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第53話 講師を見付ける

斑鳩は、思わず額を押さえた。

「……アル中の、元弟子?」


「“元”って言っていいのかは微妙だけどね」

辻本香織は肩をすくめる。


「ワーカーとしての腕は確かよ。ただ、アルコールが抜けている時なら、の話だけど」

嫌な予感しかしない。


しかも自分は“覚えていない側”だ。人間関係の地雷原を、目隠しで歩いているようなものだった。

「……とりあえず、生きてる前提で探しましょう」

斑鳩は気を取り直すように言った。


「ここ、かなりヤバそうですし」

二人がいる場所は、ダンジョン内部でもやや広めの空間だった。

天井は高く、所々が崩落していて、岩と土嚢のような瓦礫が山になっている。

遠くからは、低く湿った空気と共に、何かが動く気配が漂ってきていた。

「さっき言ってた、大型の狼型……」

辻本が小声で聞く。


「下半身が瓦礫に埋まってました。

 ただ、あのサイズだと……時間の問題だと思います」

「じゃあ、長居は無用ね」


「神託でも言われてるの。

 『三人で戦え』って。

 だから、瀧山さんはこのダンジョン内にいる。生きているはず」

その言い方が妙に引っかかった。

「……生きているはず、って」

「神託は万能じゃないのよ」

辻本は淡々と言う。


「“こうすれば助かる”は教えてくれるけど、

 “やらかした後”までは面倒見てくれない」


つまり――

瀧山静香は、すでに何かをやらかしている可能性が高い。

二人は、崩落エリアを避けながら慎重に進む。

途中、何かを引きずった様な跡があった。

「……これ、狼型じゃない」

辻本がしゃがみ込み、跡を指差す。

「人が何かを引きずった痕。しかも雑」

斑鳩の喉が鳴る。

「……瀧山講師、ですか?」

「十中八九ね」

そして、少し先――

瓦礫の陰から、聞こえてきた。

「……だからぁ……飲んでないって言ってるでしょ……」

間延びした、女性の声。


完全に酔っぱらいのそれだった。

「ほら、いた」

辻本が、心底嫌そうに言う。


瓦礫の向こうに現れたのは、

防具の一部が外れ、壁にもたれている女性。

片手には剣。

もう片方には――見覚えのある、酒瓶

「……あ」

瀧山静香は二人を見て、数秒固まったあと、にやりと笑った。


「……あれ?

 もしかして、斑鳩くん?」


斑鳩は、嫌な汗をかきながら答えた。

「……はじめまして、だと思います」

その瞬間、辻本が小さく呟く。


「――あ、これ、面倒なやつだ」

こうして斑鳩孝一は、

“自分の過去が生んだ厄介な人脈”と、ダンジョン最深部で再会することになった。

しかも、

大型の狼型モンスターが、背後で瓦礫を押しのけ始めていることには――

まだ、誰も気づいていなかった。


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