第60話 戦利品は、酔っ払っいと共に
ダンジョン入り口付近。
まだ空間に異変が現れる少し前、斑鳩たちは瓦礫の散乱した広間で一息ついていた。
「……なんとか、倒せたな」
斑鳩は、倒れ伏した巨大な狼型の残骸を見下ろしながら、しみじみと呟く。
「手も足も出ないとは正にこの事だよ。瓦礫に埋まってくれて本当に良かった。あんなのが自由に動き回ってたら、絶対無理だ」
正直な感想だった。
5メートル級の狼型。
下半身が拘束されていなければ、ここに立っている保証はどこにもない。
「最終的にはだねぇ」
その横で、酒瓶を片手に瀧山講師が偉そうに胸を張る。
「これくらいの相手、1人で倒せるようになってもらわないと困るんだよ。講師をしているこっちとしてはね! だから、頑張ってくれたまえ!」
言い終わると、グビグビと酒をあおる。
また飲んでいる。
普通のアル中とは、ちょっと違う気がしてきた。いつかその真相が解る日が来るのか……
いやっここを出たら聞いてみよう、意外な真実があるかもしれない
それは良いとして
斑鳩と辻本は顔を見合わせ、無言でため息をついた。
酒について突っ込む気力は、とっくに失われている。
「……そんな事言って」
辻本が呆れたように口を開く。
「瀧山さん、あなた倒せるの? こんな巨大な相手をソロで倒せる人なんて、上級ワーカーでも一握りだけでしょ。知らない事をいい事に、嘘は教えないでくれる?」
「え〜? 細かい事はいいじゃない〜」
瀧山講師は軽く手を振りながら、ふらふらと狼型の死体に近づく。
「じゃあさ、ダンジョン崩壊させる前に戦利品でも頂いて、崩壊させますか〜」
そう言って、狼型から牙等の素材を3人で取り最後に狼型の胸部から巨大な魔石を抜き取る。
淡く濁った光を放つそれは、明らかに高位の魔物の証だった。
「取り敢えずこれは、山分けって事で宜しく!
結構大物だし、幾らになるんだろ〜山分けにしても結構な額に成りそうだな〜
時間があったら徹底的に剥ぎ取ったんだけど、入り口付近大変な事になってそうだし、時間がないからこれくらいしかね……」
酒を飲みながら、上機嫌に宣言する瀧山。
「……ほんと、自由すぎる
さっさと崩壊させましょ」
辻本は呟きつつ、周囲を見回す。
「私もダンジョン崩壊させるなんてした事ないけど……」
視線の先には、空間の奥に浮かぶ、明らかに異質な存在。
モヤモヤとした靄をまとった、石のような、核のようなもの。
「あの、如何にもって感じのモヤモヤが出てる石? みたいなのを破壊すればいいの?」
辻本が一応確認するように瀧山講師へ聞く。
「そそ、それそれ〜」
瀧山は軽い調子で頷いた。
「ちゃちゃっと壊しちゃって。ここだとたぶんね、入り口から押し出されるんじゃなくて、落ちて来た所がもう一回開いて、そこから押し出されるはずだから」
ニヤリと笑いながら付け足す。
「ま、ビックリしないでよ〜?」
その言葉の軽さに、
斑鳩は嫌な予感を覚えながらも、こん棒を握り直した。




