ続ける。写し出されるのはこのアレイシア支部要塞の立体映像だ。


[コマンダー・アレイシア少将、レーフェンスシティにやってきた政府軍の援軍ですが、指揮官はホーガム将軍とパトラー少将です]

「……そうか、下がれ」

[イエッサー]


 報告をしてきたバトル=アレスは部屋にある唯一の扉を開けて去って行く。クソッ、身体が痛い。思うように動かない。

 私は立体映像投影台の操作パネルに触れ、部下に連絡を入れる。アレイシア支部を映し出していた立体映像は切り替わり、1人の少年が映し出される。


「フィルスト少将、クナ少将と共にすぐに私の司令室に来てくれ」

[うん、分かった。すぐ行くよ]


 フィルストの姿は消える。私はふら付く脚で司令席に座る。ああ、クソ。マンドラゴラ峡谷での傷がなかなか癒えない。全身打撲で、骨が数本折れて色々ヤバかったらしい。

 しばらくすると、最高司令室の扉が開き、2人の男女が入ってくる。少女の方はクナ。少年の方はフィルスト。2人とも、赤茶色の髪の毛に同じ色の瞳をしていた。

 ……2人とも、私と同じくフィルドという女性をベースに造り出された人工の生命体――フィルド・クローンだった。


「敵の指揮官はガートナー、ホーガム、パトラーの3人だ。兵力は10万。我が軍の半数以下だ」

「じゃ、すぐに攻め込めば勝てそうですね!」


 フィルストが軽く言う。確かに私達連合軍は政府軍の2倍の兵力だ。即座に攻め込めばたぶん勝てるだろう。軍艦も10隻ある。あちらは確か中型飛空艇5隻しかない。


「ただ、パトラーが難敵だ」

「パトラー? あの失敗魔が? 私が行って暗殺してこよっか?」


 クナが言う。彼女は魔法を操る点に置いては連合軍トップクラスの実力を誇る。動きも素早い事からそれも可能だろうが、警備が厳重なレーフェンス城には入れないだろう。たぶん失敗する。


「私の予測では、パトラーは1人でここに乗り込んでくるだろう」

「1人で!?」

「そうだ。彼女の今までの戦闘データからそうする確率は高い」

「……僕らの命を取る為ですか?」


 フィルストは怯えたような表情で言う。彼は少し気が弱い。オリジナルもクナも私も気は強い方なんだが……。


「いや、殺しに来るというよりかは降伏させに来る方だな」

「降伏? 私たちが降伏なんてあり得ないでしょ」

「そうだ。だから、逆に彼女を捕えるんだ」

「パトラーを?」


 クナの問いに私は無言で頷く。正直、レーフェンスシティよりもパトラーの方が欲しかった。アイツはゆくゆくは大きな人間になる。


「クナ、フィルスト、これは命令だ。パトラーを殺さずに捕えよ」

「分かりました」

「……イエッサー」


 フィルストは素直に返事を返すが、クナはどこか不満げに返事をした。彼女はパトラーを殺し、自分の“母親”に差し出したいのだろう。……もっとも、本当の母親ではないのだが。

 2人は最高司令室から出て行くと、少しだけ笑う。すでに私の中では黒い夢が芽生えていた。それは徐々に現実のモノとなる。

 ……パトラーを私のものにしたい。彼女を捕えて自分のモノにしたい。自分だけのモノにしてしまいたい……!


「私は、狂ったクローンだな」


 自嘲気味に笑う。彼女を欲する気持ちは日に日に大きくなっていく。彼女を捕え、自らの弟子にして、鍛えたい。心服させ、私の虜にしてしまいたい。

 そして、彼女を本当の仲間にした時、私は……連合政府のティワードと彼につき従うリーダー共を皆殺しにしてやる!

 連合政府も国際政府をも滅ぼし、新たなる新国家を打ち立てるんだ。パトラーと私の支配する世界。その世界がどのような世界になるのかは彼女次第。彼女が国民を愛し、大切にするのならそうなるだろう。その逆でも私はいい。


「お前は私だけのものだ。他の誰にも渡さない。国際政府にも、連合政府にも、――」


 そして、私のオリジナルであるフィルドにも渡さない。アレは私だけのものだ……!

 私はそっとパトラーの写真が入ったペンダントを取り出す。笑顔で映るパトラーの姿。それを見ている内に自身の心が激しく鳴るのを感じる。


 暗闇に包まれた夜のアレイシア支部。地面から放たれる不気味な白い光だけが空高くにまで上がっていた。

※コマンダー・アレイシアの本当の名前は『SFT-250156』です(クローンなので、連合政府は名前を上げませんでした)。『アレイシア』は自身の本拠地――アレイシア支部から取りました。

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