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「未来の話をしよう」

作者: きまぐれん

気が向いたら続けます。

新東京。

今からそう遠くない未来、具体的には君の孫がお爺ちゃんかお祖母ちゃん、もしくは言い難いが残念なことに君に良き伴侶が巡りあえず、子孫が残せなくて誰も彼もが君の存在を忘れ去ってしまった頃の話だ。

何、残念がる事は無いさ、順調に子孫を残すことができた連中だって四世代目には名前すら覚えてもらえない。

君にだって思い当たる事があるだろ?

案外、僕みたいに祖父母の名前すら分からない人って多いんじゃないかな。

おじいちゃん、おばあちゃんって呼んでしまって、それで通用するもんだから名前を聞く機会が無いんだよね。

話を戻そうか、つまりそのぐらい時が経ってしまったんだと理解してもらえればそれでいい。


もちろん世界だって大きく変わっている。

具体的に言えば公害汚染やら宗教テロなんかで東京は八王子みたいになっている。

渋谷109何てとっくの昔に壊されてて、今じゃ「ハチ公公園」と言った方が分かって貰えるよ。

ちなみに東京23区内は宗教集団によるバイオテロで生身の人間は1時間すら生きてられない土地になった。

住んでた人がどうなった?さあ?案外まだ頭の髪ツンツンさせて馬鹿騒ぎしてんじゃないかな。

まあそっから50年くらいしてから遷都。

なんでしたかって言うと、首都が崩壊したのをいいことに臨時政府がテロ対策と新しい国家方針として完全管理者回を創り上げたんだ。

崩壊したのをいいことにつったけど、明らか前々から計画されてたよね、これ。

だって臨時政府がたったのは首都崩壊から半日で、完全管理者回の基礎部分になる法案が出たのは次の日だぜ?

まあ国民がパニクってる間に新しい日本はできましたとさ。



「ここまで聞きたいことは?記憶喪失君」


「ハーイ先生、まず語り口が二人称に対する喋り方じゃありません」


「はい、いいことに気がついたね。

実はこれ口調も含めて完全にマニュアル化しております。これ公共施設の悪いとこですね。

にしても何で小説の出だしみたいな内容なのかね。

まあ、お上さんもまさか本当に身元不明の記憶喪失なんて出ると思ってなくておふざけ半分、いや完全におふざけで作ったんだろうけどね」


3畳ばかりの狭っ苦しい部屋。

壁も床も四方すべてが白塗りの部屋だ。

サイコ系の小説の中だったらコレ以上に無く舞台として最適だ。

しかし僕は精神異常者では無く、ましてやそれによって捕まった犯罪者でもない。

そう、先に既に言われてしまったが今の僕はいわゆる記憶喪失らしい。

状態で言えば、気分はすこぶる健康だ。

しかしベッドの上で目を覚ます以前の事柄が思い出せないのだ。


芸能ニュースはもちろん、名前年齢性別略歴住所。

今言ったことをもし言えと言われても言葉を詰まらせることしかできない。

君だって知らない単語について説明を求められてもポカーンとするしかできないだろ?

いかん、語り口が移ったかな。

誰だよ君って僕の中には誰も居ないぞ。


ちなみに名前年齢の後に性別が出てきたのは、今の世の中はワンコインで性転換ができるらしい。

何でも男女平等化の流れで


「女も男も平等にどちらも経験すれば男女格差が失われる」


そんな発想で性転換技術が発達していったそうだ。


管理社会においてそんな簡単に性別が変わってしまっていいのだろうか。

その辺はしっかりバランスをとっているらしい

ちなみに僕にも性転換の痕跡が認められた。

別段、手軽に済むらしいのだから現代人8割くらいは性転換の経験があるらしい。

まあ手軽に済むのなら遊び半分でやってみようかという気も湧いてくるだろう。

まあその痕跡のお陰で僕が誰なのかという謎が大いに深まったのだが。


その際に生体認証装置とIDを確認するのだが、現在の僕はその両方を持ち合わせていない。

何でも今朝方、道路でボロボロになっていた所を通りかかった親切な人が通報してくれたそうだ。

どうやら僕は交通事故にあい、その衝撃で内部の生体認証装置が壊れてしまったようだ。

何一つ確定した情報は無く、そもそも交通事故で壊れてしまう生体認証装置でいいのだろうか。


「当たり所が悪かったんだろうね、君の頭に含めて」


さいですか。


「それで、ここまでで何か思い出せなかったかな?」


いやさっぱり。


「となーるーと、だね、何というか話が相当面倒になる」



左手で何かの書類を確認し、右手で自らの首に執拗に触れる。

左手はともかく、右手は変わった癖だな。くらいに考えていた。



「結論から言えば、君は死人状態だ」


「はあ・・・」


「はあって君、自分の事だってお分かりになってる?

 IDはもちろん、生体認証機まで無いとなれば、もはや密入国を超えて第二人類扱いだ、従って―」


「待った、第二人類ってなんですか」


「・・・そっからかぁ。

 ちょい待ち、該当項目開くから」



第二人類。

平たく言えばクローン、現代に蘇った奴隷制度。

最底辺に属するそれは、危険な領域内での仕事から新鮮な臓器としてまで、非常に多岐に渡る。

過去にあった奴隷制度と現代の大きな違いとして、奴隷は生涯その階級から脱することがなく、奴隷自身にも一切の意思感情が無い。

発展した医療のおかげで、細胞分裂した時点から第二人類の調整が可能となり、『人道的な配慮』から産まれる前からそういった調整を受ける。

稀に産まれる、意思感情を持って生まれてしまったクローンに関しても、すぐに普通人類としての教育を受けて社会に放される。



「僕はクローンなんですか」


「違うから困ってるんだ、君がクローンならセンターに届けてそれで済ませられるだろ。

 話を続けよう、従って君には我々第7管理区域例外課の備品としての戸籍が与えられる

 ああ、例外課ってのは君のような管理が予定されていないイレギュラー問題を処理する部署です。」


「先生すいませーん、備品って戸籍あるんですか」


「言い方が悪かったね、君は我々の管理品として調整を受ける権利が受けられたんだ。

 それと同時に我々は君を整備、維持しないといけない義務を負うことになる。」



ある程度社会保障を受けられない事を想定していたが、まさか物扱いとは。



「まあこれもごく短期間の上に、当然我々も君をモノ扱いだなんてしないから安心してくれ。

 明後日にでも君には仮の戸籍が作られて第2種治療患者として扱われる筈だ

 以上が、君に用意された情報だ。質問は後に受け付けます。」



幾つもの知らない単語が出てきた気がするが、もはや全て気にする余裕も無い。

備品扱いとは今後どうなるのか、短い期間とはいえ、私の生活はどうなるのか。


そして、私一体誰なのか。

というか男なのだろうか女なのだろうか。

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