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私も慌てて、帰る準備をして、学校の門の前まで来た。
「あれえ? 天気予報って、雨だったっけ?」と真由が言った。スマホという箱をいじっている。
「もうじき豪雨予報。うわ、最悪~」
「俺、傘持ってねえし。ま、元々持ってねえしな」と里中君。
「私が入れてあげる」と真由が、恥ずかしそうに言った。
皆で駅まで走ることになった。気をつけないと、と私は思う。どうやら、私の走る速度は速すぎるらしいので。
「山下、オリンピック狙えるぞ」と体育の時間に、丸い時計を見ていた『体育教師』に言われた。意味がわからなかったので、困った顔になった。以後、他のクラスメートと同じレベルに合わせるようにした。
電車に乗ったとたんに、雨が降り出した。
「滑り込みセーフだったな」と小橋君。私も雨は苦手だが、小橋君もそうだったのか、と少し嬉しかった。
これは、好きとか嫌いとかいう、好きの方の感情なんだろうか。
電車から降りると、お兄様が待っていた。いったい、いつの間に……
「凄い雨なので、車でお迎えに来ました」
「良かった~」と啓子が言った。
「ありがとうございます」と言う、啓子の目がキラキラと光っている。この目は、里中君を見る、真由の目と同じだ。
私は、小橋君の方を見て、自分の目が光るものかどうか確かめようとして、やめた。小橋君の目も、お兄様を見て、キラキラと光っていた……
お兄様は、超高速で私達の荷物を車に乗せて、ついでのように、私達も乗せた。
この車は……と考えかけてやめた。村に車は無い。必要ないからだが、必要な時は作ればいいのか。
お兄様が、運転する席に座り、当然のように、啓子が助手席に座る。他の四人は、向かい合って座っていた。車は小さく見えたのに、内部は広い。
「山下先輩~」と小橋君は声まで裏返りかけている。
「野球部に入ってくださいよ~。勉強が大事なのはわかるけど~」
「考えておくよ」とお兄様にしたら、歯切れの悪い答え方だ。
「ほんとですか~。期待していいですよね~」と小橋君は性格が変わってしまっている。
私とトップ争いをしているつもりでいる小橋君。真面目でクールな性格だと思い込んでいた。
里中君と真由は、傘を持ち歩くかどうかで、熱い議論をしている。これは、放置。
私は、ジャングルと呼べそうな自分の村を思い出す。気温は高く、湧き水も熱い。
当然、雨なんかは降らない。目に見えないシールドがある。
村人の数はわからない。気に入ったフレームができると、急に人数が増えたりする。
シベリアンハスキーが流行った時は、私もシベリアンハスキーのフレームにした。
ジャングルみたいな木々が茂っていて、多分、今は、カピバラとミーアキャットが増えつつある。
皆が言う家なんてものはないし、私達は、食べる必要がないので、どうするんだろうか……




