第46話 パンが食べたい!そして再び異変
「しかし腹減ったな〜。
野外訓練の後、素直に食堂に寄っときゃ良かった。こんな状況だし、今から行っても食い物の期待は出来んな〜。」
佐藤がヘルメットの顎紐を指で弄りながら、心底だるそうにボヤく。
「私もお腹空いた〜。
さっきまで命の危機だったせいか、余計にお腹減ってきた気がするんだけど。」
南條も腹部を押さえて、情けない声を出す。
斑鳩は少し考えてから言った。
「確か……講師達がいる職員室の近くに、パンとか買える自販機があった気がする。
装備したままになるけど、行ってみる?」
それを聞いた瞬間、佐藤と南條の目が同時に輝く。
「行く行く!
最悪、栄養食的なのでもいい!
でもパン!パンがいい!
甘いのでも惣菜系でも文句言わないから!」
「よし、決まりだな。」
斑鳩の一言で、三人は急いで支給された装備を着込む。
防刃ベストをしっかり締め、ヘルメットを被り、簡易バックラーを背負う。
見た目は完全に“これから出撃します”という格好だが、手には何時も教習所に来る時のカバンも持っているそして目的はパンである。
「なんか俺達、緊急事態の割に目的が平和すぎないか?」
佐藤が苦笑しながら言う。
「生きるためには食べないとダメでしょ。
これは立派なサバイバルよ、サ・バ・イ・バ・ル。」
南條が無駄に胸を張る。
その理屈はどうなんだ……。
斑鳩は内心ツッコミを入れつつも、三人で職員室前の自販機へと向かって歩き出した。
廊下は普段より静かで、どこか張り詰めた空気が漂っている。
遠くからは人の話し声や、慌ただしく動く足音が微かに聞こえてくる。
――本当に、教習所を放棄する事になるんだな。
そんな現実を噛みしめながらも、今はとにかく腹ごしらえだ。
生き残るためにも、まずはパンを確保しなければならない。
三人は、妙に真剣な表情で自販機を目指した。
この時までは、あんな事になるとは思わなかった。
「パンパン〜パンが食べたい〜♪」
南條はオリジナルの、どこか調子の外れた変な歌を口ずさみながら廊下を進んでいく。
その様子を見て、
「余裕あるな……さっきまで死にかけてたのに」
と佐藤が半ば呆れたように呟く。
自販機の前に着くと、棚はかなりスカスカだった。
人気の惣菜パンや菓子パンは既に無くなっているが、それでも数種類は残っている。
「よし、まだある……!」
「買い占めは起きてないみたいね」
南條が安堵したように言う。
三人はそれぞれパンを選び、購入する。
飲み物は、パンの自販機の隣に設置されていた紙コップ式の自販機でコーヒーを買った。
ガコン、という音と共に落ちてきた紙コップに中身が注がれていく、扉を開けると湯気がほわりと立ち上る。
「この状況で飲むコーヒー、妙に落ち着くな……」
佐藤がそう言いながら、少しだけ息をつく。
自販機のすぐ近くに置かれていたベンチに腰を下ろし、
三人は黙々とパンを食べ始めた。
さっきまでの緊張感が嘘のように、
ほんの短い間だけ、日常に戻れた気がした。
パンを一口かじった瞬間、三人の肩から一気に力が抜けた。
「……生き返るな」 佐藤が、やや潰れたクリームパンを見つめながらしみじみ言う。
「わかる。緊張してたんだね、私」
南條も、メロンパンを両手で持ったまま素直に頷く。
斑鳩は無言で咀嚼しながら、周囲に視線を走らせていた。
職員室の前という事もあり、講師らしき人影や、完全武装のワーカーが時折行き交っている。
普段なら絶対に見ない光景だ。
「しかしさ……」
佐藤がパンを食べ終え、水筒の蓋を開けながら続ける。
「俺ら、今日ただ教習所で訓練して帰るだけのはずだったよな?」
「そうだったはずね」
南條が即答する。
「気付いたら、モンスターと戦って、生還して、ワーカー装備着て、ダンジョン疑惑で避難準備中だもんね」
どこか他人事のように言うが、声には緊張が混じっていた。
「……現実感ないな」
佐藤が苦笑する。
斑鳩はパンを食べ終え、紙袋を畳みながらぽつりと呟く。
「でも、もう後戻りは出来ない状況だね」
二人が斑鳩を見る。
「結界が壊れたか、ダンジョンが出来たか……どっちにしても、教習所が安全地帯じゃなくなりつつある」
淡々とした口調だが、その目は真剣だった。
「だからこそ、ちゃんと生きて帰ろう」
斑鳩はそう言って、立ち上がる。
「当たり前じゃない!」
南條もパンの袋を握りしめながら立ち上がる。
「せっかく無傷なんだから、ここで死ぬわけないでしょ!」
「だな」
佐藤も頷き、防刃ベストの留め具を軽く叩く。
「装備もある、人数もいる、駅まで行けば結界も生きてる。やれる事は全部やるしかない」
その時、建物が揺れ出した。
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勿論自分のです。




