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第21話 グロいのは苦手


「佐藤さん、やっぱり凄いですね……」

檻の前から戻ってきた佐藤に、孝一は心からの声を漏らした。

「いやいや、たまたま運が良かっただけだよ」

佐藤は照れくさそうに後頭部をかく。豪快な倒し方をしたわりに、性格は意外と謙虚だ。

アズサも腕を組みながら笑う。

「アンタ、相変わらずやるじゃん。二匹同時なんてそうそう出来ないよ」

「いや〜、でも俺も苦手なのあるからね」

と佐藤が肩をすくめる。

すると、アズサが思い出したように言う。

「そういえば明日、解体の実習なんだってね。マジで憂鬱なんだけど」

「俺もだよ……」孝一は顔をしかめる。

「血とかグロいの苦手なんだよなあ。出来れば避けたいくらいで」

「わかるわかる〜!」

アズサも同じく手を振って拒否感を示す。

「私、ああいうのホント無理。倒すのはいいけど、切るのは別問題だって」

すると佐藤が苦笑しながら言う。

「実は俺も解体は初めてなんだよ。農家だから慣れてるとか思われそうだけど、家畜の処理とかやる訳がないしさ。見るのもあんまり得意じゃないんだよね」

「え、そうなんですか?てっきり平気なのかと……」

孝一は驚く。

「いや〜、だから明日は俺も緊張してるよ。むしろアズサの初日のほうがよっぽどグロ――」

「ストップ!言わないで!!」

アズサが慌てて佐藤の口を塞ぐ。

「初日のあれは忘れて!お願いだから!!」

「ははは、冗談だってば」

佐藤は笑いながら手を上げた。

その後、三人は講習の愚痴や些細な出来事を話しながら帰路についた。

大きな事件もなく、平和な道のりだったが、孝一の心の中には明日の解体実習への不安がじわじわと広がっていた。

そして、夜――。

布団に入ったと思った瞬間、またあの白い靄のかかった空間に立っていることに気づいた。

いつの間にか、再び神っぽい存在の前にいたのだった。



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