表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/30

第29話 何度目かの空間


その夜。

斑鳩孝一は布団に入ったと思った瞬間、視界がふっと白く染まり、気づけばあの白い無機質な空間に立っていた。

「よ。気に入ったかい?魔石を渡す方法。」

背後から聞き慣れた 、、、 いや、まだ慣れたくもない 、、、神っぽい存在の声が響く。

「気に入るかよ!」

孝一は思わず振り返って噛みつくように言った。

「ていうか、なんで生き物なんだよ!? いや、魔石食わせればいいってのは分かるけど、よりによってハムスター!? しかも念話してくるし!」

神っぽい存在は、肩を竦めるような仕草をした。

「いやぁ……ほとんどの場合、私がそちら側に干渉できるのは“生き物に関することだけ”なんだよ。姿形ある物体を出すの、本当に苦手でね。ハムスターが入ってたあのケージくらいが限界。それ以上大きい物や複雑な構造の物を渡すのは無理。」

「無理って……神なんですよね?」

「“ぽい”存在だって言ってるじゃないか。そこ重要。」

孝一は頭を抱えた。夢なのか現実なのか、その区別さえ曖昧になる白い空間で、神っぽい存在は続ける。

「それとね、魔石も大事だけど……あのハムスター君、精神的に育てばまた新しいスキルを渡せるよ。」

「精神的に……育つ?」

孝一は嫌な予感がして眉をひそめる。

「そう。可愛い仕草をするかもしれないし、態度がでかくなるかもしれないし、もっと喋るようになるかもしれない。まあ、育成ゲームみたいなものだね!」

「俺はゲームのつもりで飼ってねぇよ!?」

神っぽい存在は愉快そうに笑った。

「まあまあ。きっと悪いようにはならないから。さあ、そろそろ」

ふわり、と視界が揺らぐ。

「おやすみ、斑鳩孝一。」

その言葉を最後に、白が音もなく崩れ落ちた。


気がつくと、自分のベッドの上だった。

天井の木目がいつもより現実味を持って迫ってくる。

隣のケージでは、例のハムスターが寝息を立てて丸まっていた。

その姿は、どう見てもただの可愛いハムスターだった。

本当に、これでいいのか俺の異世界生活。

孝一は、布団の上でぼそりと呟いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ