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第47話 落下途中で


教習所が、ぐらりと小さく揺れた。


ほんの一瞬、地面が呼吸したような感覚だったが、すぐに収まる。


「ちょっとビビったわ〜」

南條が肩をすくめる。


職員室の方からも、ざわざわとした声が漏れ聞こえてきた。

講師や職員たちも異変に気づいたのだろう。

「取り敢えず、一旦食堂に戻るぞ」

佐藤がそう言って立ち上がる。


三人がベンチから離れ、歩き出した……その瞬間だった。


ガシャンッ!


何かが壊れる、嫌な音。


次の瞬間、足元の床が音もなく崩れ落ちた。

「え――」

言葉になる前に、斑鳩の視界が反転する。


南條と佐藤は、咄嗟に後ろへ跳び、辛うじて巻き込まれなかった。


だが、斑鳩だけが、崩れた床ごと闇へと吸い込まれていく。

「斑鳩!!」

「斑鳩くん!!」

二人の悲痛な叫び声が、遠ざかっていく。

落下……

そう認識した瞬間、信じられない光景が目に入った。

自分が通過した穴が、生き物の皮膚のように、ゆっくりと塞がっていく。

「……最悪だ」

斑鳩は、そう呟いた。

だが、次の違和感は、それ以上に異様だった。

時間が……遅い。

風の音も、服が揺れる感覚も、すべてが粘つくように引き延ばされている。

視界の中で舞う小さな埃が、止まりかけの雪のように漂っている。


そして――


完全に、止まった。

斑鳩の身体は空中で静止し、

落下という概念そのものが、途中で切り取られたかのようだった。


心臓の鼓動すら、聞こえない。

「……なんだ、これ」

答える者はいない。

ただ、世界だけが、沈黙の中で凍りついていた。

斑鳩は、時間の止まった闇の中で、ひとり取り残されていた。


何度目になるか解らない、何時もの白い空間


 さっきの時間がユックリに感じていたのは、こちらの世界へ来る途中だったんだろうと斑鳩は考える。

何時もとは、何か違う気がしたがダンジョンという異質な空間に落ちている最中だったし、そのせいだったと察してしまう。


 すると、何時もの様に目の前には何時の間にか誰かがいるが、いると思うがハッキリとは解らない不思議な感じである。


 「すまないね。こん棒持たせる位しか伝えれなかったからこんな事になって」

何処からともなく声が聞こえる。


 「夢の世界でもないのに、悠長に話してて大丈夫なのか?」

斑鳩は、自分の穴に落ちている異常な状況でこちらに来たが聞かずにはいられなかった。


 「ああ、それは大丈夫だよ。ダンジョン自体異質な空間だから夢の世界と同じである程度は融通がきく」


 「そっか、てっきり穴に落ちたから又死んでしまったのかと思ってた」

斑鳩は別な心配もしていた様だった。



 「そういえば、言うのを忘れていたんだけどこちらに転生した時に、こっちにいた斑鳩孝一を消滅させるわけにはいかないから、彼は彼で君が元いた世界に転生させた。違うか、転生させて転移かな?」


 そして、聞いても無いのに教えてくれる。

言いたくて仕方が無かった様だ


 「えっ?そうなのか?言われて見ればこっちに来て元の自分がどうなったのか気にならない理由では無かったけど、そうだったのか!」


 「あっちに行った斑鳩孝一は、こっちと違って順調そのものみたいだよ。まあなんと言うか、あの君が散々苦しめられていたブラック企業、初日に辞めてたよ。なんの知識もない状態でITだからね。出社1時間で

『解りません、帰ります。』

だってさ、見ていて正直笑ったよ。

君が散々苦しめられた会社だったのに」


「ま…まあよかった?のか?」


 「その後は順調にやってるようだよ、彼は君と違って脳筋だけどね。こっちで得ていた能力も持ち越しだからチートだね。平和な世界だから過剰過ぎるけどね。レベルも100近くだったかな?

普通の人の約5倍の身体能力、体験する事は無いだろうけどあっちの世界での火器類はほぼ効かないし、毒類もほぼ効かないしかもスキル持ち無敵状態だね」


「え?!まじか…あっちに行った自分はチート持ち、なんか複雑だ。自分にはチート的なのはなく、あっちにはチート……」


 「ま…まあ、気を落とすな。彼は彼でこちらの世界で脳筋だからワーカーで酷使されていて、何度か転生したんだけど結局は使い潰されてダンジョンで終わりを迎えていた。転生する度に、今度こそはと何も考えずダンジョンでひたすら鍛えていたよ」


「どうりで、自分の部屋に魔石があったり。資格もないのにダンジョンに入り浸っていたのか……」


 「取り敢えず、時間があると言ってもそこまで時間はないので本題に移ろうか」


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