表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒い夢と白い夢Ⅱ ――動乱の人心――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第3章 恋愛の脅威 ――マンドラゴラ峡谷――
10/51

第9話 サフェルト海岸にて

※コマンダー・アレイシア視点です(冒頭除く)。

 愛が招く脅威。


 愛が判断を鈍らせる。



 心の曇り。


 それは愚かな連合政府の女将軍を誤らせるだろう。


 誤りの果てにあるものは、破滅か?


 それとも――











































 【サフェルト州 サフェルト海岸】


 私は美しい青々とした海を白い砂浜から眺めていた。中央大陸南にあるサフェルト海岸。5月にもなるとこの辺りはやや暑くなってくる。


「プロパネ! 海だ! 海っ!」

「……ああ」

「もうっ、ホントあんたって無愛想だな! なんかこう、感動ってのがないのか!?」


 若い女が浅瀬で叫び、若い男が砂浜からその姿を見ている。何も知らない人が見れば、ただのカップルにしか見えないだろう。

 女の方は黒髪に黒い瞳をし、青い装甲服。男の方も同じ色の髪の毛と瞳。ただ、着ている装甲服は紫色。顔した半分を隠すように紫色のスカーフをつけていた。

 私たちは連合軍の軍人。若い女は七将軍アヴァナプタ。男の方は七将軍のプロパネだ。


「……そろそろ任務の話を――」


 プロパネがそう言いかけた時、アヴァナプタは手で水をぶっかける。彼の紫色のスカーフは水で濡れる。


「……手合せか?」

「無愛想な将軍さまの顔が汚れてたから水かけて――」


 アヴァナプタがそこまで言った時、プロパネは素早く海に飛び込むと、彼女の顔を目がけて水をかける。


「なにをっ!?」

「……お礼」

「だ、黙れぇっ!」


 私は水のかけ合いを見ていたが大きなテントの中へと入る。中には机が並べられ、その上にはコンピューターがあった。それを操作するのはバトル=コマンダー3体。出入り口には2体のバトル=アルファ。みんな人間型ロボットだ。


[コマンダー・アレイシア少将。“ダイナマイ草”はマンドラゴラ峡谷の最深部にあると予測されます]

「間違いないか?」

[恐らく……]

「コメット閣下の命令だ。行くしかないな……」


 ビリオン総帥のコメットによると、新型爆弾の製造の為に、希少な“ダイナマイ草”が必須らしい。なぜこれが必要なのかは説明を受けたがさっぱり分からなかった(なんでも、ダイナマイ草に含まれる液化マナがどうの言っていたが……)。


「マンドラゴラ峡谷の近くには国際政府軍の一団がいる。大規模な部隊は動かせないな。動かせば、連中に動きがバレて草の回収が難しくなる」

[おっしゃる通りです。クロノス率いる2500の軍勢が近くの郡都に駐屯しています]

「ならば部隊はバトル=アルファ30体とバトル=コマンダー3体としよう。すぐに準備しろ」

[イエッサー]


 私はそう命令を下すと、テントから出る。眩しい光が海岸を照らしていた。

 これから行くマンドラゴラ峡谷は暗く深い場所らしい。道は険しく植物系の魔物が多く住んでいる。その最深部に極めて希少な草――ダイナマイ草があるらしいが……。


「ふ、ふぅ……。あんた、躊躇なくやるよな……」

「……勝負に手加減なし」

「ったく、ひどい男だ。私はこれでも一応女なんだがな」

「……男女の差別厳禁。ましてはお前は男でも通用する力と性格だ」

「うるさいっ!」


 私は海から上がったアヴァナプタとプロパネに目が行く。2人ともずぶ濡れになっていた。


「胸も小さいお前を女とは思えぬ」

「失礼な!」


 アヴァナプタがプロパネの後ろから蹴りを入れる。

 2人は中央大陸の南にある南方大陸出身だ。連合政府加盟組織「バトル・ライン」所属の将軍だ。「バトル・ライン」は辺境の南方大陸を支配する国家でもある。そのリーダーはホフェットという男。副リーダーは右将軍アヴァナプタと左将軍プロパネ。連合軍の人間兵士・将校の半分はこの組織の軍人だ。


「コマンダー・アレイシア、部隊は集めたか?」

「もう少しです。マンドラゴラ峡谷の入り口まではガンシップで向かいます」


 ガンシップは機体の左右にプロペラを付けた大型の戦闘用ヘリコプターだ。政府軍のガンシップと違うのは色だけ。政府軍は白。私たちのは黒色をしている。


「……お前との任務は久しぶりだな」

「それは私のセリフだ。あんたとの任務なんてホント、イヤになる!」

「……俺も不本意だ」

「な、なにをっ!」


 アヴァナプタとプロパネはそんな事を言い合いながら専用のテントへと入って行く。アヴァナプタもプロパネも、ああ言うが本当は嬉しいらしい。お互い表には出さないが。

 あれが普通の男女なら関係が発展すればいずれは結ばれるのかも知れない。だが、2人共連合軍の七将軍。「バトル・ライン」の副リーダー。ティワードやホフェットは“そういう関係”になることを望まないだろう。子どもが出来て、将軍の地位を退任――。彼らが望まない展開だ。

 禁断の恋愛。結ばれるハズのない2人。赤い糸を結んだ時、2人の破滅は始まるのかも知れない。時代と地位さえ異なっていれば、2人は幸せを享受できただろうに。


[コマンダー・アレイシア少将]

「なんだ?」

[ガンシップが到着しました]

「よし、マンドラゴラ峡谷へと向かう準備を始めよ」

[イエッサー]


 そのバトル=アルファはいつも通りの返事をして私の元を去って行く。機械の兵士。恋愛をする事はない。使いやすい。

 人間はそうじゃない。複雑な心を持っている。だから使いにくいのかも知れない。心が判断を惑わす。私はアヴァナプタとプロパネほどの人間なら大丈夫だと思っているが……。


「…………」


 冷たい風が吹く。空が曇ってきた。雨が降るかな……?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ