仮設の中のとある Episode 1 [2012.12.26]
仮設に居候。
もとの町も被災後の町もみたことがないので、少し寂しい町だなといった印象。
しかし海辺は殺風景で、ガードレールが酷く曲がっており、度々現れる家の土台の跡が痛々しい。
通る道の震災後の写真を見せてもらったが、随分綺麗になった。
綺麗になったというのは、瓦礫がなくなったと言う意味で。
空き地がぽつりぽつり…家はあるが、店は無い。
人々を救った大きな建物は、遠目に見てもかなり大きい。
大きな店はあるものの、小さな店はプレハブばかり。
並ぶ小さな飲食店は、どれも変わらぬ外装。
自分の店を無くしたことは、金銭以上に辛いのでは…と個性の無いプレハブの店店を眺め、ぼんやり想像する。
仮設はバリアフリーで段差はない、あるいは小さい。
トイレと風呂には手すりがついており、台所や物置の高さはかなり低め。
背が高いと、頭をぶつけるわ腰を痛めるわ。
風呂に追い焚きや予約機能があり、音声通知機能もある。
しかしながら雨漏り防止と思われる天井に貼られたテープ、コードカバーが至るところにあり、壁の繋ぎ目などがはっきりしている。
扉らしい扉はトイレと風呂のみ。
玄関の扉は非常に簡素で、心許ない。
鍵も回り難い…かかったのかどうかも、かなり不安。
通常なら窓にも使わないであろう玄関は、あってないものかと思う。
部屋と部屋を仕切る扉は、むしろカーテンである。
隙間もあり、目隠し程度。
隣の部屋の冷気が、隙間から流れる流れる。
暖房をつけていても、どこか冷える。
大事なところはこだわっているようで、不便はないがやはり仮設。
とにかく冷えるし、家とは言えない。
床は想像以上に温かい(があくまで想像以上。やはり冷たい)が、部屋が全体的に冷える。
暖房をつけなければ冷蔵庫として使える部屋は、便利なのか不便なのか。
何もせずぼんやりとする時間が好き。
テレビも音楽も不要な私であるが、家主は正反対のようでなんだかおもしろい。
気を遣わせているかもしれない、あればあるでなければ無いでどちらも好きだ。
具合が悪くなるほどの臭いでなければ気にしない、暗闇の静けさでなければ気にしない、耳が痛くなる音でなければ気にしない、こだわりが無い。
何でもいい、は意思がないようで好きじゃないけど。
居候でありながら寝坊をする強者は、とりあえずごみ捨てと掃除を任される。
家主は綺麗好きで、掃除する場所がないのだが。