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第23話 思い出しつつ教室に


そういえば、この二週間ちょっとでわかったことがある。

この世界にはレベルという概念が存在していた。

レベルは、一定数のハグレやダンジョン内のモンスターを倒すことで上がる仕組みらしい。

郷山が言うには──

レベルが1上がるごとに、レベル1の頃の身体能力がおよそ5%向上する。

つまりレベル11にもなれば、基礎能力がざっくり一・五倍になるという計算だ。

そして、スキル。

こちらはレベルとは違い、いまだに謎が多いらしい。

噂では“特定の行動”や“条件”を満たした時に突然習得するという話だが、確たる理屈はわかっていない。

レベルとスキルを調べるための測定装置は 教習所に一台だけ あり、毎日使えるわけではない。

それに、スキルも“登録されているものだけ”が判別できるという制限があるらしく、未知のスキルはまだまだ多いのだという。

自分の成長が可視化できないのは若干不安だが……

確実に強くなっている実感はある。



そうこう考えていると、教習所の教室についた。

入口のガラス越しに、見慣れた二人の姿が見える。

「……おはよー……なんか、やだね今日……」

南條アズサが、珍しく気弱な声を漏らしていた。あの血飛沫まみれ女戦士が、である。

佐藤タケシも、腕を組んだまま深いため息をついている。

「いやぁ……俺も今日はちょっとな……解体は初めてだし。昨日の講師の説明、やけに具体的だったし……」

普段どこか飄々としている佐藤が、こんなに露骨に緊張しているのを見るのは初めてかもしれない。

孝一は苦笑いしながら近づく。

「おはようございます……なんか、二人とも朝からテンション低いですね。」

「そりゃそうだよ!」

アズサが、机に突っ伏す勢いで言う。

「今日、絶対ハグレの血とか内臓とか見るでしょ!? 無理なんだけど!? 昨日の夜、ネットで“ホーンラビット 解体”って検索したら、サムネでギブアップしたもん!」

「検索したんだ……」

佐藤が呆れ気味に突っ込みつつ、顔が引きつっている。

「まあ俺も、人のこと言えないけどさ……もうさ、覚悟決めるしかないよな……レベル上げにも関わるっぽいし。」

「うん……だよね……」

アズサは肩をすくめるが、怖がりながらも逃げ出す気はないようだ。

孝一も内心ガクガクだ。

だが昨夜、あの神っぽい存在が「明日から魔石が手に入る」と言っていたことを思い出す。

(……まあ、なんとかなる……はず……)

そんな三人の怯えと諦めが入り混じった空気の中、教室の扉が「ガラッ」と開いた。

「席に着けー。始めるぞー。」

郷山誠一が入ってきた瞬間、教室の空気が一気に張り詰める。

どうやら、開始の時刻を迎えたようだ。


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