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第26話 お土産を抱えて


皮を剥ぐ切り始めの位置、筋肉の流れに沿った切り方、牙を折らずに抜くコツ──

郷山は手際よく見本を見せる。

「魔石はここだ。大きさは個体ごとに違うが、ホーンラビットならこの辺が定位置だ。割らずに取り出せ。」

斑鳩は緊張しつつも、指示に従って皮を剥ぎ、肉を切り分け、牙と魔石を丁寧に取り出していく。

血の匂いは強烈だが、初日よりは多少慣れていた。

全員が素材の採取を終えると、郷山が最後に言った。

「皮、肉、牙、魔石──今日の素材は好きに持ち帰っていいぞ。練習用だから気にするな。」

半分以上の受講生が遠慮したが、斑鳩は迷わず魔石を手に取る。

昨夜神っぽい存在が言っていた「渡し方を準備した」という言葉が頭をよぎる。

(どうやって渡すのかは全然わからないけど……。とりあえず持って帰らないとな)

帰り道、斑鳩は佐藤、南條と三人で途中まで歩いた。

みんな疲れていたが、それでもどこか達成感の残る顔をしていた。



斑鳩、佐藤、南條の3人で駅へ向かって並んで歩いていると、佐藤が保冷バッグを軽く揺らしながら、

「いや〜、俺さ。今日、記念に持って帰ってみたわ。ほら、素材採取って初めてだったし。肉、意外とキレイに取れたしな」

と言い出した。

「私も。せっかくなら食べてみたいじゃん?ホーンラビットの肉って意外と美味しいって聞いたし」

南條もタッパを入れた保冷バッグをぽん、と叩きながら笑う。

斑鳩も鞄を持ち上げて見せる。

中には肉のタッパと、こっそり魔石がひとつ。

「俺も、まあせっかくだし……肉と、あと魔石も持って帰ってみた」

「お、孝一もか。焼肉パーティーだな」

佐藤が嬉しそうに言う。

「いや、パーティーって程でもないけど……焼いて食べるくらいはするかな」

斑鳩は曖昧に笑いながら答える。魔石を持ち帰る理由は2人には話していない。

「私も今日は焼いて食べるつもり〜。焼肉のタレ買って帰らなきゃ」

「わかる。絶対タレ合うよな、これ」

南條と佐藤が盛り上がる。

駅が近づいてくると、3人の足取りも少し軽くなっていく。

今日の訓練はキツかった。主にグロくて。

血を見て涙目になりかけたし、解体では何度もえずきそうになった。

それでも、こうして仲間と並んで歩きながら話していると、不思議とそれ全部が「今日を頑張った証」みたいに思えてくる。

「じゃ、また明日な」

「うん。明日も遅刻すんなよ、孝一」

「し、しないって!」

笑いながら、駅前でそれぞれの方向に別れていく。

斑鳩は手に持った保冷バッグと鞄を見下ろしながら、

「……今日の夜、あの神っぽい人に魔石、どう渡すんだろうな……」

と小さく呟き、自宅へ向かって歩き出した。



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