第25話 午後からの講習
昼からの講義が始まった。
郷山が前に立ち、ずらりと並べられた檻の前で受講生たちに向き直る。
「まずは、午前中に説明した通り──実際にハグレを倒すところから始める。
今日の個体は、昨日よりひと回り大きい。だが口枷は無しだ。素材採取の実習をする以上、出来るだけ自然な状態で倒してもらう」
教室の空気が一気に緊張で張り詰める。
檻の中のホーンラビットは、昨日より明らかに大きく、鋭い牙をむき出しにしながら金網をガリガリと噛んでいる。弱体化しているはずなのに、十分に脅威だった。
「まあ、これまで何十回も倒してきた連中ばかりだ。落ち着いてやれば問題ない」
郷山の言葉は淡々としていたが、受講生たちの表情は強張ったままだ。
順番に檻へ入り、受講生たちは1体ずつホーンラビットを倒していく。
牙を剥き、飛びかかってくる勢いは昨日より明らかに強かったが、皆この2週間で少しずつ慣れてきていた。
斑鳩孝一も、深呼吸してから檻へ入る。
ホーンラビットが低い姿勢から跳びかかってきた瞬間、反射的に身体が動き、一撃で吹き飛ばす。
(……やっぱり、前より動けてる気がする。レベルの効果、馬鹿にできないな)
そんなことを思いながら檻を出ると、郷山が軽く頷いた。
やがて全員が倒し終え、檻の前に集まる。
「よし、次は素材採取の実習に入る。
今倒した個体を使って、午前に説明した通りに手順を踏んでもらうぞ」
そう言って郷山が手袋と簡易ナイフを配り始める。
受講生たちは、倒したばかりのホーンラビットの前でゴクリと喉を鳴らす。
南條アズサは、顔を引きつらせながら小声でつぶやいた。
「うぅ……やっぱり血を見るのは苦手……」
佐藤タケシも腕を組み、思わず目をそらす。
「俺も解体は初めてだからなぁ……でも、これも必要なんだよな」
孝一も、胸のあたりが重くなるのを感じていた。
(ここを乗り越えないと、魔石も手に入らない……
いや、スキルのためにって考えるのもどうかと思うけど……
でも現実問題として、必要なんだよな)
郷山が声を張り上げる。
「覚悟が決まったら始めるぞ。
まずは腹部の皮を──」
講習生たちは顔をしかめながらも、ナイフを構えて一歩踏み出した。




