第54話 直ぐに合流出来た
「はじめまして? そんな理由ないじゃん」
瀧山は、手にした酒瓶を軽く振りながら、ゲラゲラと笑った。
酒臭い。間違いなく飲んでいる。というか、今も飲んでいる最中だ。
「いやぁ〜さぁ? 気付いたら穴に落ちててさ。周り瓦礫だらけ、魔物の気配はある、出口は見えない。
……こういう時は、まず一杯でしょ?」
「いやいやいやいや!」
斑鳩が思わず突っ込む。
「普通、状況確認とか警戒とかじゃないんですか!?それに普通は出勤途中にお酒なんて持ってませんから!」
「それはシラフの時ね」
瀧山はケラケラ笑いながら言い切った。
「落ちた直後にさ、脚は無事、腕も無事。魔物は遠い。
――じゃあ、やることは一つ。落ち着くための酒」
辻本が額を押さえる。
「……最悪の方向に『落ち着いてる』タイプですね」
「で?」
瀧山がようやく斑鳩をまじまじと見る。
「アンタ、斑鳩孝一だよね。久しぶりじゃん」
――来た。
斑鳩の背中に、嫌な汗がじわっと浮く。
「えっと……その、瀧山講師?」
「講師って、やめなって。ここダンジョンだし」
瀧山は肩をすくめる。
「それにさ、アンタ――」
一瞬、視線が鋭くなった。
「雰囲気、ちょっと変わった?
前はもっと、こう……目が死んでた」
辻本が一瞬だけ、ニヤッとする。
酔っ払いのくせに鋭い
斑鳩は全力で平静を装った。
「そ、それは……最近、生活改善したというか」
「睡眠と運動です! あと食生活!」
我ながら苦しい。
だが瀧山は、あっさり鼻で笑った。
「あー、なるほどねぇ。教習所か」
「ワーカーの講習受けてるって顔だわ、それ」
――助かった。
どうやら『転生』という発想には一切至っていない……
「それよりさ」
瀧山はスキットルを仕舞い、ようやく立ち上がる。
「アンタら、ここがどこだか分かってる?」
辻本が答える。
「おそらく、教習所地下と繋がった新規ダンジョン。
しかも、生成途中タイプ」
「だよねぇ」
瀧山は楽しそうに笑う。
「だからさ、落ちたから取り敢えず酒飲んでたの。
酔ってないと、面倒くさそうだったし」
「理由になってませんよ……」
斑鳩は半ば本気で頭を抱える。
「でもまぁ」
瀧山はショートソードを肩に担ぐ。
「斑鳩がいるなら、話は早いか。
昔みたいに、後ろ任せてもいい?
っと言うかぜんぶまかせていい?
あたしに手取り足取り教えてくれたんだし
むしろあたしは足手まとい?」
一瞬、言葉に詰まる。
『昔』の斑鳩ではない。
だが――
「……出来る範囲で、やります」
そう答えると、瀧山は満足そうに頷いた。
「よし。じゃあ行こうか」
「落ちた先が地獄でも、酒が切れる前に片付けたいし」
辻本がため息をつく。
「……斑鳩君。覚悟しといた方がいいって言ったでしょ」
斑鳩は、遠い目をした。
――元の自分の知り合い、
やっぱり常識人ばかりじゃなかった。
しかも、一番濃いのが一緒に落ちてきたらしい。




