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第40話 今回は運が良かった


郷山の指示で、7匹の狼型魔物から魔石を引き抜く。

魔石が抜かれた瞬間、魔物の身体は音もなく崩れ、白い霧のようになって霧散していった。

「……よし、全員無事だな」

郷山が周囲を警戒しながらそう言う。

斑鳩、佐藤、南條も息を整えつつ、周囲に視線を走らせる。

「本当に、いきなり来るんだな……」

佐藤が小さく呟き、南條はマチェットを握ったまま肩をすくめる。

「訓練とはいえ、洒落にならないわね」

郷山は短く頷くと、即座に指示を出した。

「ここで長居は危険だ。警戒を続けながら、教習所へ戻るぞ。隊列は崩すな」

4人は緊張を解かないまま、足音を抑えつつ来た道を引き返し始める。

草むらの揺れ、風の音、どれもが魔物の気配に思えて、斑鳩孝一は無意識にマチェットを握り直した。

――これが、野外訓練。

そう実感しながら、彼らは黙って歩き続けた。



迎えを要請してから十分ほどで、遠くからエンジン音が聞こえてきた。

郷山がポケットから取り出したのは、無線ではなく普通のスマホだった。短く通話し、頷く。

「やれやれだ。瀧山のマイクロバスじゃない。警備班の車だ。念のため二台寄越すそうだ」

その言葉に、全員がほっと息をついた。

緊張が切れた反動で、斑鳩は一気に足のだるさを自覚する。

「……さっきの、あれって訓練の範囲内なんですか?」

佐藤が、マチェットに付いた血を草で拭いながら聞いた。

「範囲外だな」

郷山は即答した。

「だから撤退した。だが覚えておけ。野外訓練という名目でも、外に出た瞬間から実戦だ」

南條が小さく息を吐く。

「前方三匹を一人で処理するとか、正直あり得ないんですけど……」

「お前らが後方を抑えてくれたから出来たことだ」

そう言って、郷山は斑鳩たちを見る。

「特に斑鳩。判断が早かった。魔力酔いが出かけてた割には上出来だ」

突然名前を出され、斑鳩は思わず背筋を伸ばす。

「い、いえ……必死だっただけです」

「必死で動けるのは才能だ」

その直後、道路脇に警備車両が止まり、防護服を着たスタッフが降りてきた。

簡単な状況確認と、魔力漏出エリアの封鎖が手際よく行われていく。

「今日はここまでだ」

郷山が告げる。

「野外訓練初日でこれは出来すぎだ。怪我がないのが救いだな」

そう言いながらも、その表情はどこか渋い。

「……予定していた訓練ルートは全て変更だ。

今後は、ダンジョン出口の一時発生を前提とした行動を組み込む」

佐藤が苦笑する。

「ハイキング気分で来たのが恥ずかしいですね」

「生きて帰れたなら、反省は後でいい」

郷山はそう言い切った。

四人はそのまま警備車両に乗せられ、教習所へと戻る。

車窓から遠ざかる森を眺めながら、斑鳩は考えていた。

もし、あの場に郷山がいなかったら。

もし、数がもう少し多かったら。


そして今回1番大きい偶然は今回はたまたま、ハグレが草原に出現と言う事を前提で動いていて、草を刈ると言うことでたまたまマチェットだった、素人が扱うのが危険という理由で殆どコン棒みたいな物で講習を受けていた。


もし、今回持ってきていた武器がこん棒だったら、郷山講師がいたから負けは無かったとしても、もっと苦戦していたかもしれない。



胸の奥に、じわりとした冷えが残っていた。


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